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第九話 女の戦い

お読み頂き、ありがとうございます

「人間、名はなんと言うのです?」



 絶美神の美しい声が聞こえた。


 その絶世の美も相まって、とても男が逆らえるようなものではない。


 でも、僕は違う。そんな物には惑わされない、僕は有象無象の男どもとは違うのだ!!



[オルクス? 絶対に名前、教えちゃダメだよ? あの女は色々な所から男を誘惑する、ただのビッチなのだから]


(はいお姉様!! お姉様の指示に従います!!)


〈はぁ……明確な上下関係が築かれてしまったの……〉



「どうしたの? 名前くらい教えて下さい、わらわの名は――――」


「――――黙れヴィッチビチ、私の弟がお前のような尻軽女に教える事はなにもない」



 ヴィッチビチの言葉を遮るお姉様。


 さすがお姉様、凛とした声、気高き最上の神……素敵です。



「…………ヴィッチビチ? ……ふ、ふ、ふ……ふざけるなぁぁ!! わらわの名はウィッチ・ビチよっっ!!」



 今までにないくらいに怒り叫んだヴィッチビチ…………ウィッチ・ビチ? ……え? 素の間違い? それとも改名したの?



(ヴァル、また神の名前間違ったのか?)


〈いや……絶美神に関しては……エルフレイヤでなかったか?〉


[……………………]



 遡る事、六つの話……思い出しました、お姉様が絶美神の名を教えて下さっていました。



「誰がビッチよっっ!?!? わらわはまだ処女…………何を言わせるかァァァァァ!!!」



 な、なんと……美の神が? 最高の美を持ち、男達を手玉にとる女神が……処女?


 まわりの男神も驚愕な表情をしている、秘密事項だったようだ。



「ふふっ……失礼しました、ウィッチ。経験のない貴女がビッチである筈がないですね……よほど魅力がないのでしょうか?」



 うわぁ、エル姉の目……小馬鹿にしている。


 い、いいじゃないか! 経験のない女性も!! 男は結構嬉しいものだと思うけど。


 そもそも神界に性欲はないのだろう? ……わざわざ下界に降りて逢瀬するのかな?



「う、うるさいっ!! わらわを抱くに値しない男しかいなかったのです!! ……そういう貴女はどうなのですか!? 貴女の熱愛報道など聞いた事ありませんが!? さぞ経験が豊富なのでしょうね!?」



 熱愛報道……神界にもそういうのあるんだね……。



「なっ……別に私は関係ないでしょう!? 私は断罪の神、恋だ愛だなどに現を抜かしている貴女とは違うのです!!」


「ほぉ~らやっぱり!! みなさ~ん! 断罪の神は処女ですよぉぉ~!! 男を知らない魅力ない女神でぇ~す!」



≪おぉぉオォォォォォォォォォォォ!!!≫



 男神の歓喜の声が響く。


 気持ちは分からないでもない、目の前の最上の美神達は処女。


 まだ、だれも物でもありません。



「このっっ!! 男を知らないのは貴女もでしょう!? ふざけた事を言うのはのこ口ですか!?」


「ひゃ、ひゃにおするのぉぉぉぉ!! はなしぇなしゃい!!」



 エル姉がウィッチの口に指を入れ、口を左右に引っ張る。


 負けじとウィッチもエル姉の口に指を入れ、その美口を引っ張った。



「ひゃめなしゃい!! わたひはしゃいじょういしんでしゅよ!!」



 これが女の戦いか……。


 見ようによっては微笑ましいが……これ、どうやって止めるの?



「は、はなしぇなさいっっ!! なによっ!! こんなデカい乳して、男でも誘惑するつもり!?」



 ウィッチがエル姉に指を口から引き抜いた。そのままの流れで……なぜかエル姉の胸を揉み始めたウィッチ。



「あっんん……は、離しなさいっ!! 貴女の方が大きいでしょう!? このデカ乳を使って何をするのかしら!?」


「ひゃん……あん……や、やめなさいよぉぉぉ……」



 負けじとエル姉もウィッチの胸を揉み返す。


 なんていう光景、桃源郷だ。



「うオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


≪うオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!≫


『…………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………』



 周りの男神との間に友情が芽生える。


 二人のアイドルに沸き立つファン達。よし……僕は決めたぞ。



(ヴァル!! 破壊だ、今こそ僕は性欲がほしい!)


〈落ち着け……恐怖はどうした? エルフレイヤに殺されても知らんぞ?〉



 ッグム……そうだった。一時の感情で、僕は人生を台無しにしてしまう所だった。


 みんなも気を付けろよ? 一度立ち止まって、よぉぉぉく考えるんだ!!



「大体あなた!! この胸は本物なんでしょうね!? 顔みたいに作り物じゃないのかしら!?」


「こ、これは正真正銘わらわの胸よ!! なんなら脱いで見せようか!? 自分の胸との差に絶望しないといいけどね!!」



「脱~げ! 脱~げ! 脱~げ! 脱~げ!」


≪脱~げ! 脱~げ! 脱~げ! 脱~げ!≫


『…………………………はぁ』



 ヒートアップする女神達。


 胸の後は尻、足へとターゲットを移し、その美し過ぎる体を罵り合った。



 本当に性欲って大事だったんだね……この様子を録画して、後でじっくり見たいくらいだ。



「ふ、ふざけんじゃっ!! なによ厚化粧!! その化けの皮を剥いでやるわ!!」



 そしてついに美顔へと伸び始めた罵り合い。


 エル姉の指がウィッチの厚化粧を剥がそうと襲い掛かる。



「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!! か、顔だけは!! 顔だけはやめてっ!!!」



 その言葉では止まる様子は見えないエル姉、徐々にひび割れていく化粧。


 エ、エル姉? ウィッチの様子が……尋常じゃない気がするけど……。



「や、やめて!? 本当に顔はやめてっ!! ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ見ないでェェェェェェェェ!!!」



 ついに剥がれ落ちた化粧……一瞬見えた素顔。


 しかし両手で顔を隠し蹲る姿のウィッチを見て、僕達は驚愕するのであった。


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