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第三話 勝利の行方

「これは試験だが、本来の戦場に禁止事項などはない!! 卑怯な敵もいれば狡猾な敵もいる! いかなる時も戦場では気を抜くでない!!」


「はいはい分かりましたよ! 戦好きの卑怯な攻撃にはビックリしたよ! この卑怯の神が! 戦闘の神が聞いて呆れるよ!」


「下らん挑発ダ!! そのような事で心を乱す俺ではないぞ!! …………マジムカつくなコイツ……」



 乱れているように感じるが……若干顔が険しくなったし、そのままこちらに向かって走り出した。怒ってるだろこれ。



「あえてその挑発に乗ってやる!! 受けてみよ!!」



 斧を扱う単細胞の扱いは容易い。奴らは脳も斧で出来ているからね。【個人の見解です】


 この攻撃を待っていた! 上段から振り下ろす会心の一撃……これを避けてッ! 次は横なぎが来る!! ……ッ!?!? さっきより、早い!?



「一度見切られた攻撃を、考えもなしに再び放つのは素人!! 樵となんら変わらん!!」


「ック! なんとか……そしてこの隙にッ!!」



 先ほどと同じ攻撃だがワンテンポ早くなった斬撃に対応できず、腹の皮が切り裂かれる。痛みはあるがその程度だ、問題はない。


 そして、このワザとバランスを崩し隙を見せる攻撃、誘いの隙にこちらもワザと乗り、戦好きの想像を超えてやる!!



「そこだッッ!!」


「愚かなり!! 俺に隙などないのダ!!」



 顔面に走る衝撃と痛み、一瞬暗転する視界。


 一瞬で意識が刈り取られそうになったのを、気合で持ち直す。ワザと隙を見せていた事は分かっていた、それを逆手に取るつもりが……予想外の攻撃だった。



「くぅぅぅぅぅ……蹴り、ですか……」


「誰が斧だけで攻撃すると言った? 誰が蹴らんと言った? お前が勝手にそう思い込んでいたために反応出来なかっただけダ、そこまで鋭い蹴りではなかったはずダ」



 思ってもみなかった。度肝を抜かれたのも、想像を越えられたのも僕の方。


 斧だけに注視していた結果がこれだ。気を失わなかったとは言っても、衝撃で体は仰け反り隙だらけ、戦場ならば死んでいた。



「策が尽きたか? まぁ策と呼べるほどのものではなかったようダが」


「戦好き……もう隙を狙ったり面倒な事は止めだ!! 一撃勝負!! この一撃で決める、受けて立て!!」


「折れぬ心、それは良し!! しかしなぜ俺がそれを受けねばならぬのダ? このまま攻めればお前は倒れる、俺にメリットなどなにも――――」


「――――リジェネ様。リジェネ様に頼んでやってもいい! 戦好きの事を膝枕しながら再生してあげてと」


「…………下らん。よかろう!! 受けて立つ!! …………約束は守れよ?」



 ちょろい奴だ、戦闘の神が聞いて呆れるぜ! だがまぁ分からなくもない、戦場にも誘惑はある……僕はこの戦場に誘惑を作り出したのだ! コイツが男神で良かった……使えるものは何でも使う、それが戦場なのだろう?



「では構えるのダ。お前の提案は受けるが、全力で俺も迎え撃つ! 覚悟はいいか?」



 戦好きが構えを取る。その表情は自信に満ちており、放たれる闘気に威圧される。リジェネの事を聞いた時は頬が緩んだくせに。


 相変わらず斧は両手持ちだ。だが今回は両腕を存分に使い、力を余すような攻撃などしてこないだろう。


 ――――戦場に静寂が降りる。


 合図などは決めていない、お互いの呼吸が重なった時、それが開始の合図。……なんて意味の分からない事を想う程には余裕があった。


 ――――刹那、誰かが喉を鳴らす音が微かに聞こえる。それに驚くように、急かされるように体が動き出す。


 動いてしまっては止められない、このまま突き進むのみ。


 時の神殿らしく、周りの情景がスローとなり後ろに流れゆく。それほどまでに高速の動き。そんな中、僕は迫りくる強圧を纏った神に双剣の片方を放り投げた。



「下らん!! 戦場で得物を自ら手放すなど愚の骨ちょ――――な、なにッ!?」



 投げた剣はいとも簡単に弾かれる。もちろんこんな投合で戦好きに傷を与えられるとは思っていない。


 狙いは別。何度か攻撃していて分かったのだが、戦好きは正面攻撃を受ける時、斧を前面に押し出し防ぐ癖があった。


 本来、高速で動く敵を前に視界を自ら遮るなんてあり得ない。敵を見失うなんて、一瞬であっても一対一では自殺行為だろう。


 だけど仕方ないよね。意外性をもった攻撃に、瞬時に対応できるほどの行動が取れないのだもの…………斧に慣れていないから!!


 一瞬遮られた視界、開けた時に見えたのは眼前まで迫った僕の姿。



「ご都合主義万歳!! これで決めるよ!!」


「な、舐めるな!! この程度の動きにこの俺が――――」


「――――刃を見てみるんだね!! ウオオォォォォリャァァァァ!!」


「なッ!? 刃が……貴様破壊してッッ!? ヌゥオオオォォォォ!!」



 交差する刃、僅かではあるが僕の方が早く振り抜いた。


 一応二段構え、投げた剣には破壊を纏わせてあった。


 戦好きの衝撃波に神力を乗せた攻撃をヒントにやってみたらいけた。こんなに上手くいくとは思わなかったけど、見事の片側の刃を破壊してくれて、それに焦った戦好きの動きが一瞬悪くなった。


 が…………僕の負けかな。


 僕も戦好きも、倒れてたりはしていない。でも僕の攻撃が戦好きにヒットした感覚はなかった。


 しかし僕の方は……剣を持っていた腕が吹き飛んでいた。もの凄い激痛だけど、ここで転がり回るのはカッコ悪すぎるので我慢我慢。


 僕の腕どこに吹っ飛んだんだろ……早く再生してもらわないと。



「――――見事ダ、オルクス・リミットレス。お前の勝利ダ」


お読み頂き、ありがとうございます


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