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第十一話 女神視点

お読み頂きましてありがとうございます

 その昔、私は神になった。与えられた宿命、司るのは美。


 意味が分からなかった、どうして私が美の神なの?


 別にブスと言う訳ではない、だが……美を司る神と呼ぶほどの容姿があるのかと言えば、そんな物はなかった。



 だから私は努力した。究極の美を、絶世の美を求め死に物狂いで努力した。


 が……周りの神が告げたのは、私をどん底に叩き落す慈悲のない言葉であった。


 ブス、不細工、醜悪……およそ美の神に向ける言葉ではない数多くの罵りの言葉。


 そのほとんどは、私の美に嫉妬した女神達からのものだった。


 男神達も女神達の反感を買わないようにと、私に辛く当たった。女神達ほど直接的ではなかったけど、異性にも避けられた美の神である私の心は壊れていった。



 私は……私を殺した。



 それまで手を出さなかった化粧で顔を塗り固め、服装も変えた。一人称も変えて、キセルにも手を出して色香を纏った。


 そして私は魅了の力を鍛え、ついには最上位神まで駆け上った。


 最上位からの光景は見物だった。


 私を蔑んだ女神達の悔しそうな顔、今でも女神達は私と目を合わせようとしない。


 男神なんてもっと滑稽だった。魅力の力で強制的に従えさせた、ヘコヘコと媚び諂う男ども。


 気分が良かった……少しやり過ぎて降格してしまったけど、別に問題ない。


 そもそも最上位神に魅力の力は効かなかったし、上位神以下を魅了できれば問題なかった。



 私は、私を隠した。私は、私を忘れた。


 私は、わらわを作り上げた。


 もう二度と、昔の私に戻る事はない……二度と昔の私を見せる事はない。


 見せた所で、言われるのは蔑みの言葉だけ。昔の私は、酷い容姿をしている……そう思い込んでいた。



 でもこの人間は、オルクス様は私を見てくれた…………努力を認めてくれた。



 本当は……わらわは私を見て欲しかった、認めて欲しかった。でも多くの神は見てくれなかった、認めてくれなかった。



 私を見てくれて、認めてくれて、私を思い出させてくれたのは……人間だった。




「ひィィィィ!? 魅了される!? ぎ、偽名です! オルクスは偽名で本当はヴァルハザード言いまんねん!!」



 どこか慌てた様子のオルクス様。


 その素振りも愛おしい……ヴァルハザードって破壊神の名前じゃなかったかな?



『おいっ!! 勝手に我の名を使うな! 我はオルでぇ~す!! オルクス・リミットレスでぇぇぇぇす!!』



 オルクス・リミットレス様。


 こんな想い、今まで抱いた事はない。貴方様の物になりたい……そしてまた、可愛いと言ってほしい。



「……はぁ、じゃれ合いはそこまでにして下さい……ウィッチが気を取り戻したのであれば、もうここに用はないでしょう? オルクス? そろそろ行きますよ?」



 え……行ってしまうの? もっとお話ししたいのに……勇気を出さなきゃ、お別れになってしまう!


 ……あれ、おかしいな……なんて言えばいいのか分からない、男を引き留めるなんて事、私には楽勝のはずなのに……。



「そ、そうだね!! 絶美神の美しさも見れたし、ヴァルの言っていた七色滝を見に行こうか!」



 絶美神失格だね……男を魅了するなんて簡単なのに、一番魅了したい方を魅了する方法が分からない……。



『うむ、参ろうか!! ……だが期待するなよ? 七色……ぽい滝だからな?』


「なんだそれ!? パンフレットに偽りありかよ!? 絶対ガッカリ観光地じゃないか!!」



 そ、そうか!! オルクス様は綺麗な景色が見たいのね!? 知ってる! 私、知ってる!!


 よ、よぉぉし!!



「あ、あの!! わ、私綺麗な景色が見れる場所、知ってまひゅッ」



 か、噛んじゃった……。


 止まる時間、流れる微妙な空気、オルクス様の可哀そうな者を見る目が突き刺さる。


 あぁ、でもその目も素敵。



「え、えと……ウィッチ? どこかいい場所知っているの……?」



 あぁ……オルクス様に気を遣わせてしまった……優しい笑顔で私に微笑んでくれている……が、頑張らないとっ!



「はいっ! 七色滝は微妙です! あれはほぼ三色滝……もっといい場所、知っています! 花吹雪の丘って所です!」



 喜んでくれるかな? 下界では滅多に見ない光景だから、珍しいものだとは思うけど……男の人には微妙かな?


 恐る恐るオルクス様の様子を確認する。


 これで拒絶されるようであれば、諦めるしかない…………そんなのいやだよぉぉ……。



「へぇぇいいじゃん!! ヴァルのガッカリ観光地より、そっち行こうよ! 三色とか半分以下になったし!」


『失礼な! 三色でも珍しいであろう!?』


「なら最初から三色滝と言うべきです。七色とハードルを上げて、見たのが三色であればガッカリ度の方が強くなります」



 よ、良かった……拒絶はされなかった!


 と言うか……仲良さそうだなぁ~、私もあの輪に入りたい……オルクス様とお喋りしたい。


 ……いいえ、頑張れ私! まだ少し一緒にいる事が出来るのだから!



「じゃあウィッチ、案内してくれる?」


「は、はいっ! ……あのぉ、少しだけお待ち頂いてもいいですか? その……着替えたくて……」



 私スッピンだし、オルクス様が可愛いと言ってくれたこの顔に粉を付けるつもりはないけれど、流石に和装は似合わないから……。



「……早くして頂けますか? あまり私のっ!! 弟を待たせないでください」



 な、なにコイツ!! わざと私のって言葉を強調した!?


 いいわ……受けて立とうじゃない! 恋愛事で美の神に戦いを挑んだ事を後悔させてやる!!



「うん、待ってるよ? 急がなくていいから……」



 お優しいオルクス様。


 断罪なんかに……ぜっっったい負けないんだから!!


宜しければブクマや評価のほう、お願い致します

頂ければとても嬉しいです

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