第十四話 花の神の秘策
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花も恥じらう花の神、フローリア。
しかし花は恥じらっている訳ではなく、花の神を嫌っているのだと言う禁句を言ってしまった、神をも恐れぬ破壊神。
正確には、その顔が原因であると……。
「今……何つったゴラァァァァァァ!!!」
お怒り、花の神の表情はまさに怒。元々美しくはなかったが、それでも人の顔……神の顔はしていた。
しかし怒り狂うその表情は、悪魔、鬼。とても花を司る神の表情とは思えない。
『うん? 聞こえなかったのか? その薄気味悪い顔が悪いと――――』
「――――なんでもないでガス!! きっと空耳でゲス!! ……うすっ! 君、悪いが小川るい? って言ったんだ!」
「小川るい……? 誰だそれ!? いいや聞こえたぞ! このアタシの顔が醜いですってェェェェ!?」
醜いとは言っていないと思うが……。ともかく、ヴァルが悪いんだ、僕にその怒りをぶつけられても困る。
憤怒の表情のまま僕に向かって来る花の神、僕はヴァルを前面押し出した。
「てめぇゴラァ!! もう一度言ってみやがれッ!! 花まみれにしてぶっ殺すぞ!!」
花まみれ、なにそのロマンチックな死因。
口に中に花びらを押し込まれるのだろうか? ……雑草よりはマシだね。
『うるさいのぉぉ……お前、誰に口を聞いているのだ? ……破壊まみれにしてやろうか?』
破壊まみれ、どんなまみれ方? 破壊って物理的な物じゃないだろ……何言っているんだ。
「破壊ィィ? ……あぁてめぇ!! 破壊神!! ……この前は世話になったわねぇぇぇぇ!! おかげで新しい自分に目覚めたわよォォォ!!」
……なんとなくそうじゃないかと思っていたけれど、やっぱり犯人はヴァルだったか。
花の神に気持ち悪いと言ったのは、破壊神ヴァルハザード。
一人の神の人生……神生を狂わせてしまったんだ。
『……この前? なんの事だ? こんな気持ち悪い神、忘れるはずがない』
「てめえ!! まだ言うか!? よォォォく見やがれ! ……アタシは女神に生まれ変わったのよォォ!? ……花は蜜、花は美、花は女……あたしゃ花の女神じゃァァァァ!!」
変わってない、どう見ても男神だ。
女神と言うのは隣で白けた顔をしている断罪の神と、後ろで我関せずと僕にずっと目線を向けている美の神のような神の事を言うのだ。
残念ですが、貴方は女神じゃ……いいえ、男神ですらありません。
もっと悍ましい何か……狂神? 変神? 漢神? ……いまいちしっくりこない。ごめん、頑張ったけど思いつかないや。
『分かった分かった……ほんで? 美神とでも言ってほしいのか?』
「言ってほしいわよ!! と言うか美神なんだから、美神って言うのは当たり前じゃろがいっ!!」
デケェ顔でヴァルに詰め寄るフローリア。
自分の事を美神だと思っているようだ、かなり拗らせているな……。
「オルクス様ぁ~あそこの山は御釜って呼ばれているんですよ~、見に行きませんか?」
ウィッチたん、少し空気を読みなさい。僕の周りには雰囲気を読めない奴ばかり集まるな……。
と言うかカマなら今まさに見ているじゃないか……。
「確かにィ! アタシはまだ少しだけ……ほんの少しだけ美しくなり切れていない部分があるわぁぁ!! しかしッッ!! それも今日まで! 今日アタシは完全なる女神となるのよ!!」
美しくなり切れていない部分だらけで、どこの事を言っているのか分からん。
……もうヴァルに任せよう、僕はウィッチたんを見て目の治療しないと。
「ねぇウィッチ、下界には行った事あるの?」
『今日まで……? なにを言う、貴様は明日からもそのキモ顔であろう』
「少しだけありますよ? ……と言っても、人間とは触れ合っていません。近づいただけで魅了してしまいますから……」
「ッチッチッチ……違うんだなぁぁぁ、やっとクロノア様の許可……って誰がキモ顔じゃいっ!!」
「す、凄いね……さすが美の神…………そうだっ!! ウィッチさぁ、この後ひま? ちょっと下界に遊びに行かない?」
『クロノア……? 整形の神か? なら早く工事しろ、突貫工事ではどうにもならん』
「ひ、ひまです!! どこでもついて行きます!! ……ナンパされちゃった……」
「顔面工事などするかァァ!! アタシは花の美神……偽物の美は相応しくないわ……」
………………るさい。
「――――うるさいよっ!!」
『――――うるさいのだ!!』
「――――うるさいわね!!」
「――――うるせェェェ!!」
(ペチャクチャうるさいよ!! 他所でやってくれ!!)
〈他所とはどこだ!? 体は一つしかないのだぞ!?〉
まったく、ウィッチを優越感計画に組み込もうと誘っていたのに。花の神なんてもうどうでもいいよ、景色は堪能したしそそそろ行こうかな。
「――――あははは!! 君達面白いね? 僕も混ぜてよ!!」
…………え?
どこから現れた? 急に花の神の隣に少年が現れた……いや、初めからそこにいたのか? それほどまでに急に現れた。
「………あぁぁぁぁらクロノア様ァ!! いらしてたのねん? お待ちしてましたわぁぁぁぁぁ!!」
花の神にクロノアと呼ばれた少年。
年のころは僕よりも幼いくらいだろうか? 中性的な容姿、ニコニコな笑顔が顔に張り付いているその様子は、本当にただの幼い少年のようにしか見えない。
……が、尋常ならざる気配を纏っている。
その佇まいには一切の無駄が感じられない。そこにあるべくして存在しているような……。
まるで、そこだけ時が止まっているかのようであった。
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