第十話 金はある
そうだった!! 金がないんだったよ! このままだとまた無銭飲食になってしまう!?
すっかり忘れていたけど、金を稼ぐのが目的だった! インパクトある神達のせいで忘れていたよ!!
「ひぃぃぃぃ!? は、破壊神様……? どこかお体でも………」
二度も盛大に叫んでしまった為、二人とも恐怖で顔を引きつらせている。ごめんよ、怖がらせてしまったね……。
周りもザワザワしだし、こちらを怪訝な様子で観察しているようだ。
「お、お客様!? どうかなさいましたか!? 責任者のマネー・ジャーです! あの、大丈夫でございますか?」
『ひぃぃぃぃぃぃ!? 責任者!? …………チェェェェンジ!!!』
こいつっ!! また強制的に支配権を渡してきやがった!
よっぽど責任者にトラウマでもあるのか、呼びかけてもうんともすんとも言わない。くそ……あの時の嫌な思い出が蘇る……。
「……い、いえ、お騒がせして申し訳ございません。実は一日に数回叫んでしまう難病に侵されているものでして……」
「……そうなのですか……? わ、分かりました、しかし他のお客様のご迷惑ですので、お控え頂けると……」
「だ、大丈夫ですっ!! 本日は終了しました! もう叫びません!」
そう言うと責任者は店の奥に戻っていき、周りの客も可哀そうな物を見るような目で僕を見た後、自分達の食事に戻っていった。
どうしよう…………高価な物は食べてないから、そこまで支払いは高くないだろうが……安くても高くても関係ない…………所持金ゼロなのだから。
「あ、あのぉ~本当に大丈夫ですかぁ? 破壊神様がそんな難病に侵されていたなんて……知りませんでした……」
「具合は大丈夫ですか? 一度神界に戻られて、治癒神様などに見てもらったら如何ですか?」
安心してくれ、仮病だ。
もし本当にそんな難病があるなら、その治癒神と言えども治すのは難しいだろう。
「……大丈夫だよ? すぐに治るから…………あ、迷惑がかかるから君達は早くここを…………」
そうだ、閃いた。僕は天才だ。
「…………ところで君達、なにか僕達にお願いがあると言っていたね?」
「え? あ、はい……その……最上位神様にお願いするのもあれなんですが……」
「何でも言ってご覧なさい? 我は最上位神、下位神のお願いは断れませぬ」
ふふふ…………そうだよ、女神達に払ってもらえばいいんだ!
前回とは違い、今回は連れがいるんだ! そう! 無銭ではない、目の前に財布が二つもあるではないか!
〈最低だの……女を財布扱いとは……〉
(黙っていろ臆病神、ここは僕に任せるんだ)
「ほ、本当ですか!? ……あの、実は……私達を鍛えてほしいのっ!!」
「お願いします! 神力をもっと上げたいのですぅ!」
……鍛える? 神力を上げる? ちょっと予想外だな……てっきり、サイン下さい! とかだと思っていた。
「最上位神である破壊神様の傍で修業すれば、私達の神力は上がります!」
「はい! 神格は上がらなくても、神力を上げればもっと世界の役に立てますぅ!」
タンスの神と雑草の神が世界の役に立つとは思えないが……。
しかし彼女達は本気のようだ、意志の強そうな目でこちらの反応を待っている。
(……ヴァル、どうなんだ? 彼女達が言っている事って……)
〈確かに最上位神の傍にいれば、下位神と上位神の神力は上がる。……神格と言うのは下位、上位と言った事だ。これは神力が上がろうが変わらない〉
と言う事は別に特別な稽古をつける必要とかはない訳か……。
彼女達は期待に胸を……その大きな胸を膨らませ僕の反応を待っている。
でもなぁ……行動を共にすると言う事は弊害も出てくるよなぁ……。
「お願いしますっ!! 私は神力を上げて、足の指を骨折……いいえ! 吹き飛ばす事が出来るほどになりたいの!!」
「わ、私もですぅ!! 色々な雑草を……大きく大きく成長させられるほどの神力がほしいのですぅ!!」
はた迷惑な願いだ。
ウィードはまだしも、タンちゃん……指を吹き飛ばすって、それは最早警告ではなく神罰ではないか?
〈断るのだオル! 女連れの旅は色々面倒だぞ? いくら美神でも、自由は減るぞ? 我がビシッと言ってやろうか?〉
(……分かっている、でも…………金がないんだ!! せめてこの店の支払いをさせるまでは、彼女達を逃がす訳にはいかない!)
〈……で、あるな……仕方あるまい、面倒になったら破壊しよう〉
こちらも恐ろしい打ち合わせを行い、彼女達に向き合う。
彼女達も、不安そうな表情でこちらを見つめていた。
≪おい、さっきからあいつら何言ってんだ? 神とか神力とか……≫
≪ほっとけ……いきなり叫ぶキチガイなんだ、関わらねぇほうがいい≫
まずい……ここが飲食店だと言う事を忘れていた。思いっきり神会話をしていたが、大丈夫なのか? まぁ、僕には関係ないか。
「君達の願いは聞き入れよう…………ただし条件がある」
その言葉に顔に花を咲かせる女神達。
美しい……こんな顔を向けられた経験はない、まさに人生絶頂期だ。
「条件……ですか? ……エッチな事以外なら……」
「ぇ、エッチはダメですぅぅ!!」
僕達の事をなんだと思っているんだ? まったく、失礼な神達だ。
〈己の行動を思い返せ、彼女達の反応は必然であろう……〉
「そんな事は…………しないとは言い切れないがしない! 条件と言うのは、僕達の命令には基本従ってもらうという事、もちろん君達の人権……神権は保証する、無理難題を言う事はしない」
彼女達は黙って聞いている。まぁ、これはいいんだよ、どうでも。本当に最悪の最悪、破壊の力をチラつかせれば彼女達は言う事を聞くだろう。
本題はここからだ…………しくじりは許されない……。
「そして……これが最も重要だ……これが聞けないと言うのであれば、この話はなしだ」
彼女達の顔が強張る。唾を飲み込み、告げられる言葉に備える。
何を言われるのだろう……最上位神の考える事など、下位神の自分達に考え付く事など出来ない。
徐々に体が震えて来る、それを強き意思で抑え込む。
自分達は、絶対に成長するのだと…………。
「奢って下さい」
僕はテーブルに頭を擦りつけ、下位神達に懇願した。
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