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第三十一話 必滅の愛

「そ、そんな!! セカンディ! 俺を置いて行くと言うのか!?」


「やめろ、触るなと言ったはずだ。俺はあの方の元へ行く」



 セカンディの足に縋りつくワンス、何という悲惨な光景だ。興味本位でやってはいけなかった、僕は一つの愛を壊してしまったのか……。



「……ねぇウィッチ。あれ、元に戻せる?」


「解除は無理です。元に戻るには時間が掛かります、もしくは私の魅了以上の影響を与えれば上書きされるでしょう」



 そんなん無理やん、あんた神やん。あんた以上の魅了って何よ?



「セカンディ!! これまでの思い出や約束を忘れたのか!? 誓ったではないか!」


「知らん」



 ズルズルとワンスを引きずりながらウィッチに近づくセカンディ。セカンディは最早ウィッチの事しか頭になく、ワンスに目を向ける事はなかった。


 一方ワンスは、涙と鼻水で顔がグチャグチャ、イケメンの面影がまるでない。



「貴女に尽くすために全てを捨てます! まずお名前を教えてください」


「捨てないでくれええぇぇぇぇぇぇ!!!」



 見ていられない、なんて悲痛な叫び声なんだ……僕はなんと言う事をしてしまったんだ! 僕は……どうしたらいいんだ!!



(そうだ! 記憶破壊だ!! 時を戻そう!)


〈あの者の記憶には絶美神の魅了の力が纏わりついておる、壊す事は容易いが……間違いなく記憶に影響は出るぞ?〉


(ど、どんな影響だい?)


〈さぁ? 最悪全てを忘れるのではないか? 本来破壊の力は繊細な力ではないのだぞ? 我もそのような使い方はした事がないから分からん〉



 破壊神でも知らない破壊の使い方、ヴァルが知らないなら僕だって分からない。いいように破壊する事も出来るだろう、しかし、現時点では分からない。


 出来るかもしれないけど、ぶっつけ本番で行うのは……危険かな。



〈何を悩む? やればいいだろう、失敗した所で我達には関係ない〉


(いや、関係あるよね? 僕のせいでこうなってしまったんだから……)


〈我はそう言う事を言っているのではない。ダメなら壊せ、さすれば何も残らん。記憶も、何もかもな〉



 全部なかった事にするって? さすが破壊神だな、破壊神としての行動で間違っているのは僕か……いいや僕は決めたはず!! 自由に、僕の思う通りにやるって!



「ワ、ワンスさん? 僕がセカンディさんの状態を戻してみようか?」


「ほ、本当か!? 頼む! これあげるから戻してえぇぇぇぇ!!」



 そう言って渡されたのは神器。いらねぇ……そもそも神力を扱える僕に、これは完全にハズレの宝だろ。



「あ、ありがとう……じゃあセカンディさんの事を押さえつけてくれる? 動かれると面倒だから」


「承知した…………止まってくれ、セカンディ」



 流石はワンス、地力でセカンディの上を行く彼が本気で押さえにかかったらセカンディには抗えないだろう。でもその顔やめてよ、なんでそんな悲痛な顔を……。



「離せ、ワンス」


「頼む、セカンディ……元に戻ってくれ」



 動きが止まったセカンディに僕は記憶破壊をする準備をする。上手くいくはず、こういうのは失敗しないはずなんだ。フラグの神よ! 力を貸してくれ!!



〈そうだオル!! 簡単な事だった、絶美神の神力を破壊すればいいだけではないか!〉


(あ、そうか……ってもう記憶破壊しちゃったよ)


〈……なんでそんな豪胆なのだ? 流れ的に慎重にやるべき時では?〉



 慎重だろうが大胆だろうが結果なんて変わらんだろう。ただ破壊の力を放出するだけなのだから。まぁ正直どうでもいいやと思ってしまった事は認めよう。


 恐る恐るセカンディの様子を窺う、口を開けたまま放心状態のようだ。これは以前タンちゃんなどに行った記憶破壊後の症状には当てはまらん。


 つまり……失敗したか?



「も、申し訳ございません……手術に失敗致しました」


「そ、そんな!? なんとかならないのですか先生!?」



 すまんワンス、先生でもどうにもならない事もあるんだ。そんな顔をしてもダメだ……やめてくれ、僕は精一杯尽くしたんだ。



「………………う……ぁぁ……ワン、ス…………」


「っ!?!? セカンディ!? 俺が分かるか!? ワンスだ!!」



 意識を取り戻し始めたセカンディ。良かった、ワンスの事はちゃんと覚えていたようだ。そうだ、急ぎ魅了の力を破壊しないと。記憶を破壊しただけじゃダメだからね。



「うぅぅぅぅ……何か、心地よい夢を見ていたような……どうしたのだワンス? そんなに泣いて」


「し、心配したのだぞ!? 俺との思い出を忘れて女に走った時はどうしようかと……」



 ――――よいしょっと。よし、ウィッチの魅了の力はセカンディから破壊した。これでウィッチの虜になる事はないはず、存分にワンスと心地よい夢を見てくれ。



「そうなのか……? よく分からんが……それよりワンス、少し離れてくれないか? 流石に近すぎるぞ?」


「あ? お、うん……分かった」



 ……おやぁ? なにか違和感……近すぎるって、君達ゼロ距離で抱き合う仲じゃないか。ゼロ距離以外でどうやって抱き合うのか知らんけど。


 ワンスもセカンディの様子に戸惑っていた。大丈夫、術後の後遺症みたいなものさ、時間が立てば元に戻るよ。



「セ、セカンディ? 俺の事を……変わらず愛してくれているか?」



 恐る恐る問うワンス。何を怖がっているのだワンス! もう大丈夫! 君達の愛は永遠に不滅です!!



「……どうしたワンス? 何を気持ち悪い事を……あぁ、こう言う事か? もちろん、仲間としてお前を信頼しているぞ? しかし愛と言う言葉はおかしいだろう」


「…………」



 き、君達の愛は……え、永遠に……。



「愛と言うのは異性に、愛する者に使う言葉であろう? ははは、どうしたワンス? 洒落のつもりか? 悪いが男を愛する趣味はないよ」


「…………」



 えいえん、えい……えん。


 ははは、永遠なんてものはこの世に存在せん!! いずれ全て壊れ行くのだ!!



〈それでこそ破壊神である。最低だな、お前〉


お読み頂き、ありがとうございます


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