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第七話 タンスの神

 ヴァルに諭され、落ち着きを取り戻した僕。


 落ち着いていたと思っていたんだけど、かなり舞い上がっていたようだ。


 以前ヴァルの事を性欲魔人と言ったけど、僕の方が魔人かもしれない。



〈そもそも我には性欲はない、遊んでいるだけだぞ? まぁ下界に降りると下界のルールが適用される為、性欲や食欲なども出てくると言えば出てくるが、オルほどではない〉


(神界では欲がないの? それはつまらなそうだね)


〈……人間はその欲のせいで失敗してきたではないか、人間らしいと言えば人間らしいが……〉



 …………そうかもしれないね。


 さて、とりあえずどうしようか?


 ウィードはタンちゃんに寄り添って慰めているようだが、彼女の羞恥が消える事はしばらくないな……。


 どんな理由があれ僕達のせいなんだ、このままここを立ち去るのも後味が悪いよね。



「……タンちゃん、あの……よければ僕がなんとかしようか……?」


「えっ…………なんとかと言うのは……」



 まだ僕に対する恐怖、もしくは畏敬が邪魔をするのか、最初の頃の勢いが全くない。


 あの元気な彼女に戻ってほしいな……。



〈いや漏らしたからだろう? 漏らしたのに元気ハツラツだったら引くわ……〉



「うん、ゴメンね? 僕のせいで…………その、気持ち悪いでしょう? 僕が綺麗にしてあげるよ?」



〈オル、やろうとしている事は我には伝わったが……その言い方は気持ち悪いかもしれん……〉



「き、綺麗に……ですか? ……い、いいえ! 破壊神様にそんな事させられません!」



 お? 少し元気が出てきたかな? しかし是非手伝わせてほしい、綺麗にしてあげるから! グヒヒ……。


 彼女の表情を見るに、気持ち悪がってはいなさそうに見えるが……考えるんだ、失敗したらまた彼女の記憶を破壊しなければならなくなる。



「大丈夫だよ! 女の子に恥をかかせてしまったんだ、贖罪をさせてほしい……」


「で、でも……恥ずかしいぃ…………替えの下着もありますし、そこの川で水浴びすれば綺麗になりますから……」



 このきったねぇ川で? さっき潜ったから分かるけど……ヤベぇよこの川?



「……う~ん、さっき水質調査したんだけど……この川は死んでる……おすすめ出来ないな」


「で、でもでも! 付き合ってもいない神に下着見られたり、アソコ拭かれたりするのは……」



 真っ赤になって俯いてしまうタンちゃん。付き合うとか、神界にもあるのか……?


 流石に僕もそこまでしようとは思ってなかったんだけど……でもこの感じ、押せば行ける気がする。



〈やめておけ童貞。この神は性別を固定化して存在しておる、つまりは完全なる女神。経験のない童貞には無理であろう〉



 ヴァルの言葉にイラっとさせられたが、正論だな。これ以上拗らせたくない、ここは当初の予定通り行こうか。



「そんな事しないよ? 僕は見ないし、触りもしない……破壊の力で、汚れた部分だけを消滅させるだけだよ?」


「しょ、消滅!? な、なんかそれは怖いよ! まだ拭いてもらった方がいいっ!!」


「え? マジで? じゃあそれで――――なんてなぁぁ! 汚物破壊!」



 人差し指で彼女の股間付近をビシッと指差し、破壊の力と対象の汚れを認識し、神力を放出する。


 拭いてやろうかとも思ったが、お腹が空いた。もう立ち去りたい。



「いやァァァァァァァァァァァァァああぁぁぁぁぁぁぁ……ぁぁ…………あん?」


「うん?」



 素っ頓狂な顔をするタンちゃん。……スッキリしただろう?



「…………あの……何も変わっていないのですが……」



 お、おかしいな……破壊の力はちゃんと作用したはず!


 な、何故だ!? 破壊神の神力がタンちゃんの神力に掻き消された? いいやあり得ない! ちゃんと対象の汚物に効果を……………………汚物?


 ま、まさか!? ……汚物じゃない!? そ、そうか! やっぱり可愛い子のは汚くないんだ!! 世界が認めたんだ!!



〈……それを認めたのはオルだけだ、汚物ではないと。オルの認識がずれていれば、部分破壊はともかく認識破壊は出来ん。……代われ、我がやってやる〉



 ヴァルに支配権を渡し、汚物破壊を行ってもらった。


 すると先ほどとは違い、見事に効果を発揮した破壊の力。彼女の粗相の汚れは消え去った。


 同時にタンちゃんも元気を取り戻したのか、立ち上がりウィードと笑い合うまでになっていた。



『おいタンちゃん、お前は何の神だ?』



 ヴァルの言葉にウィードと抱き合うのをやめ、こちらに体を向けるタンちゃん。


 そう言えば名前も知らないな……タンジロウ? とかかな?



「あっ申し遅れました!! 私はタンスの神、名前はクローゼットです!」



 ……やっぱりね。あの足指の痛み、タンスの角にぶつけた時の痛みだったし。


 でもタンスって人間が作り出した物じゃないのか? ほんと色々な神がいるんだね……。


 タンス神だからタンちゃん? クロちゃんじゃダメなの……?



『……タンスの神? ……なんの役に立つのだ? それは』



 またかよ……別にいいじゃないか、物には神が宿るって言うだろ? あれ、魂だったっけ?



「タンスは色々あるんですよ? 神が創りし神具……その可能性は無限大です!」



 いや、タンスの可能性なんて物をしまう事しなかいだろう? 神具って……そんな凄い物とは思えないけど……。



「タンスの角に足をぶつけるでしょう? あれは神力が働いているからです! 注意不足な者達に、私が警告を与えているの!!」



 そ、そうだったのか!? 確かに注意不足……しかし他の方法で警告してほしい。その警告がすでに危険になっていたら意味がないじゃないか……。



『……なるほど、人間に対する神の思いやりか……立派な神だ、これからも精進するように!』


「はいっっ!!」



 素晴らしく美しい笑顔で返事をするタンちゃん。


 可愛いけど言っている事は無茶苦茶だ。隣にいるウィードも、ヴァルもみんな笑顔でいる。


 僕がおかしいのだろうか? 雑草といい、タンスといい、バカい神といい……。



 もしかすると神達って…………。


お読み頂き、ありがとうございます


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