第二話 最終試験
「ぐぅぉぉぉぉぉおおお!! これでッどうだ!!」
その後も続けられた戦好きの戦講座。
戦闘の神の名は伊達ではない。神力を除いた単純な戦闘としては、最強なのだろう。この神の剣術に比べればワンスの剣術など子供のチャンバラ……のように見える。
僕も相当に剣の扱いには慣れたと思うが、足元にも及んでいない気がする。
「見事!! ついに俺に一撃を与える事が出来た!! ……では試験ダ!! 俺はあまり使い慣れていない武器を使う! 俺に傷を与えてみよ!!」
始まる最終試験、戦好きの手に現れたのは二つの刃がついた大きな戦斧。
あまり使わない武器とは斧の事か、相変わらずどこの世界でも不遇な武器のようだ。
斧と言えば基本的には一撃必殺。その威力は数ある武器の中でも最高峰であるのは間違いない。しかしそれゆえ小回りが利かず、隙を作り出しやすい武器のはず。
なら僕のチョイスは……素早さに特化した双剣だ。防御面に不安は残るが、あの斧からの攻撃はどんな武器を選んでも防げないだろう。
斧の一撃を躱し、隙に素早く切りかかる。王道ではあるがこれしかないだろう。
「……双剣か。そのような矮小な武器で俺の一撃を防げるのか?」
「会心狙い、蛮族の武器、主人公らしくない武器、伝説的な存在がない武器……それが斧だろう? そんな武器には遅れはとらん!!」
「そ、そこまで言う事ないだろう!? そもそもこれはゴッドアックス! 伝説……一歩手前の武器ダ!!」
だっせぇ……ゴッドアックスって、しかも伝説一歩手前かよ。神の斧でも一歩手前なら、伝説の斧はどんな斧なのよ。
「オルクス~、頑張ってね!!」
「オルクス様! 応援しています!!」
「あっはは~、僕の神殿壊さないでよ?」
「……死んだら骨は……拾ってあげる……」
「お兄さんファイトォォォォォォ!!」
「成果を見せてみよ小僧!!」
今日はギャラリーが沢山だ。
別に今日が最終日と言うのは決まってなかったのに、修行最終日といった雰囲気を醸し出してくれている。
ご都合主義に引き寄せられた神達。ならばご都合主義らしく、この試験を突破して見せようじゃないか!!
「ルールは単純ダ!! 俺に傷を付ければお前の勝利、動けないほどにダメージを受ければ俺の勝利!! 神力を直接相手に放つ事、己に纏う事は禁止とする!! では誰か、合図を頼む!!」
「オッホン!! では戦場の提供者として合図するよ~…………両者とも、準備はようござんすか!?」
「「ようござんす!!」」
「……では…………始めッッ!!!」
クロノアの合図と同時に動き出した戦好き。
一瞬にして距離を詰め、クロノアの声が消えた瞬間には僕の目の前で斧を振りかぶっていた。
だけど僕には見えていた。気配を、圧を感じる事で接近を知覚する。動きもしっかり目で追える、少し前の僕なら今頃真っ二つだろうね。
轟音を響かせ地面に亀裂を作る戦好きの一撃。だが当たらなければどうという事はない。そしてこんなに早く隙が出来るとはね、会心の一撃のせいで隙だらけだ。
「隙だらけだよ! 勝負あ――――」
「――――甘い!!」
地に刃の半分が埋もれていたのに、強引に引き抜きそのまま横なぎを繰り出す戦好き。
瞬時に回避したため刃は服を掠っただけ、少し遅れていれば真っ二つ。斧は小回り利かないんじゃなかったの!? なに二連撃してくれてんの!!
「斧はその重さ故、確かに小回りは利かぬ。しかしそれは非力者の話ダ!! 圧倒的な腕力があれば斧であれ神速……武器だけに目を向けるでない!」
なんだそのデタラメな腕力!? 聞いていないぞ!? ……いや落ち着け、確かに隙はあったんだ。
斧は使い慣れてないと言っていた。確かに強大な威力、そして速度はあるのだろうが、振りだけみれば素人となんら変わらない。身体能力が優れているだけで、技術などない。
「さあどうするのダ? 殺しはしないが戦闘不能に陥ればそれまで、再び修行漬けの日々に戻ってもらうぞ?」
「お断りだよ!! もう飽きたんだよッっと!!」
戦好きは両手で斧を握っている、しかし片腕の腕力だけで十分なはず。その証拠に左に振り抜いた時、右腕が引っ張られるような形となりバランスを崩していた。左腕の腕力だけで振り抜き、右腕は添えただけという事。
恐らくワザとであろう。戦闘の神だ、使い慣れていないとは言えあんなバランスを崩す扱いなんてする訳がない。
誘いの隙、というやつか。……いいだろう、次の誘いには乗ってやる。
「中々鋭い剣筋ダ!! だが届かんぞ!! 大戦斧は盾にもなるのダ!!」
「視界が狭くなってるよ! 斧の陰で見えなくなっても大丈夫なの?」
防戦一方であるように見える戦好き、しかしその守りは崩せそうにはない。
そもそも単純戦闘でこの神に敵うはずはない。唯一付け入る隙があるとすれば、一瞬でも戦好きの想像を超える事。
ある程度、僕の事は舐めているはず。その一瞬の慢心を絡めとる!!
「どうしたのダ!? もう仕舞か!?」
「まだまだだよ!! かかって来い!!」
「その意気や良し!! では受けてみよ!! ウオォリャャアァァァァァ!!!」
でた!! 斧使いが必ず使う技! 地面に叩きつけると、都合よく対象にだけ衝撃波が地を這って迫る攻撃!! その攻撃はシミュレート済みだ! 避ける事は造作も――――
「――――愚かなり」
「ック!? ガァァァァァ!!!」
僕は衝撃波をもろに受け吹き飛ばされる。ちゃんと避けたはずなのに……衝撃波が、爆発しやがった!? ただの衝撃波じゃない……この感じ……。
「俺の神力を衝撃波に乗せたのダ! 安心しろ、加減はしてやった」
「ググゥ……し、神力を放つのは禁止って言ったじゃないか!!」
「直接!! 放つのは禁止と言ったのダ! 間接的だし問題ない」
こいつ、やってくれたな!? 神力の使用は完全に禁止だと思っていた僕の浅はかさが原因だが。衝撃波に集中すれば神力が含まれた事には気づけたはずだ。
しかしヒントになった。地力で敵わないのであれば、他の手段を使うまで。度肝を抜いてやるぞ、戦好き!!
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