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第三話 中央霊峰

お読み頂き、ありがとうございます

 街で準備を整えた後、僕達四体は霊峰の登山道を歩いていた。


 別に準備なんかいらないのだけれど、山を舐めるな! と言うキリやんの言葉に従い準備を行った。まぁ僕達は食料しか準備していないけれどね。



「うっし! お疲れさん! ここが第三合目だ!」



 声高らかにそう言うキリやん。どうだ凄いだろ! と言った表情をしているが……。



『まさか案内とはここまでの事か? 周りを見ろ、杖を突いたご老人が散歩しているぞ?』



 そうなのだ、観光客だらけ。


 道は整備されており、魔者の襲撃から観光客を守るためだろうか? 辺りを警戒している様子の人の姿も多い。



「……役に立たない男……」



 ウィッチがキリやんを蔑んだ目で見る。そういう表情も出来るのか、僕の事も睨んでほしい。


 その言葉と突き刺さる視線に慌てたキリやんが弁明を始めた。



「ち、ちげぇって! ここは登山道、お宝は山の中だぜ? あそこに洞窟が見えるだろ? あれが霊峰第三合窟、あそこを踏破したって事だよ!」



 そう言って洞窟を指差すキリやん。


 確かに洞窟がある、ポッカリと開いた穴は暗く、その中まで見通す事は出来そうにない。


 第三合窟? もしかしてこの山は穴だらけなのか? 大丈夫なの? 世界最大の山が穴だらけって……。



〈山の神でも住んでいるのだろう、知らんけど〉


〔山の神はいると思いますよ? 知りませんけど〕



 まぁ雑草やタンスの神がいるくらいだ、山の神はいるだろうさ、知らないけど。



『ならもっと上に行くぞ。そもそも我らの目的地は火口だ、この洞窟が中心部に繋がっていると言うなら構わんが』



 その言葉に唖然とするキリやんと菊地。


 僕達はお宝探しに来たんて言っていないよ? まあそれも楽しむつもりだけど、まずはお勤めを果たさないとね。



「も、もっと上!? 火口!? な、なに言ってんだよ! そんなの無理に決まっているだろう!?」


「…………無理だ」



 喋った!? ずっと黙っていた菊地。


 言葉を失ったとか言う設定があるのかと思ったが……無口なだけか。



『無理? それを決めるのは貴様達ではない、勝手に我らの限界を決めないでもらおうか?』



 時々カッコいい事を言うヴァル、中身はポンコツなのに。



〈我は最近思うのだ、ポンコツはオルの方ではないのかと……〉


〔な、何を言うのですか!? オルクス様はポンコツじゃないです! 素晴らしいです! 史上最高の存在です!〕


〈……お前も大概よな? 恋は盲目……美の神が情けない……〉



「あ、あんた達がどれだけ強いのか知らないが、第四合目以上はほとんど整備されていないし安全も確保されていない! 傭兵を雇ったり、大隊を組んで挑む所だぜ!?」


「…………無理だ」



 …………無理じゃない。


 何を慌てているのか知らないが、一つ上に行くだけでそんなに危険になるのか? 面倒だな、破壊神って事を暴露しようかな。



〈やめておけ、頭おかしい奴だと思われるぞ?〉



 仕方ないな……なら、力を見せつけよう。


 再び黙り込んだ菊池に近づき、僕は手を差出した。



「菊地君、その剣ちょっと貸してくれない?」



 ゆっくりと差し出された菊地剣。


 武器の事はよく分からないが綺麗だ、刃こぼれ一つない。よく手入れしているようだ。



「…………まだ一度も使っていない、大事にしてくれ」



 使ってないのかよ!? そりゃ綺麗だわな!!



「お、おいおい……アンタ左利きだったか? 右だよな? 両手持ちするなら手の位置が上下逆だぞ……?」



 う、うるさいな。重くて両手じゃないと持てないんだよ! ……こうか? よし……。


 剣を上段に構え、そのまま下段へと振り抜く。自分で言うのもなんだが、剣に振られているとはこの事だな。


 だが僕は剣術を見せようとした訳ではない、剣の軌道がブレブレでも問題ない。



 振り抜くと同時に、左手より破壊の力を飛ばす。


 神力は人間に認識する事は出来ない、圧力を感じる事は出来るかもしれないが、まさか神の力が放出されたなどとは思うまい。



「真空刃斬!!」



 それっぽい技名も忘れずに。


 とても真空を作り出せるような高速の振り抜きではないが、結果が出れば騙される。


 真空モドキ破壊の力は地面をゴッソリ抉りながら、山の斜面にあった大岩に激突し一切の抵抗を見せる事なく突き抜けた。



「はぁぇ?」


「…………」



 目を見開くキリやんと菊地。


 目の前の光景が理解出来ない、それほどまでに異様な光景。


 大きな音がする訳でもなく、突如消え失せた大地と大岩。抉られた地面は人間が必死こいて整備した道より綺麗に整地され、大岩に空いたのは不自然すぎる丸穴。



〈オ、オル、少しおかしかったぞ? 剣を振り抜いてから時間差で破壊の力が放たれた……見ようによってはその剣は関係なく見えるかもしれん……〉


(実は僕もそう思った……だってこの剣重いんだもん!! そっちに意識を持ってかれて……そんな状況で狙った場所に破壊の力を打つのは難しいよ!!)



 僕は剣を菊地に返す、呆然とした様子ではあるがそれを受け取った菊地。


 ど、どうしよう、ただ力を見せるだけのつもりが……人間に破壊の力を使って力を誇示するのは難しいのかもしれない。



「あ、な、なんだ今の? オルクスがやったのか? ……神術か? 剣を杖代わりにしたのか?」



 剣を杖代わり? なんだそれ、僕の事を神術使いだとでも思ったのだろうか?


 やっぱり剣を振った事によって生まれた結果だとは思わなかったようだ。


 体、鍛えようかな?


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