第二十三話 女神の顔も三度まで
お読み頂き、ありがとうございます
『ところでオル、ここはどこだ?』
「知らないよ、見た事ない所だ」
「ここはジャストンの西、約二十キロ地点。もっと西に行けば港町があるよ」
いつもの掛け合い……とは違う。
ヴァルとは違い、優秀で綺麗でスタイルのいい最上位神のエルフレイヤがいるんだ! ほんと、頼りになるなぁ~。
『余計な事を……我らはこの掛け合いを楽しんでいたと言うのに……のう、オル?』
「……えっ? ……うん、そうだね……」
苦笑いしか出来ん……。
ヴァル、楽しんでたんだ……でもさぁ~この掛け合いするとお腹が……。
「オルクス、はいっ! お弁当! 街を出る前に作っておいたよ」
エル姉から差し出されるランチボックス……この女……出来るっ!! 今の所、僕の中でお嫁さんにしたい神、ナンバーワンだ。
……あ、姉弟は結婚出来ないのか……。
「オ、オルクス!? どうしたの? 悲しそうな顔して……迷惑だった?」
「そ、そんな事ないよ!! ただ……姉さんと結婚する男は幸せだろうなぁ~って思っていたら……悲しくなっちゃって……」
〈こんな二重人格女と結婚? 大丈夫かオル? 頭が壊れているぞ?〉
「――キュンキュンッ――だ、大丈夫!! お姉ちゃん結婚しないから! オルクスの傍にずっといるから!!」
……え? ババアになっても? それはちょっと……。
〈はぁ……断罪神の肩を持つつもりはないが神は老けん、老衰で死ぬ事はない〉
(マ、マジで!? じゃあエル姉はずっと美しいままなの!? ……素晴らしい!)
[オルクスも老けないよ? 死んでるし……だからずっと一緒!!]
お弁当を食べたのち、僕達三人は歩き続けた。
エル姉が言うには、高速で移動する方法もあるようだけど……別にいい。
時間なんてアホみたいにあるんだ! ゆっくりと、この世界を楽しみたい。
〈オル……見渡す限り森ばかりで飽きたぞ? ……楽しくない〉
(うむぅ、実は僕も少し……今度から馬車とか使おうか…………あ、魔者だ。エル姉、お願い)
[はいは~い]
「生命ノ断罪!」
エル姉が手をかざすと……あれま、クビチョンパ。生きている事が罪、命ある事が罪……それは少し酷くないかい?
しかし、ちょっとグロいな……今度から僕がやろう。
「オルクス? 大丈夫? 疲れていない? おんぶしてあげようか?」
「い、いいよ! 自分で歩ける、子ども扱いしないでよ!」
「うふふ……大人ぶっちゃって、可愛いんだから」
そう言って頭を撫でるエル姉。弟扱いと言うよりも子供扱い……嫌じゃないけど、少し恥ずかしい。
『離れろ……おい、それより魔者だ、始末してこい』
「あなたに命令される謂れはありません、自分で行きなさ――――」
「――――エル姉、お願い」
「うん! 行って来るね!」
軽い感じで魔者を狩りに行ったエル姉。
豹変ぶりが凄い。しかし魔者……このメンバーなら最早、恐怖の対象ではないな……。
〈ほっほっほ、これは面白い! オル、我にもやらせて?〉
(やらせるって……何を?)
〈いいから! 少しだけ黙って見ててくれ〉
僕はヴァルに支配権を渡した。
そして魔者を狩り終えたエル姉が戻って来る、傷どころか汚れ一つない。やっぱり最上位神は格が違うんだね。
「オルクス~終わったよ~」
『ありがとうお姉ちゃん!! ……あ~僕喉が渇いちゃったな~』
ハッとした表情のエル姉が、何処からともなく水筒を取り出した。一瞬、なにもない所から現れたように見えたが……神の力の一種だろうか?
「はいっ! どうぞ! 冷たいから気を付けてね」
『ありがとう……ゴクゴク…………あ~肩が凝っちゃったな……』
「揉もうか? 前やってもらったし、お返しだよ?」
エル姉の細い指が僕の肩を揉んでくれる。
丁度いい力加減……ヴァルの奴、そういう事か……バレた時は知らないぞ?
『あ~ありがとう! 気持ちよかった! じゃあ今度は僕が揉んであげる!』
「え、本当? ありがとう、じゃあ――――」
『――――胸をね』
エル姉の肩がピクリと動いた。
エル姉の背後にいるため表情は見えないが……バレただろ、流石に……。
「…………も~オルクス? そういうのに興味あるの? オルクスがどうしてもって言うなら……お姉ちゃん頑張るけど……」
それは姉弟の関係を越えています!! 近親相姦ダメ!! 絶対っ!!
……待てよ? 血は繋がっていない……おやおや、これは参りましたなぁ。
『うん! こっち向いて、お姉ちゃん!』
ゆっくりとエル姉が振り返る。
相変わらず美しい……神の如き笑顔、こめかみには青筋、上品に口元を緩めるその姿は、女神の中の女神……美の神も裸足で逃げ出すのであろう。
……ん? 青筋……?
『フハハハ、では、頂きまァッホバァァァァァァァァァ!!!』
吹き飛ばされる僕の体……エル姉に殴られた!? 痛覚は遮断しているから痛みはないけど、ヴァルはかなり痛かったはず……。
「……ヴァルハザード、ふざけるなよ? 少し感覚を集中させれば、オルクスなのか貴様なのかの判断くらい出来る。……誰が貴様などに体を許すかっ!!」
ひィィィィィィ!?!? こ、こえぇぇぇぇぇ!!
僕は怒られていないのに、僕を見て怒ってる! ヴァ、ヴァル! 早く、早く破壊の力を纏って!! 殺気に殺されるぅぅぅぅぅ!!
「……オルクスの体だ、一撃で勘弁してやる…………オルクス? ど、どうしてもお姉ちゃんの体を触りたい時は言いなさい? 少しくらいなら……ね?」
「は、はいィィィィ!! その時はお伝え致しますぅぅぅ!!」
鬼神の如き表情は一変、向けられた笑顔は恋人に向けるような温かい表情。
彼女を怒らせてはいけない……この後ヴァルと緊急会議を開き、触らぬ神に祟りなしという事で合意した。
宜しければブクマや評価のほう、お願い致します!
次話で二章完です




