第十六話 仲間のために
宿に戻った僕達、厨房を借りて食べ物を温めなおし、それぞれウィッチと菊地に食事を運んだ。
「ウィッチ~入るよ~? ……言ったからね? パンツ丸出しなら凝視するからね?」
返事がない……まだ爆睡中なのだろうか? 流石に酒気破壊したほうが良さそうだね……。
僕はウィッチの部屋に入った。朝とは違い、酒臭いなんて事はなかった。でももう一点、朝と違う光景が僕の目に飛び込んできた。
「あれ、ウィッチがいない……お風呂とかかな? 言ってくれたら破壊してあげるのに……」
部屋にウィッチはいなかった。ベッドの上も、もちろん床に転がっているなんて事もない。そもそもそんなに大きな部屋ではない、この部屋にいないのは確実だ。
『ふむ……面倒な事になったの……』
「え? なにが――――」
「――――オ、オルクス!! ちょっと来てくれっ!!」
ヴァルは何かに気づいたようだが、それを聞く前にキリやんの大声が響いた。
急いでキリやん達の部屋に向かう、そして扉を開けた僕の目に飛び込んできたのは、頭から血を流し倒れ込んでいる菊地の姿であった。
「き、菊地!? キリやん何やってんの!? いくら昨日の菊地が酷かったからって……」
確かに昨日の菊地は酷かった。でもここまで痛めつける事ないだろう!? そんなに相棒の代わり様に我慢できなかったのかな?
「お、俺じゃねえよ!! 食事を運んで来た時にはもう倒れていたんだ!」
慌てて弁明を始めるキリやん。本当だろうか? これ以上痴態を晒す前に処分したのでは?
……まぁ冗談はさておき、菊地を病院に連れて行かないと。呼吸はしているようだが、医学の知識などはない、素人判断よりプロに任せよう。
「冗談だよ、病院に連れて行こう? 担げる?」
「も、もちろんだ!!」
菊地を背負い、部屋から連れ出す。一体誰が、なんのためにこんな事をしたのか……。
ウィッチが居ない事と関係が? ……もしかして犯人はウィッチか? 菊地に襲われて勢い余って……あり得るな。
「…………ゥゥ…………ウィッチ様が…………ウィッチ、様が……」
呟く菊地、良かった、未だにウィッチへの情熱を燃やせられるなら生き残れるだろう。こういう奴は死なないのだ、世界に生かされるのだ。
「キ、キクチ!? 大丈夫か!? ウィッチ様にやられたのか!?」
呟く菊地に反応するキリやん、どうしよう……ウィッチが犯人だとしたら僕はどっちの味方をしよう。菊地が……悪いよな? 寝ている女の子を襲っちゃいかんぜ。
「…………攫われた…………すま、ん…………何も、出来なかった…………」
ん? 襲われたじゃなく攫われた? ウィッチが? 上位神が攫われたと言ったのか?
『……部屋に大勢が踏み入れた形跡があった、何者かに襲撃されたようだぞ?』
襲撃か、上位神を襲撃なんて……出来るかも、めっちゃ爆睡してたしね。
血が混じった涙を流す菊地、何も出来なかったと言うが、菊地がウィッチを守るために動いたのはその満身創痍の体を見れば分かる。
よく見れば片腕、これ折れているね……ふざけやがって、一体誰が……。
「分かったから! もう喋るな! すぐに病院に連れて行くから!!」
急いで菊地を神教会内部にある医療区画へと運び、治療を受けさせる。
担ぎ込まれる寸前、菊地は言った。攫ったのは土竜の宴というパーティー、それはあのスッポンポン達の事らしい。
「……仕返しか、あのスッポンポン事件の事を恨んでいるようだね」
『どうするのだ? 助けに行くのか? 絶美神は上位神、ほっといても問題ないと思うが?』
キリやんに金を持たせ、教会を後にした僕達は土竜の宴がいるという街外れの廃墟に向かっていた。
宿を出る際に宿屋の親父から聞いたんだ。あいつ等ご丁寧に居場所を親父に伝えたらしい。
ヴァルの言う通り、ウィッチは大丈夫であろう。もしかしたらもう殺してしまっているかもしれない。
でも、それだけでは僕の気が納まらない。
「行くよ、仲間を傷つけられたんだ、やられたらやり返す……でもその次はない、僕がやり返して終わりだよ」
僕がやろうとしている事、その意思をヴァルに伝える。
僕はついに人間を破壊してしまうかもしれない。構うもんか、僕は善人じゃないし人間的には未熟者だ。
運よく力を得ただけ、調子に乗るなと言えばいい、偶然力を手に入れただけの弱者……滑稽だと笑えばいい。
僕は僕のやりたいようにやる、言ってしまえば僕はその程度の人間。精々踊ってやるよ、自由にね。
『では久しぶりに破壊神オルクハザードを名乗ろうぞ! 圧倒的、絶望的な恐怖を与えた後に破壊してやろう』
「そうだね、破壊神の仲間に手を出して、破壊神を怒らせた事を後悔させてやろう!」
今回の事は僕のせいなんだ。奴らをあそこまで辱めていなければ、ウィッチと菊地に酒気破壊を放っていれば……。
そんな後悔を抱きつつ、僕達は指定された廃墟に向かった。
場所を指定するという事は、狙いは僕やキリやんという事、ウィッチに危険はないとは思うが……あの容姿なのだ、男どもが我慢できるとは思えない。
『上位神だぞ? 男の天敵、美の神だ……人間の男がどうこう出来る相手ではあるまい?』
「そうだけど……ヴァルも見たでしょう? ウィッチ、かなり酔っぱらってたよ? 下手すりゃまだ寝てるよ……」
そんな事になったらウィッチをどう慰めよう……記憶破壊するしかないかな?
そんな事を考えながら、僕達は廃墟へと辿り着いた。
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