其の弐ノ終 喧嘩するほど仲が良い?
「死ねばいい!? 死んだら転生するからとか、そんな簡単に思ってんのか!?」
急に大声を上げた僕に驚き、喧嘩をやめ僕を見る二人。
僕は人間だよ、神の考え、感覚なんて分からない。でも人間だからこそ、神には見えないものが見える事がある。
「そりゃ転生なんて知識がある神にとっては、死なんてそんなもんなのかもしれないな! 命なんてそんなもん……命に生を与える神が、命に終を与える神が、そんなすごいもん司っておいて、一番命を軽く見ているのはお前達なんじゃないか!?」
本来死んだらそれで終わり。次があるなんて思ってもみない者達は、生を大事にしながら死に向かって歩いている。
死ぬ事は分かっている、だから精一杯生きるんだ。
「死があるから生が輝くんだぞ!? 生がなければ死もない、生があってこその死だよ!? 二人はお互いに必要な存在なんだ! いなくなれとか、死んじゃえとか言うんじゃない!!」
こんな言葉なんか、僕なんかより遥かに長生きしてきた神達に届くとは思ってない。
そもそも見当違いもいい所なのかもしれない。アンタなに言ってんの? みたいかもしれない。でも言わずにはいられなかった。
…………たかだか数十年生きただけの人間に、生と死を司る神に命の事を説くなんて、よく考えたら恥ずかしくなってきたな。
よくよく考えたら僕も命を諦めた事があった気がする。ふ、雰囲気がヤバイな。だれか突っ込んでよ。
「ま、まぁ人間の……とても矮小な存在である一人間の戯言ですので……お気になさらず……」
マズい、急に怖くなってきた。
冷静に考えたらこの少女達は神の中の神、お怒りではないだろうか? 神の逆鱗に触れてしまったかもしれない……ヴァル、助けて。
〈胸を張れ、我はオルが間違っているとは思わん。奴らが怒り狂うのであれば破壊するまで、恐れるに足らん〉
(そ、そう? なら胸を張っちゃおうかな?)
〈まぁ、生と死……命を操る神達に命の何たるかを説くとは、お笑いではあるが〉
[大丈夫! オルクスは間違ってないよ? お姉ちゃんが保証する!]
〔そうです! オルクス様が言うのです! 無条件で全て正しくなります!〕
身内贔屓の姉と僕をどこまでも正当化してくれる女神は置いといて……恐る恐るシニカとセイカの様子を窺う僕。
二人は俯いており、その表情は窺う事が出来ない。よく見ると体がプルプルと震えており、心なしか神気が強くなっている気がする。
やはりお怒りか? だがマズいぞ、ここで二人が僕を殺そうと動くのであれば、エル姉とウィッチは恐らく僕の味方に付くだろう。
破壊神と断罪神と絶美神バーサス、死神と生神。
皮肉なものだ、あれほど仲違いしていた神達が、アホな人間を始末するために力を合わせる。いやだぁ~こんな可愛い子達を壊したくねぇぇぇ……。
「……あのね、僕ね、ちょっとね、アホだったからね……機嫌……治し――――」
「「――――ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」
目に涙を浮かべながら僕に突撃してくる幼女達。
一瞬殺られるっ!? っと思ったがそうではなかった。泣きべそ掻きながら僕に抱き着く彼女達、セイカは分からなくもないが、シニカがこんな表情をするなんて驚きだ。
「お、おぉぉぉう……お前達、分かってくれたか? よく分からないけど分かってくれたのか?」
「ごめんさぁぁぁいぃぃぃぃ……よく分からないけどごめんなさいぃぃぃぃぃ」
「……ご、ごめ、ごめん……お……おに……お兄ちゃん……ヒック……ごめん……ヒック」
泣きすぎだろお前ら、罪悪感が半端ない。やはり子供か、こんなに泣きじゃくって……。
〈そんなはずは……こいつ等は仙人も裸足で逃げ出すほど、達観した悟りを開くほど生きてきたはずだが……〉
(よく見ろよヴァル、こんな小さな子供なんだぞ? 子供の扱いは任せてくれ)
「……よしよし。じゃあ、仲直り出来るね? 君達は二人で一つ、これからも姉妹仲良く頑張りなさい?」
「分かったぁぁぁ…………ご、ごめんねシニカ? 死ねばいいとか言って……これからも、よろしくね……?」
「……ヒック……ヒック……私も……ごめん……ヒック……これからも……仲良くしてぇ……」
握手をして、仲直りをする二人。
素晴らしい!! これぞ姉妹愛!! 一時はどうなる事かと思ったが、なんとかなった。
さて、それではみんなで神樹も周りを掃除して、再び命が生まれる瞬間を共に祝おうではないか!!
「…………ヒック……ふぅ…………お兄ちゃん……どうだった……? ……兄愛試練その三十三……喧嘩するほど仲の良い妹達……」
「泣くのは難しかったねぇぇぇ!! シニカにしては中々良かったよぉ!!」
続いてたのかよ!? あの涙は演技だったと言うのか!? なんて名女優、このクソガキども、兄を騙したと言うのか!?
一瞬にして泣き止み、涙なんて消え失せている二人。互いの演技を賞賛し、笑顔を見せる姿は本当に仲の良い姉妹のようだ。
〈ほらやっぱり……アホらし。オルが勝手に勘違いして命を説いただけだろ……〉
「……セイカも頑張った……ところでお兄ちゃん……どっちが妹……?」
「わたしだよねぇ!! シニカには負けないもん!!」
まだ続けると言うのか? しかし最初の時のような神気を飛ばし合う喧嘩ではなくなっているな。
喧嘩するほど仲がいいとは、よく言ったものだ。巻き込まれた方はたまったものじゃないが。
「……いいよ、どっちも妹で。別に一人って決まりはないし……でも喧嘩はダメだぞ!? 仲よくする事! それが条件だ!!」
「……分かった……仲良くする…………あ……また余分な生が……」
「ちょ、ちょっとシニカ!! 生を終わらせないでってば!! 負けないんだから! いっぱいいっぱい生を増やしてやるぅぅぅぅ!!!」
「『いい加減にしろお前ら!!!』」
こうした思い出が、神界観光中に起きていた。
新たに一人、家族が増えてしまった。まぁ可愛ければなんでもいいね。
≪――――おい聞いたか? 破壊神が、幼女を脅して泣かせたんだってよ?≫
≪俺は幼女に暴行を加えて泣かせて、その様子を見て笑っていた破壊神がいたとか聞いたぞ?≫
≪破壊神って、酷いんだな……≫
その後神界では、破壊神を断罪するように懇願する神達が、エル姉の元に殺到したとかしないとか……。
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