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第十二話 ろすとてくのろじー

「あぅふぅぅぅぅぅぅぅ……ふぅぅぅぅん……」



 次の日の朝、僕は隣の部屋から聞こえてくる悩ましい声を聞き目を覚ました。


 隣はウィッチの部屋、その部屋から聞こえるエロチックな喘ぎ声。僕は興奮した、ワクワクした、彼女の寝室は解放済みと言っていたし様子を見に行く事にしたんだ。


 ……来なければよかった。



「こ、これは酷い……まぁ可愛いと言えば可愛いけど、美の神の寝姿ではないね」


『酒くさッ!! どれだけ飲んだんだコイツ!?』



 昨日の乱痴気騒ぎの後、僕はウィッチを、キリやんが菊地を引きずり宿に入った。宿の受付のオッサンの嫌そうな顔が忘れられない、倍の料金を払う事で泊めてもらった。



 そうそう、料金と言えば……飲み食い代、足りなかったんだよね……。


 また借金……正確にはツケというらしい。この街は霊峰の恩恵を受けている街、金の動きも相当なもの。


 そのため赤貨が三枚も足りないという事でも、赤貨二枚をポンと払った僕達に目を付けたのか、店の店主は後で不足分に色を付けて払えばいいと言って僕達を解放した。


 赤貨三枚の皿洗いなんて何年かかるか分からないから助かったよ……。



『そんで? どうするのだコイツ、酒気を破壊するか?』


「う~ん……その破壊はあまり使いたくないんだよね、その破壊は風情がないもの」



 酒気破壊をすればウィッチのこの状態も回復するだろう。でもそれは面白くない。


 酒と言うのは次の日の状態を含めて、考えて頂くもの……保険がある酒飲みはつまらない。なんて、僕お酒なんて昨日初めて飲んだけどね。



「休ませてあげよう、ウィッチにもいい教訓になるだろ…………はぁ、まったく、こんなパンツ丸出しで寝て……」



 ベッドではなく床に大の字になって寝ているウィッチ。そのスカートは捲れ上がり、丸見えだ。


 僕はチラリズムが好き、丸見えは何か違う。


 僕はウィッチをベッドに寝かし、スカートを直してから部屋を出た。



「うぅぅぅぅん……オルクス様ぁぁぁぁぁ…………この変態ッ!!」



 どんな夢を見ているのか、閉じた扉の奥からウィッチの声が聞こえた。


 それを聞いたのち宿のロビーまでやってきた。そこにいたのは憔悴した様子のキリやん、相棒はどうしたのだろう?



「おぅ……おはよう……昨日は……楽しかったな?」



 とても楽しそうに思っていたとは思えない。覇気のない声、目に出来た隈、顔色も少し悪そうだが……大丈夫か?



「キリやん、菊地はどうしたの?」


「……部屋で死んだように寝ているよ……ほんとビックリだぜ! アイツの鼾、歯ぎしり、寝言! おかげで俺は一睡も出来なかった!!」



 菊地、昨日凄かったからなぁ……楽しそうだった!


 キリやんは相棒の代わり様に心を痛めている様子、だがそれは仕方ない。誰しも隠し持っている顔があるのだ、菊地の場合は奴隷願望があったという事だ。



「くっそ……ねみぃ……ウィッチ様ウィッチ様うるせぇんだよ……」



 それも仕方ない、彼女は絶美神なんだよ? 人間が抗えるものじゃないんだ、キリやんがまともだったのが凄いくらいだよ……はぁ、仕方ないな。



「眠気破壊…………ほら、行くよキリやん!!」


「…………へ? あ、うん……あれ、なんか急に目が覚めたような……」



 キリやんを連れて宿を出て神教会に向かった。


 連泊分の料金を払い、二人は宿に置いてきた。おかげで財布がスッカラカン、昨日は金持ちだったのに一気に貧乏になった。



〈我は寝ていたから知らないが、なんで赤貨五枚なんて額になるのだ?〉


(神殺しだよ! あれ、かなりの珍酒らしい。でも強すぎて頼む奴がいないとか……店の在庫をほとんどウィッチが飲んだんだって……)



 あの酒がなければ精々緑貨数十枚と言った所だった。もう、ウィッチに酒を飲ますのはやめよう。



 ――――神教会に着いた僕達はキーの更新手続きを行っていた。


 今までは第四合窟までのキー、これからは第六合窟までのキーになるらしい。



「ではこれがキー・レベル五です、お受け取り下さい」



 神教会の受付に渡される……キー・レベル五?


 このお姉さん、可愛い顔して僕をからかっているのだろうか? なにこの……銭湯の鍵みたいな……扉はあんなに近未来なのに。



「お姉さん、これキー・レベル五って言うの? これどうやって作っているの?」


「作っていません、キーは道に落ちていたそうです。宝箱の中に大量のキーがあったとか言う伝説もあります」



 道に落ちていた? え……そんな事ある? 宝箱ならまぁ……。


 受付のお姉さんの表情を窺うが、とても冗談を言っている様には見えない。何か凄い技術でもあるのかと思ったんだけど……。



「……えと、ならどうして僕達が四合窟を踏破したって分かるの?」


「踏破するとキーの色が変化します。と言っても完全に変化しきるまでは数年かかりますので、そこで変化済みのキーと変化中のキーを交換致します」



 色が変わるだけ? 渡されたキーは赤色、確かにさっきまでのキーは緑っぽかったけど……。



〈深く考えるな、神の力が働いているのは間違いない。宝の神や機械の神が絡んでいるのだ〉


(こういうのは明確にしておきたいんだけど……神の技術で作った物を人間が拾い、訳も分からず今まで使ってきたという事だよね?)


〈まぁ、簡単に言えばそうだな。人間には作れない、分かっているのは洞窟に入るのにはキーが必要、踏破するとキーの色が変化する、変化したキーを使って上層に入れる……これだけであろう〉



 訳も分からず超技術を使う。それは破滅への第一歩ではないかい? まぁ得られる恩恵は凄いのだから、仕方ないのかな? でも変態な神が創った技術だ、気を付けた方がいい気がする。



「古代の遺物です! 私達の先祖は優れた技術を持っていた、ろすとてくのろじいです!! 研究はしていますが、まったく分からないそうです」



 なるほど、そっちの方向ね。よくあるよね、ロストテクノロジー!!


 しかし銭湯の鍵がロストテクノロジーか。いや、色が変わる銭湯の鍵は凄いかもしれない。


 よくあるよね! なんか変色した銭湯の鍵!


お読み頂き、ありがとうございます


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