第十六話 天蓋
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『い、や、で、あ、る!!』
大地の神を破壊した事で、下界に起きた異変。
内容は聞いていないけれど、何かしら起きたのであれば僕達の責任でもある。
「そんな事言わないでさぁ~ヴァルハザードのせいなんだから、少しは言う事聞いてよ……」
『我のせい? 多少はあるかもしれんが、そもそも再任が遅れたと言っていたではないか! それは我のせいではなかろう?』
「そうだけど……そもそも破壊なんてしなければ再任の必要もなかった訳で……」
困り顔のクロノア。
クロノアの言う通りだ、始まりはヴァルなんだ……ひいては僕か……。
〈オル! 言う事など聞く必要はない! 我らには力がある、自由にやればいいのだ!〉
(そ、そうだけど……他人に迷惑を掛けてまでの自由は……僕には楽しめそうにないよ……)
そうだ、正直僕を虐めてきた奴らがどうなろうと知った事ではない。そいつらに被害が出るって事なら、僕も迷わず見捨てたさ。
でも今回は違う。僕の行動の影響で、なんの罪もない人間に影響が出るかもしれない。
それを無視する事は…………僕の思う自由とは違う。
「ごめんね? さっきも言ったけどこれは天蓋の決定事項。……破壊神を動かす事に賛同した天蓋は三神……僕と、理と、死……それでも抗う?」
ヴァルに動いてもらう事に賛同した神が三……。
つまり、ここで突っぱねるという事は……その三神を相手にしなければならないという事……?
時を司るクロノアと、理? 理ってなんやねん? と死を司る神。
『くだらん、その天蓋とやらが束になった所で障害にはならん…………が、我の相方は聞き入れてやるそうだ、感謝しろよ? 時の』
不遜な態度だな! まぁ破壊神はこうじゃなくちゃね!!
「あははは! うん、ありがとう人間! ほんと君には感謝しているよ……面倒な破壊神の手綱を握ってくれるんだから……」
『……なんか言ったか? ……それとそこに隠れている神ども、出て来い』
ヴァルの言葉で姿を見せた神。
一つは地面に急に現れた影の中から、もう一つは……体を花びらまみれにしながら花畑より花をかき分けて現れた。
「……良かった……聞き分けよくて……死なすのは……面倒だし……」
「道理!! こうなる事はすでに決まってェェブ……なんだこれ? 花? ワシの口にお花が咲いたぞ?」
目に真っ黒な隈を作った美女と、どこかアホっぽいオッサンの神。
美女はすんごく幸薄そう……僕と同じ雰囲気を感じる。
そしてオッサン、口に花が咲いたら花の神もビックリだろ。
花畑に潜んでいた時に口に入ったとしか思えん……これが理? 理って、なんか頭良さそうに聞こえるけど……。
「……破壊……あなたから……死の匂い……する……」
そう言って僕の方を見る美女。
美女だけど、全身黒い……黒髪、黒い瞳、真っ黒なローブを纏ってるし……そしてその隈!
これが死の神か……人間が最後に見る神らしいが、可愛いけど最後と言うならもう少し化粧とかして隈は隠したほうがいいんじゃない?
[死装束、死化粧……と言うらしいよ? あの隈は化粧って話だけど……]
(そうなんだ、三日位寝てない人の目だけど……よくよく考えたら神界では眠くならないんだったね)
『死……? あぁ、オルは死んでいるからな』
「……死んで……? そうなんだ……だからか……変な匂い……する……臭い……」
く、臭い!? 僕が!? いきなり何て事言うんだこの神!
キモいウザい臭いは禁句だ! 特に君のような美女に言われるのは堪える……。
「……転生……しない……?」
死の神が首を傾げて問いかける。
転生はまだ出来ないな……したらまたどん底の人生が始まってしまう。
『うむ、オルにはやる事があるでな……そうだ! せっかく神界に来たのだ、転生神をぶっ飛ばしに行こうではないか!!』
「転生神をぶっ飛ばす? 物騒だね……そう言えば最近、転生神も会議に来ないよ、ほんと天蓋は問題児ばっかりだ……」
そう言ってクロノアが肩を落とす。
苦労人のようだ……天蓋のまとめ役、とかなんだろうか?
しかし転生神も天蓋……それなりの力があるという事。何も考えずに破壊の力をぶつければいいと言う訳ではなくなったね……。
「……転生……なにか……された……?」
『別にお前達には……まぁいい、聞かせてやる。そのかわり我らのやる事に口出しするなよ?』
ヴァルが僕の半生を語って聞かせた。
相変わらず脚色あり、自分の口からではあるが、他人から人生を語られると言うのはむず痒いな……。
「――――なるほどねぇ~確かに最近の転生神は見るに堪えないけど……」
「……でも……そんな人間……たくさん……いるよ……?」
「そ、そんな……オルクス様にそんな事が……私には、私にはその苦しみが分かります!!」
三者三様の反応。
理解を示す者、特別な事ではないと言う者、そして同情する者。
本当に色々な神がいる。馬鹿やアホな神はいるけど、明らかに常軌を逸している神は今の所いない。
……いたっけ?
僕の人生に、神達がこんなに反応を示すなんて思ってもいなかった。
人間なんか……人間如き……所詮人間……神などその程度だと思っていた。もちろんそう言う神もいるのだろう、現にクエイラスはそうだった。
しかし目の前にいる神は、最上位神。さらに天蓋と呼ばれる最強神達。
その者達は、僕が憎んだ神の偶像とは明らかに違う。
破壊も、時も、死も、断罪も、美も、思惑は違えど僕の事を一瞬でも頭に入れ、思考した。
神も、人間の事を考える。
それは、足元を這っている虫に向ける念とは違う。
再び僕は、神と言う存在を別の意味で身近に感じる事となった。
「……あんま理だ……お前達、ワシの事忘れていないか……?」
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