第十四話 技名は難しい
「だ、黙れ!! オルクスは弱虫でも臆病でもないッ!! 彼は凄腕の神術使い……これを見ろよ!!」
そう言ってキリやんは男達に赤色をしたキーを見せる。
通常の探検者では三合窟を踏破するので精一杯、行けても四合窟。そんな中、僕達のキーは赤色。
四合窟を踏破した証、こいつ等がどの程度の力を持っているのか知らないが、弱虫だ臆病だと蔑んだ者が難関を突破した……それは事実なのだ。
「……赤? キー・レベル五!? なっ……お前……」
驚愕な表情をする男達、ふふふ……それだよ、その顔が見たかった!! さぁ、もっと踊ってくれ! 雑魚は雑魚らしく雑魚っぽく驚いていればいいんだ!
「…………ッブ、ブハハハハハハハハハハ!!!」
急に笑い出す男達、なんだ? 人は驚きを通り越すと笑うのだろうか?
「お、お前……またやったのか? キー・レベル四……緑になった時は教会調査隊の荷物持ちとして同行して、お情けで昇色したんだよな!?」
教会調査隊に同行? お情けで昇色? ちょっと旗色が悪くなってきたぞ……。
キリやんの様子を横目で確認する、そこにあったのは自信を無くして不安そうな顔をしているキリやんであった。
マジかい、キリやん……。
「そもそもお前達には二合窟を踏破する実力もねぇだろ!! 二合窟踏破は銀獅子の奴らの荷物持ちになってお情けで昇色したもんな!!」
またお情けかい!! 銀獅子……パーティー名かな? カッコいい……僕もつけようかな? 破壊だから、デストロイヤーズ……とか。
〈だっさ……〉
(う、うるせぇな! なら何かつけてみろよ!!)
しかしキリやん……君、出会った時に三合窟を踏破した! とか声高らかに言っていたよな? 嘘じゃないのかもしれないが……それはどうなのよ?
「今度はなんだ!? 道に落ちていたキーでも拾ったか!? ダメだろ? キーの強奪や窃盗は大罪……極刑だぜ?」
完全に実力で踏破したなどと思っていないようだ。
過去のキリやん達の行いのせいではあるが……関係ないだろ? 今回は正真正銘、実力で踏破したんだ! 言ってやれキリやん!!
〈……今回も荷物持ちとして踏破したのではないか?〉
(……ちょっとナニイッテルノカワカラナイヨ)
「う、うるさい!! 俺は五合窟も踏破したんだぜ! お前らのような雑魚とは違うんだよ! 四合窟にも挑戦出来ない弱虫どもがッ!!」
凄むキリやん、その意気や良し。
五合窟を踏破した、それは嘘ではない。役には立っていないが踏破したのは事実、役には立っていないが。
覚悟を決めたキリやんに耳打ちをする。なんて事はない、破壊の力をあたかもキリやんが使っているように見せるだけ、その打ち合わせだ。
「テメェ……調子に乗ってんじゃねぇぞ? ホラばっかり吹きやがって! なら俺達を打ち負かしてみろよ? つえぇんだろ? いくぞオラァァァ!!」
手に剣や槍、斧などを持ちこちらに駆けて来る男達。
さぁホラ吹きキリやん! 力を見せる時だぞ!!
「ヒッヒィィ!? た、助けてくれオルクス!!」
足が震えているキリやん、流石に少し情けない。
ちゃんと手はず通りに動くんだ……そうそう、腕を上げて手を奴らに向けて。
「く、くくらえッ!! 神術・え~と……とにかくくらえぇぇ!!」
「――――武器破壊」
僕は震えるキリやんの後方より破壊の力を放った。武器を認識して破壊する、今まで一番優しい破壊かもしれない、体に影響は一切出ないのだから。
しかしキリやん、カッコいい技名を叫べと言っただろう! まったくもう……。
「お前の神術なんざ効かねえよッ!! くらいやがッ…………は? あれ?」
振り下ろそうとした斧の感触、重さを感じなくなり、武器を確認しだす男。
そこにあったのはまさに壊れゆく途中の斧、その不気味な現象に慌てて柄から手を放し斧を放る。
「なっなんだこりゃ!? お、お前がやったのか!?」
完全に消えさった斧から視線をキリやんに送る男、しかし当の本人、キリやんも驚愕な表情でそれを見ていた。
『お前が驚いてどうする。ほれ次だ、手を奴らに向けろ』
訳も分からずと言った表情のままヴァルの指示に従うキリやん。よし、仕上げと行こうか!
「ご通行中の皆さまご注目ぅぅぅ!! これから起こりますのは超現象! この男、名をキリヤン!! 今からキリヤンがこいつ等の服を一瞬で消してご覧にいれます!」
ザワザワとしだす周り、集まる目、目、目!! 男達が凄んでいた時は関わらないようにと無視を決め込んでいた有象無象は、変わりだした雰囲気に興味を持ち足を止め始める。
「さぁキリやん、舞台は整った! いっちょ派手に頼むよ?」
「な、なんで注目を集めるんだよ!? ……くそっ、こうなりゃヤケだ! やってやるよ!!」
そんな中武器を失い、僕の言葉に呆気に取られていた男達が気を取り戻し、僕達に怒りの顔を向け始める。
「ふざけんじゃねぇぞテメェらァァァァァ!!」
向かって来る男ども、己の肉体を武器に攻撃をするつもりのようだ。
ほれキリやん、さっさと技名を叫びなさい。
「っく……え、えと、神術・服……が消えちゃう!!」
「なんじゃそりゃ!? バッカもう!! ……衣服破壊」
その刹那、壊れる衣服、スッポンポン。
粗末な物を世界に晒し、それを見て笑い出す見物客、黄色い悲鳴を上げる淑女達。
周りの見物客の様子を見て、疑問に思うスッポンポン達、そよ風を体全体に感じ始める。
「なぁッ!?!? な、なんだよこれ!? み、見るんじゃねェェェェェ!!!」
慌てて隠すが時すでに遅し、その粗末な物は衆目の目に晒された。
せせら笑う声があちこちから聞こえてくる、ついに耐え切れなくなりその場を逃げだすスッポンポン達。
「ッく! クソが!! 覚えていやがれキリヤン!! それとクソガキ!!」
典型的な雑魚台詞を吐いて消える。その後に響いたのはキリヤンを包む喝采。
喝采と言う程大きなものではないけど、みんな口々に面白かったとキリヤンに告げ、その場を去っていく。
本当は僕がその立場にありたかったけど、今回は譲るよ。
これからも頑張れよキリやん? 菊地と共に、この大陸の名物キャラになる事を願っている。
「『……では』」
「いや待ってよ!? お別れみたいな雰囲気出さないでよ!?」
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