第十一話 神殺し
「それじゃあ第四合窟踏破を記念して…………かんぱ~い!!」
「「「かんぱぁぁぁぁぁい!!」」」
和やかな雰囲気で始まった宴会。
僕、乾杯の音頭取ったのなんて初めてだよ……と言うか宴会に参加出来たのが初めてだよ。
〈おいオル!! もういいだろう!? 変わってくれ、我にも食わせてくれ!!〉
(馬鹿なのか? まだ一口しか食べてないぞ? どんだけ強欲なのよ)
作戦成功だ、この時の為に僕はずっと体の支配権を維持していた。
常に強奪の危機を感じながらの生活は気が気でなかった、とくに宴会が決まってからの数時間は人生で一番集中したと言っても過言ではない。
僕はそのまま支配権強奪に注意しつつ食べまくった。まだまだこれからだ、夜は長いんだぜ!?
「――――かぁぁぁうめぇぇぇ!! ほんとオルクスとウィッチの姐さん様様だぜ!」
「…………礼を言う」
盛り上がってるなキリやん、菊地も嬉しそうだが……僕その礼を言うって言葉がよく分からん。
礼を言う? いや言えよ! その礼の中身を言えよ!! どうもとかありがとうとかさ。
なんやねん礼を言うって、礼と言うのは行為の事だろ? なにカッコつけてんの! なんで誰も疑問に思わないのだ?
しかしこの水うまいな……気持ちよくなってきた。よぉぉぉし、僕が説教してやる!
「菊地君!! 礼を言いなさい礼を!! 君は目上の人に向かって、礼を言う……って言うのか!? 言わんだろう!? 我、破壊神ぞ!?」
「…………す、すいません」
「すみ! ませんだろう? 何を吸うんだよ? 済まない事をした、済みませんだろう!?」
まったく! 近頃の若い者は!! 礼儀がなっとらん!
そんなしょんぼりした顔をしてもダメだ!! その横で楽しそうにウィッチと喋っている……キリやん、貴様ぁぁ!!
「キリやん!! 物を食いながら喋るな!! 己を恥じろ!! そんな事をした自分を悔いながら食いやがれ!!」
キリやんが慌てて口を閉じる。まったく、少しはウィッチを見習え! 見ろよ、この上品な食べ方……。
「あはあははあっははは~この水うまぁぁぁぁいい、ガハハハハハ!!」
僕は慌ててウィッチから目を逸らした。
気のせいだ、ウィッチが片足を椅子に上げて水をボトルごとラッパ飲みしていたような。
あれだけ不思議な力で守られていたスカートの中が丸見えだった、でもお前らに色は教えてやんない!!
…………見なかった事にしよう。
「あぁぁぁぁぁそこの中の下の女! かしづきなさい! この水お代わりよ!!」
ひ、酷い……ウィッチは内面も美しかったはずなのに、今は嫌な女だ。しかし店員さんは流石にプロ、笑顔を崩す事はなかった。
「はいっ!! 顔だけ女からオーダー承りました! 神殺し・改のお代わり、すぐにお持ち致します!」
「よろしくってよ!? おーっほほほほほほほほ!!」
何がよろしいのだ? 今、君は顔だけで中身はブスと言われたのだぞ?
と言うか神殺し・改? 物騒な名前の水だな。
〈あ~あ、もう知らん、支配権もいらん……我は寝る〉
その後僕達は飲み食いを続けた。こんなに楽しい宴会は初めてだ。仲間がいると言うのは素敵な事だね、みんなにマジ感謝。
それから数時間、僕は現実から目を逸らしたくなっていた。
「キリヤン、わらわの名を言ってみよ」
「ウィッチ様です! ふぅぅぅぅぅ!!!」
「キクチ、お前はなんのために存在している?」
「ウィッチ様ぁぁウィッチ様ぁぁぁ踏んで、踏んでください!」
女王様モードになったウィッチ、そして下僕の二人。
神殺しとは神をも狂わせてしまうほどに度数の高い、お酒らしい。僕は早々に気づいて飲むのをやめたが、ウィッチはアホみたいに飲み続けた。
神を殺すのは神ではない、もちろん人間でもない、まさか酒だったとは。
「ふふふ、良い子ね……キクチ、あなたを踏んで靴が汚れてしまったわ? 綺麗にしなさい」
「ウィッチ様ぁぁウィッチ様ぁぁ……ペロペロ……」
菊地……君は臆病だけどこんな子じゃなかったのに……。
そんな舌を伸ばして……プライドはないのか!? 羨ましい! 代わってくれ!!
「っ汚い!! 舐めるな!! 余計汚れるわ!!」
菊地を蹴り上げるウィッチ、いいなぁ今絶対見えたでしょ?
しかし酷いな、神を殺す酒……人間が飲むとこうも人格が崩壊するのか。キリヤンは、あまり変わっていないようにも感じるが……。
「うぐふぅぅぅ……ありがとうございます、ありがとうございます……」
「お、おいキクチ……大丈夫か? お前、そろそろやめとけよ?」
尋常じゃない様子の菊地を心配する相棒のキリやん。
キリやんはウィッチの魅惑から抜け出せたようだ、問題はこの馬鹿だが……。
「ウィッチ様ぁぁ罵って下さい! ウィッチ様ぁぁ!!」
「女王様とお呼びッ!! そうねぇ、十回回ってアオーンと鳴いたら考えてやるわ」
っく……もうやめようよ? お酒は人を狂わせる、神すらもだ。
回るな……菊地。お前は頑張った……もういいから……。
「や、やめてくれキクチ……俺、明日からお前をどう見ていいか分からねぇ……」
「……アオーン!! アオーン、アオアオアオーン!!」
そんな絶望的な状況の中、もう破壊するしかないと思っていた所に現れた救世主。このカオスを消し去ってくれる救世主は、僕達にこう告げたんだ。
「あ、あのぉ~お客様? お楽しみの所申し訳ないのですが、閉店です。お代は赤貨五枚になります」
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