第十三話 花の男女神
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「エルフレイヤちゃぁぁぁん! お久しぶりねぇん」
幻想的な花畑に響く疑惑の声色。女の声のようにも聞こえたし、男の声のようにも聞こえた。
僕はその声の主を確認するべく、振り返る。
そこにいたのは……。
「よぉこそ花吹雪の丘へ!! あらぁぁ? お友達を連れて来てくれたのかしらん?」
で、でけぇぇぇぇ!? 大地の神ほどではないが……それに劣らずの巨体!!
ま、まさか新しい大地の神か!?
「えぇ、弟と絶美神です……ウィッチの事は知っていますよね?」
「ウィッチちゃぁぁぁん? ……えぇぇ!? この可愛い子が!? うっそぉぉ信じらんなぁぁぁい!!」
新たな大地の神がウィッチの方に視線を送る。
それをどこか、うっとおしそうな表情しながら目を逸らすウィッチ。
「アンタなんかに可愛いなんて言われても嬉しくないわよ……」
そう言ってトコトコと僕に近づき、背中に隠れてしまうウィッチ。恥ずかしがり屋さんなんだね……。
「フロリアス、紹介します……こちらが弟の――――」
「――――いやぁぁんねぇもうっ!! 私はフローリア!! その名前は捨てたの!」
デカいのと逆光のせいで顔が見えねぇ……エル姉の知り合いみたいだけど、フローリアって言うのか? 名前を捨てたってなんだ?
「……フローリア、こちらが弟のオルクスです…………オルクス? この神は上位神……花の神のフローリアです」
「よろしくねぇぇぇぇん弟ちゃぁぁぁぁぁんん」
見えた……顔。
見間違いか? 顔は男なのに真っ赤な口紅……化粧をしていなかったか?
再び逆光となってしまった為、見えなくなるフローリアの顔。
しかしこれだけは間違いない。花の神なんだろう? 花の神のイメージは……やはり女神。
そして美しいイメージだ、美の神などと同じく最高峰の美を持っているイメージ。
……申し訳ないが、美しくはなかった……そもそも、体デカすぎ。
「おぉやぁぁぁ? なにやら不穏な気を感じたぞぉぉぉ?」
そう言って僕の顔を覗き込むフローリア。
…………げぇぇぇぇぇ!?!? お、男だ!! 男なのに無理やり化粧して女顔作ってる!!
〈……気持ち悪い、なんだこの強烈な顔の神は……〉
(男!? え、でも喋り方とか、化粧とか……)
[彼……彼女は男神…………ですが心は女神、だそうです……気を付けて下さい? 男と言うと暴れ出して大変な事になりますので……]
な、なんと言う事だ! 神に性別はない……どっちかの性で固定している神はいても、根本的には神は無性……言い方を変えれば男にも女にもなれる。
しかし目の前のこの神は、どっちつかず!? どうしてだ!? 何故化粧で女を作る!? 神の力で女神の肉体を得ればいいじゃないか!?
[……神体は長い時間をかけて変化します、フローリアも以前は……男神でした……]
(そ、それで? 以前もって……今もどう見ても男神じゃん……)
[花の男神フロリアス……ある時、心無い神に言われたそうです。気持ち悪い、花の神が筋骨隆々の男神なんて……破壊するぞ? と……]
なんて酷い事を言う神なんだ……男が花を愛してもいいじゃないか!! そ、それで女神になったと言う事か……。
[いくら神の体とは言え、その姿は簡単に変えられるものではありません。長い時を使い、ゆっくりと望んだ姿に変化させていくしかないのです。しかし、彼は……]
〈彼は……なんだ? すぐにでも女神と呼ばれたかったのか?〉
[……そうです。そもそも男神、女神の明確な定義はありません。神は神……しかし考え方や感情、性格は神によって違う……その違いが神体に反映されるだけ。つまり便宜上使われている男神、女神の違いは神体ではなく……神心、と言う事になります]
う、う~ん難しい……仕方ない、僕がお馬鹿さんの為に簡単に説明してあげる!
心が男なら男神! 女なら女神! その心の方向に体が変化していく! 望んだ神体にする事も可能! しかし時間がかかる!
男神が女神に、女神が男神に変わるのも珍しくないとエル姉は言う。しかしそれには時間がかかると……。
つまり、フローリアは今まさに変化中……ウケる。
しかし彼……彼女はその変化を待てなかった! すぐにでも女神の神体が欲しい!
心は女神と呼ばれるだろう、しかし第三者に心は分からない! やはり手っ取り早いのは……外見なのだ!!
その結果が……これである!!
「うぅぅぅんんお花ちゃんたちィィィ? 今日も素敵よぉぉぉんん」
花が……花の神から逃げてる……。
あれ? 見間違いか? ……あの花たち、生きているのか? 明らかに今、花の神の手から遠ざかったような……。
『花の神が聞いて呆れる……花に嫌われているではないか、その気味の悪い顔のせいじゃないか?』
「ヴァ、ヴァルハザード!!」
ヴァルの発言を止めに入るエル姉だったが、一歩及ばず。話聞いていなかったのか!? なんて事をっ!!
フローリアの様子を見る。
未だその体は花に向いており、その表情を窺う事は出来ない。
エル姉もジッとフローリアの様子を見ていた。何故かウィッチだけは僕を見ていたけど……。
「…………そこのあなたぁぁぁぁ…………今……何つったゴラァァァァァァ!!!」
は~い予想通り、お怒りでぇ~す。
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