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第十八話 自業自得フラグ

 攫われたはずのウィッチを助けに来た僕と破壊神は、目の前の光景に苦笑いしか出来なくなっていた。


 正確には僕だけ、ヴァルはすでにこの大根役者どもに見切りをつけているようだ。



「か、返して欲しければこの女に対する熱い思いを語ってもらおうか!?」



 キョロキョロと目を動かし挙動不審な男が演劇を続けようと声を発する。まだ続けようと言うのか? 正直僕はもう帰りたい気持ちで一杯なのだが……やる事はやらないとな。



「……そんな物は後だ。ウィッチが無事と分かった以上、先に菊地の仇を取らせてもらう。……よくも菊地を半殺しにしてくれたな?」


「…………そんな物って…………あぁ、でも突き放すオルクス様も素敵……」



 おい、結構ハッキリ聞こえたぞ? 監督ですらもボロボロじゃないか……いい加減こんな茶番には付き合っていられん。



「キクチを半殺し……? な、なんの事だ?」



 とぼけた表情をしやがって……しらを切っても無駄だ、逃げられると思うなよ?


 僕は破壊の力を纏いつつ男達に近づいた。神力は感じ取れないだろうが、この圧倒的な神気は流石に感じ取れるだろう?



「とぼけるな! 菊地は頭から血を流し、腕も折れていた! お前達がやったんだろ!?」



 ザワザワとしだす男ども、責任の押し付け合いをしているのか何やらゴニョゴニョと話し合っている。


 そしてウィッチ、見えてるよ? そんな薄目開けてないで起きなさよ。



「いや、本当に知らねえよ!? そもそも今日俺達はキクチに会っていねぇ! 今日と言うか最近見た記憶がねぇよ!?」



 こいつ等、この期に及んで……しかし嘘を言っている様子がない。どういうことだ? 菊地を襲った奴は別にいるという事だろうか?



「宿でお前の女が寝込んでいるってのを宿屋のオヤジに聞いて、酒臭い女を担いですぐに宿を出たからな!」



 おいクソオヤジ、なに個人情報漏洩させてんだよ!? 他の客の倍の料金支払ってんのに……もうあの宿は利用せんからな!



「……なぁ、そう言えばよ、宿を出る時に物凄い大きな音が聞こえたんだよ、二階から……何か大きな物が転がり落ちたような音が……」



 ……やめてくれ。そんな真実は認めたくない、フラグを作るな。


 嘘だろう菊地? お前まさか…………階段から転がり落ちたのか? それであの怪我か? でも菊地言ったよな? スッポンポン達にやられたと。



〈……言っておらんぞ? 攫われたとは言っていたと思うが〉


(嘘だろう? 僕、結構意気込んだんだけど……やめてよ恥ずかしい、階段から転がり落ちた自業自得野郎の為に僕は怒ったの?)


〈自業自得……まぁそう言うな、恐らく絶美神が攫われた事に慌てたキクチが足を滑らせて……とかであろう〉



 なるほど、それなら一応こいつ等のせいになるか、それでいこう。良かった、酔っぱらって足を滑らせたとかじゃなくて。おっと、フラグになってしまう。



「と、ともかく! お前達が起こした行動のせいで菊地は大怪我をしたんだ! 骨の一本でも壊される覚悟はあるだろうね?」



 再びザワザワとしだす土竜の宴、しかし恐れている様子はない。僕と言うよりウィッチが気になるようだね、チラチラと気絶したふりの彼女に目を送っている。



「お、おい、どうする?」


「やるしかないだろ!? このガキが何言っているのか知らねぇが、動かねぇとウィッチの姐さんに殺される!」


「そ、そうだな! ……おいお前ら! オルクス様をぶっ殺せ!!」



 当初の予定通りと言う事だろうか? しかし向けられる殺気は本物、このまま何もしなければ僕の体は殺されるかもしれない。



〈オル、我がやろう〉


(だ、大丈夫? 壊しちゃうつもり? 多分だけど……壊してしまうほど悪い事はやってないかも……)


〈絶美神誘拐、間接的なキクチの半殺し、そしてキリヤンとキクチへの暴言……何か問題があるか?〉



 どこまで行っても僕は臆病な人間か……情けをかけてしまうと言うか、どうしても破壊を振り撒く事が出来ない。


 気に入らない物は破壊するとか息まいておいてこの様……破壊神らしくなれない。



〈……オルはそれでいいのだ、自由にやれ、オルの心を無理に変える必要はない〉


(……ありがとう、ヴァル。……じゃあ、半破壊でお願い!!)


〈フハハ、半破壊か……任せておけ!!〉



 ヴァルに体を任せ、自由に動いてもらう。


 襲い掛かって来る男達の刃、それを紙一重で避ける破壊神。凄いな、武術の心得もあったのか。



〈そんな物ないぞ? だが防御する必要がないと言う事は、このような動きも出来ると言う事だ〉



 ヴァルは破壊の力を体に纏っていた。


 つまり僕の体に刃が触れれば、触れた端から刃は破壊される事になる。防御する必要がない、避けられなかったら……と言う事を考える必要がない。


 自信、余裕、本来はする必要すらない回避行動。適当に避ける事が出来て、複数戦で気にするべき他の相手の攻撃、行動を頭に入れる必要がない。背中がガラ空きでも、無駄な回避動作も、囲まれても問題ない。


 言わば完全完璧な保険がある状態。何も怖くない、恐れる事はない、自由にやれる。



 では見せてもらいましょうか、破壊神の半破壊戦闘を。


お読み頂き、ありがとうございます


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