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第五話 ミカン

「アンタ!! 私の友達に何してくれてんのよ!? この変態っ!!」



 走り寄ってくるなり、いきなり変態呼ばわりとは。


 恐らくウィードが下着姿になっている光景を見たんだろうが、今はちゃんと着ている。ウィードもフォローしようと友達に駆け寄るが、聞き耳を持たないようだ。



「アンタね!? 人間の分際でウィードの服を剥ぎ取るなんてっ! いい度胸しているじゃない!?」



 人間の分際……まるで自分が人間ではないと言うような発言だね。



〈ほほぉ~ペチャパイじゃ! ミカンじゃ!! 我、こっちの女の方が好みである〉


(お前さぁ……女なんか興味ないみたいな態度でいたくせに、今は完全にエロ神じゃん……)



 元々少ない威厳が地まで落ちたな、最上位神が聞いて呆れるよ。



「大丈夫ウィード!? っもう! どうして言いなりになったの!? 嫌だったら体から雑草を生やして殺せばいいじゃない!」



 恐ろしい事を言い始めたミカン。


 雑草を生やして殺す? ウィードは人間にも雑草を生やす事が出来るのか!? 一気にこの大人しい神が恐ろしくなってきた、雑草にまみれて死ぬなんて死んでもゴメンだ。



「ち、違うのタンちゃん! あ、あのね、私から脱いだの……」


「なっ!? なによそれ!? 何か弱みでも握られたの!? こいつ……許せないっ!」



 そう言うとタンちゃんと呼ばれた神は僕達を鋭い目で睨む。


 ウィードに負けず劣らずの美人。ウィードとは違い、やや攻撃的な性格のようだ。


 容姿は、切れ長の目に茶髪……うん、美人だ! それだけで十分だろ? 想像してくれ、自分が思い描く美人……それが正解だよ。


 まぁよくある組み合わせだね! 二人いたら大抵は対極の性格をしている事が多い。


 胸も…………対極に位置するしね。



「許せない……身の程を弁えなさい! 人間っ!! タンスにゴンッ!!」



 はぁ? タンス? ごん? 意味不明な言葉を発したと思ったら、急に足の小指に激痛が走った。



「いっっっっっ…………かぁぁぁぁ……いてぇぇぇぇ……」



 思わず蹲ってしまった……この痛み、絶対血が出てるやつだ…………あ、血は出ないんだっけか。


 しかしどこかで感じた事のある痛みだ、もう痛みは消えてきたが……。



「タ、タンちゃん!? ダ、ダメだよ!? そんな事したら破壊されちゃうよぉ!?」


「はぁ? 破戒? 私は無宗教よ?」



〈オル……大丈夫か? そ、そんなに痛かったのか?〉


(あぁ、痛かった……痛みを共有しようか? 君にも、この親しみある痛みを感じさせてあげたい……)


〈け、結構だ。痛みの感覚だけは遮断しておる、今後も一切痛みを共有する事はしない!〉



 そりゃぁ、わざわざ痛みを共有する意味はないけどさ。


 なんて言うのかな……負の感情、感覚は一人で味わいたくない。共有してくれる人がいるだけで精神的にも大分違うと思うんだ。



〈嫌だ〉



 薄情な破壊神だ。ヴァルをほっといてウィード達に目を向け、会話を聞く。


 タンちゃんの怒りは治まっていないようだ。ったく……本人がいいと言っているのに、しゃしゃり出るのはいつも周りだ。



「待っていなさいウィード、私がこの人間に罰を与えるから。そうしたら神界に帰りましょう? お土産もあるの!」


「タ、タンちゃん!! だから、この方はっ――――」


「――――タンスにゴンッ!!」



 っげ!? またあの痛みを味あわなきゃないのか!? 冗談じゃない! ヴァルは引きこもっているし、仕方ない。


 僕は破壊の力を体に纏わせた、これで一切の外的要因が僕に届く事はない。この女が放った神力も僕の纏った神力に触れた瞬間、一切の抵抗を見せる事なく消え失せた。



「は…………はァァァァァァァァァァ!!?? えぇぇ!? 嘘…………この神力……嘘でしょう……?」



 自身の神力がアッサリとかき消された事に驚きの表情のタンちゃん。


 ウィードに視線を送り真意を問うが、ウィードの首が高速で上下に振られている様子を見て確信する。


 こいつは……いいやこの御方は最上位神である破壊の神、ヴァルハザード様であると。



〈ウヒョヒョヒョヒョ! 面白そうな展開である! オル、代わってくれ〉


(お断りだ、あの痛みを共有してくれなかった奴は友ではない……消え失せろ)


〈き、消え失せろって……悪かった、謝罪する! 機嫌を直してくれ〉



 未だ驚愕の表情でいるタンちゃんに近づく。一歩進むたびに驚愕な表情が恐怖の表情に変わっていく。


 ついには腰を抜かし、可愛らしい女の子座りをして今にも泣きそうな表情で僕を見上げる。


 そんなに破壊神……最上位神が怖いのか? 僕には女の子を虐めて喜ぶ趣向はないんだけどな…………ヴァルは好きそうだ。



「なぁ、君――――」


「――――ひぅっ! ……あっ…………」



 なるべく優しく声を掛けたつもりだったけど、驚かせてしまったようだ。


 体をビクッと震わせた瞬間…………あらら……。



「ご、ごめんなさいぃぃぃごめんなさいぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇん……」



 漏らしてしまったようだ……。


 地面に広がっていく黒いシミ、女の子座りで目に手を当てながら涙を零す女の子、その短いスカートの先にある花園から、美しき液た――――



〈――――げぇぇ!? バッチィィ! 漏らしおったぞこの神!〉


(…………君と僕はとことん合わないようだね? ガッカリだよ……)


〈いや……オル? 自分がどのくらい変態な事を言っているか分かっているか?〉



 同志じゃない奴が何か言っているが無視だ。僕の趣向を理解してくれる人はいるはず。


 しかしここは紳士的にいかないと、僕も漏らした事があるから分かるのだ、漏らした時の感情を。


 ここで対応を誤れば、この美神とのフラグは完全に消滅する、それほどのイベントだ。


 まぁ、別に消滅してもいいんだけど。


 僕はゆっくりと、泣いて蹲っている女の子に声を掛けた。


お読み頂き、ありがとうございます


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