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第二十話 二件落着

 ウィッチ監修の演劇を見終わった後、僕達は菊地とキリやんがいる神教会本部へと戻って来ていた。


 男達の代償は大きかった、なんせこれから彼らは……言うも悍ましい。



「キリやん、ウィッチを助け……まぁ、うん、助けてきたよ」



 菊地がいると言う部屋に案内され、その中で菊地の様子を見ていたキリやんに声をかけた。振り向いた彼の顔は穏やかであったため、菊地は大丈夫だと言う事が分かった。



「おう、早かったな? ……それで、土竜の宴どもは……?」



 菊地を起こさないようにするためか、小声で話すキリやん。奴らがどうなったかだって? 言ってやれよ、ヴァル。



『奴らは息子を失った……そしてもう得る事も出来ない』


「む、息子? あいつ等息子がいたのか? そんな話聞いた事ないけど……」



 考え込むキリやん、その思考は無駄な行為なのだが……どちらにしろ奴らは代償を支払った。しかし大きすぎる代償だったのかもしれない、その事を確認せねば。



「キリやん、菊地は寝ているの? 話せたりしないかな?」


「いや、さっきまで話してたんだけど……急に寝ちまって……」



 急に寝た? まさかこいつも狸寝入りか? ほぼほぼ真実が見えてしまったが、聞かぬわけにはいくまいな……。



「起きなさい菊地、寝たふりなのは分かってるよ?」



 だって目元がピクピク動いているんだもん……バレバレだよ。


 キリやんは不安そうな目で僕と菊地を交互に見る、残念ながら君の相棒は名誉の負傷をした訳ではないようだよ。



「…………おはよう……ございます」


「はいおはようございます。菊地君、何か僕に言う事はないかな?」



 目線を僕から逸らし、明後日の方向を見始めた菊地。別に怒っている訳ではない、勝手に勘違いした僕が悪いんだ。


 でも、聞かなくてはならない。君の口から真実を。



「菊地君、君……階段から転がり落ちたの?」



 ビク付く菊地の肩、その表情は見た事もない恐怖に染まっている。


 何を怖がっているのだ? 菊地は嘘は言ってないし、階段から転がっただけなら誰にも迷惑は……かけてるか、この状況がすでに迷惑だ。



「…………すいません、ほんの……出来心で……」


「……出来心? どういう事? 階段から出来心で転がり落ちたの?」



 意味が分からない、出来心で階段から落ちる……心配されたかったとか? まるで母親の気を引く息子のようだね。



「お、俺から話すよ! その……誰しも過ちはある、魔が差す事だってあるだろ? だからキクチを許してやってほしい」



 相棒を庇うキリやん、お前は真実を聞いたのか? 許す許さないとは罪ある者に対する行為、つまり菊地は罪を犯した? 階段から転がり落ちるのは罪ではないよ?



「宴会のあった次の日の事だ……キクチはかなり酔っていて朝になっても目を覚まさなかっただろ?」


「そうだね、酷かった」


「それで俺達は霊峰に向かった……その時キクチは目を覚まして、覚束ない足でトイレに行ったそうだ……あんだけ飲んだんだ、誰でもトイレには行くだろ?」


「そうだね、膀胱のデカさは人それぞれだ」


「そしてトイレの帰りだ…………間違ってしまったらしい……自分の部屋とウィッチの姐さんの部屋を。誰でも間違う事はあるだろう?」


「そうかな、菊池の部屋はウィッチの反対側だよ?」


「そのまま姐さんの部屋のベッドで眠り始めて……少しして目を覚ましたらしい。で気づいたそうだ、ここは姐さんの部屋だと。目の前には酒瓶を抱えて眠る美しい女……そのままずっと眺めていたそうだ、分かるだろ? 男なら」


「そうだね、僕も凝視するだろう」


「え……きも…………あ、キクチがですよ?」


「更に少ししたら、急に部屋の外が慌ただしくなったそうだ。そう、土竜どもが姐さんを攫いに来たんだ。キクチは驚いて布団被って隠れたそうだ。誰でも隠れるだろ?」


「そうかな、僕なら破壊する」


「最低ね」


「攫われるのを見ていて、でも黙っていられなくなり急いで布団から出て後を追おうとした。その時に酒瓶に足を取られて転倒……その後は、分かるだろ?」


「そうだね、階段から落ちたんだ」


「アホじゃない」



 辛辣なウィッチ、しかし分からなくもない。あの酷い寝姿をずっと見られていたとは……想像するとかなり気持ち悪いな。


 やはり真実は菊地の自滅、自業自得……まぁそもそもは攫ったアイツらが悪いのだろうけど、菊地がちゃんと話してくれていれば少し展開も違ったと思うんだよね。



「…………すまん、酒が抜けていなかった」



 そう言って頭を下げる菊地、その表情には反省の色が見えた。まぁ反省するとしたら階段から転がった事ではない。


 女性が攫われるのを黙って見ていた事、女性が見られたくない姿を意識して見続けた事、そしてなにより酒の飲み過ぎだ。



「これに懲りたら酒には注意する事だね? 覚えてる? 君、凄かったよ? 特殊性癖は隠しなさいよ」



〈どの口が言うのだ? 特殊性癖を前面に押し出す男が……〉


〔オ、オルクス様の性癖!? なんですか!? 私頑張りますよ!〕


〈やめておけ、相当の強き心を持った女でなければ耐えられん……〉



 まぁ、なにはともあれ一件落着としようか。ウィッチも助けた? し菊地の仇? もうったし……僕、なにしていたんだろう。


 こんな事している場合じゃないのだ、もたもたしていたら世界が終わってしまう。でも今日はもう無理だね……明日から頑張る!!


お読み頂き、ありがとうございます


宜しければブクマや評価のほう、お願い致します


※補足として、キクチは転がり落ちた後、必死こいて2階に這い上がり拐われた事を皆に伝えようとして力尽きた……と言う事にしておいて下さい

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