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第十二話 天国はあった

お読み頂き、ありがとうございます

「ほぉえぇぇぇぇ……可愛いぃぃ……」



 ウィッチの支度を待つ事数分、着替えを済ませたウィッチが戻って来た。


 和装も綺麗だったけど……うん、こっちの方が今のウィッチには似合うかもね! ミニスカート……もうちょいっもうちょいっ……。



[オルクス? どうして座り込むの? 疲れたのなら……おんぶしようか……?]



 エル姉の冷たい言葉に慌てて立ち上がる。


 別に見ようとしていた訳じゃない……コンタクト落としたんだよ……。



「お、お待たせ致しました……あの、オルクス様? ど、どうですか? この服……」



 不安そうな表情かつ上目遣い……クリティカルヒット!! その攻撃は僕に効く……。



「うん! 似合ってるよ、可愛い!! ……あれ? 化粧はしていないんだね?」



 あれだけの厚化粧だったのだ、少しくらい化粧し直すのかと思った。まぁ、化粧しなくても十分……と言うか僕はこっちのウィッチの方が好きだ。



「あ、はい……オルクス様が……可愛いって言ってくれたから……」



 そう言って恥ずかしそうに俯くウィッチ。


 男心をよく分かってらっしゃる……さすが魅了の神。


 しかしオルクス様ってなんだろう? 様付けなんて一度もされた事ないから戸惑ってしまう。



「じゃ、じゃあ行きましょうか? そんなに遠くありませんから!」



 そう言って僕の腕を取り、自らの腕に絡ませるウィッチ。


 これは腕組みという行為か!? ……あぁ、懐かしき……雑草とタンスの事を思い出す。



「ウィッチ……そんな事をするとオルクスが歩きづらいでしょう? 離れなさい」



 エル姉から非難の声がウィッチにかかるが、ウィッチは聞こえていないのだろうか? 腕を解こうとはしなかった。



「……あの……オルクス様? ……迷惑ですか?」



 ぐぅぅぅぅ……可愛い!! い、いかん、また魅了され始めたようだ……。


 潤んだ瞳……押し付けられる胸……僕に抗える力はない……。



〈絶美神からは神力を感じないぞ? オルが勝手に盛り上がっているだけだ〉


(そ、そんな! でも下半身が…………あれ? なんともない……)



「べ、別に迷惑じゃないけど……そうだ! ウィッチの事を視界に入れて歩きたいから、少し離れてくれないかな?」



 恐ろしい、魔性の女神だ……神の力を使わなくてもこの僕を魅了するとは……。


 ウィッチはそう言う事なら……と呟いたのち、僕から腕を放した。いざ離されると名残惜しいな……。



〈オルほど魅了されやすい人間も珍しいであろうよ……女子(オナゴ)と触れ合った経験が少ないせいで妄想ばかり膨らんだのかの?〉



 確かに、僕は女の子と触れ合った事などない。


 だが考えてみてほしい、後ろを歩いている美しい人は誰だ? 前を歩いている可愛い子は誰だ?


 そうだよ! 絶世の美人と絶世の美女だよ!! その二人に挟まれて歩いてるの……僕だよ?


 あぁ、この光景を勇者達に見せつけたい……悔しがる様子を見ながら酒を飲みたい。



〈お酒は二十歳になってからだぞ!!〉



 目の前の女神に視線を送る。


 身長は僕より少し低いけど、なんで僕より足が長いのだろう? 決して僕は短足ではない。


 そのミニスカートから伸びているスラっとした脚……あぁ、でもニーハイじゃないんだ……エル姉がニーハイを穿いている、チョー似合ってるよ?



「オ、オルクス様? そんなに見つめられると、恥ずかしいです……」



 おっと、少し凝視し過ぎていたみたいだ。彼女は背中に目でもついているのだろうか? よく分かったね。



〈言っていただろう? あの女神は男の気配を敏感に感じ取る、オルの劣情にも気づいて気持ち悪がっているであろう〉


(劣情なんて抱いていない! 失礼な事を言うな!!)



 後ろを見ると……はぁ……美しきお姉様。


 身長は僕より高い、スタイル抜群、胸はウィッチやウィードの方が大きいけれど、そんなものどうでもよくなるほどスタイルがいい。


 そして、そのニーハイ……とてもよくお似合いです。



〈ニーハイフェチか? やめておけ、知っているか? 女の足にいる菌は男と同じ……つまりあの足はほぼ男――――〉


(――――聞こえないっ!! エル姉の足の匂いがオジサンと同じだなんて認めない!!)


[オルクス……聞こえてるよ……流石の私も恥ずかしいのだけれど……]



 なんて馬鹿な事を思いつつ、足を動かすこと一時間ほど……。


 遠くないって言っていたけど、一時間は微妙なラインだよ? 神界なのに……高速移動する方法ないのかい?



「着きました! ここです! 花吹雪の丘!!」



 目の前に広がる広大な花畑。


 花と地面の境界が見えない……これほど大きな花畑なんて、下界にはない。


 小高くなっている丘を目指して、花の間を通って進む。丘に着き、周りを見渡した。


 まさに絶景。


 三百六十度、どこを見ても花だらけ……これだけの花が咲き誇っていると言うのに、不快な匂いは全くしない。


 吹き上がる風……舞い上がる花びら。それを花に囲まれた二人の美神が微笑みながら見上げている。


 絵になる二人、花を手に取り匂いを嗅ぐ姿は妖精のよう……。



(ここは天国だ……やっぱり天国はあったんだね……)


〈そんなもんないぞ? 死んだらすぐ転生して新しい人生が始まるのだ〉



 情緒のない奴……この場所に君は相応しくない。



≪あぁらぁぁぁそこにいるのはエルフレイヤちゃん? お久しぶりねぇん≫



 突如響いた女声……男声……? なぜだろう……心なしか花がざわつき始めた。


 まるで何かに怯えているような花の思念を感じ取りつつ、僕は声がした方に振り返った。


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