第二十六話 自由恋愛
申し訳ございません
――――走り続ける事数分、フォルナさんの姿を見つける事が出来た。良かった、座り込んでしまっているが、魔者に襲われる事などはなかったようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……フォルナさん、一人じゃ危ないよ? せめて仲間と合流できるまで僕が――――」
「――――私が間違っていました。幼馴染? なにそれ? バカみたい、こんな奴らの為に私は……」
そう言ってフラフラと歩き出すフォルナさん。
少し離れた壁にもたれ掛かり再び座り込んでしまった。その表情は何か恐ろしい物でも見たような、絶望したような、魂でも抜けてしまったかと言う程に覇気がなくなっていた。
「…………ふふふ、あはは……こんなに気持ち悪い奴ばかりの所に私は……」
そして何かブツブツと呟いている。ちょっと正気を失っているみたいだけど、大丈夫かな?
『なにかその先で見たようだぞ? 魔者の気配はないが、一体なにが――――』
≪――――アッーーーーーーーーーー≫
覗き込む前に聞こえた男の声。凄い悲鳴だ、しかしどこか喜んでいる様にも感じられた。フォルナさんの仲間、もしかしてワンスだろうか? まさか、魔者に襲われているんじゃ!?
しかしワンスは強者と言う話だ、ここまでフラグを立てておいて呆気なく食われるなんて事はないと思うが……僕は恐る恐る声がした方を覗き込んだ。
そこに広がっていた光景はッ!!
「――――あぁ、ワンス……どうして抜いてしまうのだ?」
「セカンディ……やっと二人きりになれたのだ、すぐ終わらせるのはもったいない」
…………ん? あれはなんだ? なぜあの男二人は絡み合っているのだ? 裸で。ワンスにセカンディ、それは金竜の……フォルナさんの幼馴染である二人の名前。
〔こ、これは!?!? この展開は!?〕
〈何を興奮しておるのだ? 気持ち悪い事この上ないぞ〉
「そうだな、ワンス。サードスとフォルナもいない……久しぶりだな?」
「あぁ、カモフラージュで四人でパーティーを維持してきたが、本当はお前と二人きりになりたいのだ……」
え……カモフラージュ? 仕方なくフォルナさん達とパーティーを組んでいたと言う事?
それは……フォルナさんが可哀そうすぎる、あんなにも君の事を思っていたと言うのに。これはフォルナさんには聞かせられな――――
「――――あははははは、男同士の恋愛をバレないようにする為だけに、解散を拒んでいたのね。馬鹿馬鹿しい、通りで私に手を出そうとしたのはサードスだけだった訳だ!」
い、いたの? でも何か吹っ切れた様な顔をしている、さっきまでの彼女は本当に今にも死んでしまいそうだったからね。
「ところでワンス、獅子の鬣のような毛がなくなっているぞ? 剃ったのか?」
「…………あぁ、今の俺は生まれたての小鹿だ」
意味が分からん、その毛を破壊したのは僕だよね? そこはもうちょっと驚いてほしかったが、流石は金色神徒だな。
〈気持ち悪い、破壊してもいいか?〉
(僕も破壊したいけど、ここは……)
〔なるほど、金髪が攻めで青髪が受け……顔はまずまず、悪くないわ〕
(ウィッチ、ちょっと黙っててくれる?)
目の前で繰り広げられる光景、ウィッチの様に一部の人達の受けはいいようだけど、ちょっと僕には理解できない。
ここは幼馴染の、メンバーのフォルナさんに任せよう。
「……あの、フォルナさん? 幼馴染……仲間も見つかったようなので、僕達はこれで……」
「元! 仲間です。幼馴染? そんな記憶は私の中から消えました、あんなもの知りません」
すでに仲間ではないようだ、確かに僕には理解できない世界だけど、否定するつもりはない。ただ理解できない人もいるという事。
フォルナさんには理解できないようだ、逆にウチのウィッチはこの世界を認めているようだし、受け入れられる人もちゃんといるんだね。
「そう……ですか。しかし元とは言え貴女のパーティーメンバーです。神教会に申請もしましたよね? であれば貴女も無関係ではありません、僕達は無関係なので――――」
「――――あぁセカンディ……そろそろ俺の神槍で貫いてもいいか?」
「来てくれワンス、その神々しき槍で俺を……」
ヒッヒィィィィィィィ!?!? 見たくない!! 聞きたくない!! 僕は帰るぞ! こんな所にいられるか! ……なっ!? 放せウィッチ!! なにをする!?
〔ワクワク、ワクワク〕
(放せウィッチ!! どうして僕の腕を掴むの!? 見たいなら一人で見やがれ!)
〈……視覚遮断、聴覚遮断、念のため嗅覚遮断〉
(おい! ふざけるな!! せめて貴様も道連れだ!!)
「では……いざ参るッ!!」
参るんじゃない!! やめろォォォォォォ!!
「――――気持ち悪いッ!!! アンタ達、ここがどこだか分かっているの? こんな変態だとは思わなかったわ!!」
あと少しで刺さるという所で、大声を出しながらワンス達に近づいたのは……元メンバーのフォルナ氏。
ズカズカと二人の愛の巣に土足で踏み入る彼女。それに驚く二人はまるで彼女に浮気現場を見られた彼氏のような表情をしている。
そそくさと神槍をしまうワンスと、そそくさと神穴を閉じるセカンディ。その姿を見ると居た堪れない、彼らは悪い事をした訳ではないのに、その表情は罪悪感で一杯だ。
嫌な世界だね、恋愛は自由じゃないか。男同士だろうが女同士だろうが、いいじゃないか!! 堂々とすればいいんだよ!!
でも見えない所でしてよ! まだ君達の世界にこの世界は追いついていないんだよ!
お読み頂き、ありがとうございます
宜しければブクマや評価のほう、お願い致します




