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第十話 楽しかった

お読み頂き、ありがとうございます

「よっしゃ! 生きて出られた! 太陽が眩しいぜ!!」


「…………無理じゃなかった」



 第四合窟の探検を終えた僕達は、洞窟の入口まで戻って来ていた。


 喜びを体全体を使って表現しているキリやんと菊地、帰り道は魔者に襲われる事もなく、スムーズに戻って来る事が出来た。



「なぁ、どうしても宝が何だったのか教えてくれないのか?」


「…………よほどのお宝か?」



 キリやんと菊地には宝の詳細を伝えていない、もちろんウィッチがダメだと言うから。


 そりゃそうだよね……宝箱に設置される己の下着、気分いい訳がない。



「……これだけは言っておく、新しいと言う事が必ずしもいいとは限らない。古くても使用済みでも、新しいものより優れている事があるのだ!!」


「オ、オルクス様……流石に使用済みと言うのはダメだと思います……変態すぎます……」



 顔を真っ赤にして俯いてしまったウィッチ。


 寝室が開いているとか、胸を押し付けるとか、顔を踏むとかはオッケーなのに、なぜこれはダメなのだろう。


 そりゃいつも恥ずかしがってはいるが、ここまで拒絶や拒否を僕にする事はなかった。あの後お宝を返す様に言ったが、ウィッチは頑として譲らなかったし。



〈女心が分かってないのぉ~、あれは確かに絶美神の使用済みだが、絶美神から離れればただの布だ、そんな物ではなく私自身を愛せと女は思うであろう〉


(そんなっ! もちろんウィッチ自身の事も良く思っているよ? でもウィッチの使用済みを愛してはいけないなんておかしいよ! 男なんてそんなもんなんだよ!)


〈想像してみろ、見えない所で自分の使用済みが使用される恐怖……使用済みなのに使用するとはこれ如何に……〉


(う……それは確かに気持ち悪い……でもウィッチのだよ!? 使用済みだよ!? 絶世の美女の使用――――)


〔――――もうやめて下さい!! 使用済みって……その言葉嫌いですっ!!〕



 ウィッチにしては珍しい強い怒りの声を受け、僕達は閉口した。申し訳ない、でも男なんてこんなもんだよ。【個人の見解です】


 その後ウィッチの変態を見るような目にゾクゾクしつつ、山を降りて神教会本部に足を運んだ。


 さすが神教会の本部、建物からして大きさ、デザインの洗練さが違う。これに比べればジャストンの教会なんてただの物置だ。



「じゃあまず、魔者の素材を売りに行こう! その後でキーを第五合窟の物に変えてもらおうぜ」


「ねぇ、よくよく考えたらそんな大量の魔者売れるの? とても常人が狩れる量じゃないじゃん、怪しまれない?」



 僕はキリやんに疑問を呈した、面倒事はごめんだしね。


 あまりにも矮小な存在となってしまった魔者、しかしそれは最上位神に限った話。通常であれば、魔者を狩れる人間なんてそうそういない。



「アンタ達チュウオウは初めてか? チュウオウは他の大陸と違って、魔者の性質が違うんだよ!」


「…………共食いをする」



 共食い? 魔者が魔者を食う? そんな話は初めて聞いたな。



「だからチュウオウには魔者の死体がゴロゴロ転がってる、その分他の大陸の魔者に比べて報酬は少ないがな……」


「…………他の大陸の三分の一」



 さ、三分の一……そりゃずいぶんとピンハネをする。


 魔者の強さ、脅威は変わらないと思うけど……ハイエナのように魔者の死体を漁る奴が多いって事か。



「だから死体漁りをして生計を立てている奴もいる。……オルクス達には悪いけど、恐らく俺達もそう言う目で見られる……俺達で倒したと言っても、誰も信じてくれないと思う……」


「…………すまん」



 悲痛な顔をするキリやんと菊地。


 別にお前達がそんなお顔をする必要はない、分かる奴には分かる、知っている奴は知っているんだ。


 絶対的強者は、存在するという事を。



「気にしなくていいよ、分かってるから。……あと、訂正してくれる? 俺達……じゃなく僕達が倒したのだから、そこに君達を含めないでよ」



 僕は冗談っぽくそう言う。こいつ等は戦闘に関しては全く役に立っていない、邪魔だったほどだ。


 でもあの時、僕達は確かにパーティーだった。荷物持ちも、マッピングもそう。そもそも洞窟に入れたのはキリやん達のお陰。


 なによりキリやんの明るい雰囲気、菊地の面白い言動には笑わせてもらった。


 僕も何度かパーティーを組んだ事はあるけど、そんなものよりこの数時間の即席パーティーで行動した事の方がよっぽど楽しかった。


 僕が力を得たと言う事ももちろん大きいだろう、でも……楽しかったんだ!!



「ははは、そう言うなって! この魔者、結構重かったんだぜ!? ……じゃ売って来るな!」


「…………待っててくれ」



 笑いながら重そうなバッグを担ぐキリやんと、再び寡黙となった菊地を見送る。この教会は広いから、歩き回らず待っているのが得策かな。



〈金、持ち逃げされたりしないだろうな?〉


〔あり得ます、人間なんてそんなものです〕


(大丈夫だよ、そんな事をして僕達の反感を買うなんて事、彼等には出来ないよ。そんな事よりウィッチ、お宝返してよ!)


〔ま、まだ諦めていなかったのですか!? いくらオルクス様の頼みでもそれは無理です! そもそもアレは私のです!!〕



 その後戻ったキリやん達と合流し、本日の稼ぎを使って祝勝会を開く事とした。


 その稼ぎは赤貨二枚、一気に大金持ちだ! 今日は盛大なパーティーになりそうだよ!!


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