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其の弐ノ陸 言って良い事、悪い事

「……本当……? ……怒ってない……? ……もっと食べる……?」


「怒ってない怒った事もない!! ……でももういい、セイカのも食べなきゃいけないから」



 少しだけ残念そうな顔をするシニカではあったが、大人しく引き下がってくれた。


 さて、次はニコニコと満面の笑みを浮かべているセイカの弁当だが……大丈夫だよな? 死と違って生であれば死ぬなんて事はないはず。


 仮に生の神力が隠し味として入っていても問題ない! もしかしたら僕は本当に生き返るかもしれないし、それは良い事だろう。



〈それはない、オルの命は魂から離れ消えている。いかに生の神とはいえ、一度魂から遠ざかった命を生かす事はできん。魂を我が繋ぎ止めているだけの状態だ〉


(あっそ~ですか!! なんでいちいち言うの? 可能性として残しておけば、この先ご都合主義に使えるかもしれないだろ!? 余計な事を……)


〈……ごめん……ごめんなさいぃぃぃぃ……〉


(うるさい、シニカの真似をしてもダメだ!)



「お兄さぁぁぁん!! 次はわたしのお弁当だよ! 食べてよぉぉぉ!!」


「あぁはいはい……まったく、正反対のテンションだから疲れる…………あん? なんだこりゃ?」



 天真爛漫な妹、セイカから渡された弁当箱をオープンした僕。その目に飛び込んできたのは不思議な光景だった。


 不思議と言うか……こんな弁当は見た事がない。入っている物は下界でよく目にした食物ではあるが、これは弁当と言うのか?



「……生魚? ……生麦、生米、なぁまたまごぉ!? 生野菜……これはまぁ……あれ? ドレッシングは? これは……な、なま……なまちち? 生乳……あぁ牛乳か……え? なんで弁当箱に牛乳注いでんの?」



 わざとか? わざと生ものを揃えたのだろうか? 生の神だから生もの? すげぇなこいつ、張り切って勝負を挑んだ割にギャグに走るとは。



「生まれてすぐのものだよぉ!! お弁当なんて初めて作った! 新鮮なうちに召し上がれぇぇぇぇ!!」



 生まれてすぐ? ……ほんとだ、よく目を凝らすとこの魚、まだ生きていやがる!? しかし随分と成長しているが本当に生まれてすぐなのか?


 いやそんな事より! これは食えん! 人間の僕に食べれそうなのは……いや頑張れば全部食えるけどさ、腹壊すよ……。



「お兄さん……? 食べないの? わたしが作ったお弁当……食べれないんだぁぁぁぁ……」


「ぴゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!? 泣かないで!? うそうそ! もち食べるよ! セイカが作った生鮮食品だし! 健康に良さそうだ! さすが我が妹である!!」



 危ない、二人も幼女を泣かせたら通報ものだ。ちょっと道を聞いただけで通報される時代、泣かせたとあっては極刑かもしれん。


 バレないように胃に破壊を展開しよう……喉越しと味は我慢だ。……生魚キチィィ!!



「……おいしい? わたしのおいしい? わたしの生ちちおいし――――」


「――――それはアカーン!! 美味いよ!? 唯一の良心だもん、牛乳大好きだよ!!」



 くそ……口の中が生臭い。まぁ妹達の喜ぶ姿が見れたんだ、良しとしようか。


 この、弁当でハートをキャッチ試験も……引き分けかな? 味だけなら文句なくシニカだが、殺されかけた。命の危険はないにしても、セイカのは弁当ではない、そもそも調理していない。



〈胃ではなく口内に破壊を展開すれば良かっただろ……なんでわざわざ味感じてんのよ〉


(早く言えよお馬鹿!! お前に分かるか!? 微妙に生きたままの魚を鱗ごと食す人間の気持ちが!?)



 その後もいくつかの兄愛試験をしたものの、とてもではないが理想の妹像とはかけ離れた結果としかならなかった。


 なんでもかんでも死の匂いを感じさせるシニカと、悪気がない悪意に満ちたセイカの兄愛。


 これ以上行き過ぎるとさすがにマズい事になりかねん。兄と仲の良いの女(主演:ウィッチ)に嫉妬する妹の行動は? といった試験では本当に危なかった。


 有無を言わさずウィッチに全力の死の力を放つシニカと、その危機を救って兄に好印象を与えようと、意外にも頭脳派の行動を取ったセイカ。


 結果は想像通り、ぶつかった死と生の力は相反し、兄ごと周囲全てを吹き飛ばすと言う結果となった。



「――――もういい、お前達の愛は伝わった……もう勘弁してくれ……」



 ギブアップだ、神の愛は重過ぎる……。しかしあの僕がこんなにも神に愛されるなんて驚きだ、少しおかしな方向に向かっている愛ではあるが。


 二人は納得のいっていない様子、僕がこんな状態になったのはお前のせいだと言い合いを始めてしまう始末。


 姉妹なのだから、仲よくすればいいのに。司る神命が違えば二人の関係も変わったのだろうか? だとしたら、悲しい宿命だね。



「……セイカのせいでお兄ちゃんが疲れた……セイカなんていらない……死んじゃえばいい……」


「シニカのせいだよ!! シニカこそいらないよ! 死ねばいいじゃん!! 死の神なんだから死ぬのは得意でしょう!?」



 ……お前達、それはダメだわ。



「シニカ!!! セイカ!!! ふざけた事言うな!! お前達、今なんて言ったか分かってんのか!?」



〈お、おい。神にとって死はなんて事――――〉


(――――そう言う事じゃないんだよ!!)



 なぜ怒りをぶつけられているのか、分からないといった二人の妹。兄としてもここは、死神と生神に生と死について話しておかなければならないようだ。


お読み頂き、ありがとうございます


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