第九話 価値ある中古品
お読み頂き、ありがとうございます
完全に悪ふざけで書きました、読み飛ばして頂いても問題ございません
「じゃあ……開けるよ?」
アンドロイドを倒した? 僕達は、一応宝箱を開ける事とした。キリやん達はトラウマにでもなったのだろうか、宝箱には近づかず、入口付近でこちらの様子を窺っている。
『早くしろ、どうせ中古の靴下だ……早く帰って飯にしよう』
「あ、あはははは……流石に使い古した靴下なんてあり得ませんよ……」
期待出来ない宝箱を開ける苦痛、みんなは分かるだろうか?
危険はなかったとは言え、数時間も洞窟内を歩き回ったのだ、その報酬が中古品……。
心からの願いだ! せめて新品であってくれ!! この世に新品より価値のある中古なんて存在しないんだよ!!
「………………なんだこれ? 黒い布……? それと紙……」
『ほらやっぱり! アホらし……』
「あ、あはは……げ、元気出してくださいオルクス様!!」
ヴァルは早々に興味をなくし、ウィッチは悲しむ僕を慰め始める。
しかし……僕は悲しんでなどいなかった。
一瞬見えた最後の文字、それが僕の心に雷を落としていた。
僕は歓喜に打ちひしがれていた。僕が間違っていた、新品より価値のある中古品は存在した。
――――ここまで死線を潜り抜けた勇者に、これを託す。これは私が死線を潜り抜け手に入れた宝である。
紙に書いてあった、恐らく機械神が書いたのであろう文字に、僕の目は釘付けになった。
――――第三合窟の靴もそう、私が泥水を啜りながら血と汗を流し得た宝である。これはかなり昔の事だが安心してくれ、これには保存の神の力を借り、半永久的に当時の状態を保っている。
機械の神に血と汗が流れるのだろうか?
当時の状態を保っている……保存の神は、どう言う気持ちでこれに保存の神力を放ったのだろう。
――――何故このような宝を他の者に与えるのか……良い質問だ。
聞いていない、しかし聞きたいと思っていた所だ。
――――これらを手に入れた時、私は歓喜に震え上がった。しかし私は気づいてしまったのだ……私には五感がない、正確には嗅覚と触覚、そして味覚がない。
な、なんと言う事だ!?!? それはさぞ無念であっただろう……このようなお宝を、感じられないとは……。
――――ありがとう戦友、その思いだけで私は十分報われた。私は絶望に打ちひしがれた……食事のオイルも喉を通らず、日課の油差しメンテナンスも忘れていたほどだ。
いいんだ戦友、して……どうなったのだ?
――――私は苦しんだ、転生しようと何度も自害しようとした。しかし転生した所で私は機械神、五感を得られる訳ではないのだ。私は己の宿命を呪った。
分かるぜ、その気持ち。僕も不幸な人生を繰り返したんだ、死んでも死んでも不幸、記憶はないけどね。
――――三百年ほど悶々と過ごした。
三百年もかよ!? 悶々とは……まぁ、悶々するわな。
――――私は、己の神体を改造しようと思い付いた。初めは時間をかけ神体を変化させるつもりだったのだ、保存もしていたし。しかしっ!! 私は待てなかった!!
待てなかったのか!! それは仕方ないな!! 僕もそうすると思う!!
――――私は体を弄った。私は機械の神、機械の体を弄るのは朝飯前なのだ。嗅覚、触覚、味覚を得るため寝る間も惜しんで改造しまくった。
さすが機械の神だ! しかし神界だ、眠くはならないであろう?
……して、どうなったのだ?
――――失敗した。
な、なに!? 失敗!? 改造に失敗したのか!?
――――君の気持は良く分かる、機械の神がなに失敗してんねん!? であろう? 言い返す言葉もない。
そりゃそうだ! 機械の神だぞ? 機械とは君の事だ!! 失敗とかあり得ないだろう!? 機械を司る、機械そのものだろう!?
――――はやる気持ちを抑えられなかった。私はAとBの液体を逆にして体に流し込んでしまった。
初歩的なミス!? 塩と砂糖を間違えるみたいな!? もっと慎重に行こうよ!!
――――私は暴走した、危うくお宝を消し炭にしてしまう所だった。最後の最後、自爆装置を起動する寸前で私は停止した。
危ねぇな!! こんなお宝を消し炭なんてとんでもない!!
――――私は数百年眠りについた。目覚めた時私は……視覚と聴覚を失っていた。
五感全部!? それは生きていると言うのか!?
――――私は最後の手段に出た。私のメインメモリーをお掃除ロボットに移植し、生き永らえた。私は転生を選ばなかった。
な、何故だ!? お掃除ロボットになってまで生き続けた理由はなんだ!?
――――私は託すと決めたのだ。私は機械……その私がこのお宝を楽しもうとしたのがそもそも間違っていたのだ。
託す……?
――――五感を持ち、私と同じ思いを抱いてくれる友よ……そう、君だ。ここまでの長文を呼んでくれた君は、私と同じ思いを有していると私は確信している。
あぁ、もちろんだ……友よ……。
――――友にこれを託す……願わくば、いつの日か私達が出会った時、酒でも飲みながら感想を語ってくれ。私はいつまでもお掃除ロボットとして君を待つ。
あぁ、もちろんだ……必ず会いに行く。
――――では、受け取ってくれ。これが私の人生最大にして最高、至高のお宝だ!!
うん、いいから早く渡せ。
――――絶美神、ウィッチ・ビチの使い古したおパンツ………………
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! な、なんですかそれ!?!? か、返してくださいオルクス様!?!? あぁぁぁぁぁ!? よく見たらこれ!! いつだっかか盗まれたお気に入りの下着!! アイツが盗んだのかァァァァァァ!!!」
すまない機械の神……一瞬の隙をつかれて宝が奪われてしまった。安心してくれ、温もりは覚えている。
いつか、語り合おうぞ!!
「ふざけんな機械神んんんんん!!!!」
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