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第四話 修行の成果

 ぎこちない笑顔で、僕の勝利を告げた戦好き。


 情けという事だろうか? 戦好きの体に傷は見られない。僕はほぼ戦闘不能だ、武器を失い片腕も失った。


 まだ勝負が続いているのであれば、ここで斬られて完全に終わり、僕の勝ちと言うのはおかしい。



「いや……僕の負けだよ。僕にはもう武器もな――――」


「――――何を言う、ここを見ろ」



 自分の頬を指さす戦好き。そこにはわずかだが小さな切り傷がついていた。


 本当に薄い、一筋の赤い線。しかしそれは一瞬で消えてしまった、神体だから修復されたのか。



「オルクスの攻撃は確かに届いた。まぁオルクスの攻撃と言うより……オルクスの腕の攻撃ダが」


「ぼ、僕の腕の攻撃? 言ってる意味が分からないんだけど……」


「簡単な事ダ。切り飛ばしたオルクスの腕が、俺の頬を抉った。傷は傷だ、オルクスは片腕でも戦闘続行可能……つまり俺の負けと言う訳だ」



 いいのだろうか、そんな事で。


 でもこれ以上どうする事も出来ないしな。運も実力の内、運よく吹き飛んだ腕が戦好きに傷を与えた……想像すると笑いそうになるが。



「……ふふふ、僕の意思じゃなくても傷は傷。僕の腕が、戦好きに傷を与えた」


「そういう事ダ。傷は傷、異を唱えるつもりはない。お主の勝利ダ、誇るがよい」



 ある一種の満足感に包み込まれる。


 ここまで明確に勝利を感じられたのは生まれて初めてであった。破壊神の力を使ってではあるけれども、一人で考えて、行動して、認めてもらった。


 不幸だ不幸だと言いながら、そこから脱却するために僕が何をしてきたのか? 色々と努力はしてきたつもりだけど、心のどこかで自分で自分に見切りをつけていた。


 どうせ頑張っても、どうせ努力しても、どうせ生きていても……。


 頑張って良かった、努力して良かった。生きていて本当に良かった。



「いよぉっっっしゃーーーー!! 勝ったんだ! 試験突破! 僕は達人級の武術を身につけたんだ! 戦闘の神の試験を突破したのだもの!」


「……ん? いや、それは――――」



 ――――その時、見物客達が一斉に僕の周りを取り囲み、口々に賛辞を告げていった。


 こんなに賞賛されたり、中心人物になった経験などないから戸惑ってしまうが、いい気分だ。これが人気者というものか。



「おめでとうオルクス! カッコよかったよ!!」


「おめでとうございますオルクス様! 素敵でした!!」


「お疲れ様~、腕は損傷前に戻してあげるね!!」


「……さすが……お兄ちゃん……」


「お兄さん凄ぉぉぉぉい!!」


「ふむ、目にも止まらぬ速さ……うん? いや、目には止まっていたような……」



 まさに人生絶好調! 美しい女性達からの言葉、可愛らしい妹達からの言葉が心に響く。女性の声援は男性の原動力だからね! 辛い修行にも耐えられたし、本当にありがとう!!


 あ、クロノアは腕治してくれてあんがと。あとコトワリィは……何を頭を捻っているのだろう?


 これも全てヴァルのお陰! 第二の人生、謳歌させてもらっています!



(……んで? いつまで寝てんだよ? おい……おいってば!! いい加減起きなさいよ!! 僕の成長を称えてくれよ!!)


〈――――ぁふわぁぁぁぁぁぁ…………んが? 終わったんけ? 必殺技の一つでも身につけたか?〉


(どんだけ寝るんだよ! 修行の時も一切出てこないで完全シャットアウト! ヴァルも少し勉強した方が良かったんじゃない?)


〈必要ない、邪魔なものは壊すだけ……ふうぁぁぁ……ねむ……〉



 脳内で欠伸をするという器用な事をするヴァル。


 時の神殿は時間が緩やかだったから正確な時間は分からないけど、かなりの日数を費やしたはず。その間ヴァルはすっと寝ていたのだ。


 たまに不安になって声を掛けると鼾のような寝言が聞こえるから、いてくれているのは分かってたんだけどね。



『……なんだこのギャラリーの数は? まぁいいか……それでは必殺技とやらを見せてもらおうか?』


「…………必殺技? え……っと、完全破壊とか?」


『それは破壊の力だろ。ここで修業して成長したんだろう? その成果を見せてと言ったのだ』



 なんだそんな事か。よかろう、修行の成果を見せてやる! っと言いたいところだが、あいにく必殺技なんて習っていない、技術だけを向上させた感じだからね。



「必殺技は習得できず……しかし武具の扱いをマスターしました! 剣神、槍神、斧神なんでも来いや!」


「あいや、だからお前の腕は――――」


『――――ふむ、では……おいそこのオッサン、相手になってやれ』


「オッサン言うな!! 相手と言っても……ワシは久しく武具など扱っていないのだが……」



 なにやらグチグチ言いながらも、僕の前に立ち剣を構えるコトワリィ。


 ふはは、なんだその構えは? 隙だらけ、まるで素人だ。ここを狙って下さいと言っているようなものではないか!



「え……本当にやるの? あの、オルクス? 言い難いんだが……その……」


「見ててください師匠!! 僕の修行の成果を!!」



 師匠が不安そうな見ている。安心してください、殺しはしません。しかし無様な姿は見せられん! 悪いがコトワリィ、一瞬で決めさせてもらうぞ?



「では行くぞコトワリィ!! ドォリャァァァァ!!!」


「ちょちょちょ! 待つのだッ! 剣など振るった事など……ウォォォッ!?」



 素人めッ!! 慌てておる慌てておる! 隙だらけだぞ!? ……む? うまく防いだようだ。ではここではどうだ!?



 ――――数十分後。



「ぜぇ……ぜぇ……な、中々やるなコトワリィ……」


「ふぅ……ふぅ……お主も、中々や理おるな……」



 なんだコイツ? 隙だらけなのに攻撃が届かない!? ……ははァん? コイツ、理の力を使っていやがるな? 卑怯者め!! では僕も破壊を――――



「――――やめやめぇぇい!! あ、あの~オルクス君? そのね……言い難いんだけど、君の武術のレベルは……まだ素人に毛が生えたレベルなのダ……」


「…………はぁ?」



 急に戦好きが割り込んできたと思ったら、意味分からない事を言う。素人に毛が生えたレベルが今の僕? どういう事?


 修行は一日二十時間、それを数か月も繰り返したのに? …………嘘でしょう?


お読み頂き、ありがとうございます


宜しければブクマや評価のほう、お願い致します


連休は2話づつ投稿します

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