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其の弐ノ肆 姉妹喧嘩

「んんんんん………っもう許さないっ!! だからあなたをここに連れてきたくなかったの!!」


「……同じ事……下界に生れ落ちる前に消すだけ……早いか遅いか……それなら今やった方が楽……」



 少女同士の可愛い喧嘩……なら可愛げのあるもののはず。


 しかしその神体から発せられるのは、とてもじゃないが可愛いと呼べる物ではない。生と死、始まりと終わりの力が今まさにぶつかり合おうとしていた。



「……死人に口なし……いつも通り……死んだ方の負け……」


「いいよ!! 負けないもん! かかってきやがれぇぇぇ!」



 死んだ方の負けって……それは少女の喧嘩の枠を超えているぞ!? と、ともかく止めないと! 神樹の前で最上位の力が暴れるなんて怖すぎる! 命が生まれなくなったらどうすんさ!



[いつもの事だよ? 放っておけばその内に仲直りしてるわ]


(そ、そうなの!? 尋常じゃない神気だけど!?)


〔ぎゃ、逆に手を出したらダメです! あれでもあの二人は天蓋、簡単に止められるものではありません! 仲裁の神も何度も巻き込まれて死にましたし……〕



「いっくよぉ!! 生・始生!!」


「……絶対負けない……死・終死……」



 激突する二つの強大な神力。相反する力、生と死。


 二つの力は全くの互角、一歩も譲らず拮抗する力であったが、それは爆心地のみ。


 二人の周囲にはぶつかり合い、弾き出され行き場を失った凶悪な力が雨の様に降り注いでいる。神樹の辺りの光景は天国どころか地獄である。


 神界にも地獄はあるんだね。と言うか仲裁神っているのか……以前僕がクエイラスと喧嘩した時は現れなかったと思うけど。



[あれ? オルクスは気が付かなかったの? あの時も仲裁神、いたよ?]


(え……いたっけ? ヴァルは見た?)


〈……知らん、そんな神の神気は感じなかったが……〉


[まぁ、下位神ですからね。あの時も私とクエイラスの仲裁に入りましたが、その瞬間に二人の神力に一瞬で消し飛ばされてしまいましたから]



 仲裁する間もなく消し飛ばされたのか……気づかんかった。って事はこの二人の喧嘩も仲裁しに現れるのだろうか…………あれ? なんだアイツ? あ……飲み込まれた。


 一瞬、二人の間に誰かいた様な気がする。気のせいか?



〔あ、あれ、仲裁神ですね……一瞬で生と死に飲み込まれて消滅してしまいましたが……〕


(……マジで? 凄い神だな、下位神なのに最上位神の喧嘩を仲裁しようとするなんて……)



 むしろあそこまで近づけた事が凄い、僕達ですら神力を纏っていても中々の圧を受けるほどなのに……もはや呪いではないか? 仲裁神の司る仲裁とは……。



「あなただって見境なく死を振り撒く事あるじゃん!! むしゃくしゃするとか言ってさぁ!!」


「……私は死神……私の与える死は必然……生死は私が決める……」


「アンタが死神ならわたしゃ生神じゃあ! 生死はわたしが決める!!」


「……うるさい……死ね……」


「うるさくない! 生きるッ」



 仲良いんだか悪いんだか……しかし徐々に神力がこっちにも溢れ出して来たな。このままここにいたら僕達も巻き込まれかねん。



「……ねぇ、本当に放っとけば仲直りするの?」


「……そのはずだけど……なんかいつもと様子が違う気がするわ」



 仲直りどころか酷くなっていってるよ? 草木は枯れた瞬間には青々と元に戻ったり、生と死の影響をかなり受けている。


 あそこに近づけばどうなるんだろう? 死んだ瞬間に生き返るのかな? ちょっと興味あるな……。



「……大体セイカ……お兄ちゃんにベタベタしすぎ……ムカつく……」


「お兄さん? わたしが誰とベタベタしたってあなたには関係ないじゃん!!」


「……うるさい……私は妹……お兄ちゃんに近づくな……」


「あなたにとっての兄ならわたしにとっても兄じゃん!! 私のお兄さんに近づくなぁ!!」



 一層激しさを増す喧嘩。もはや当初の命の生き死にを理由とした神々の戦いの気配はなくなっている。兄を取られまいとする妹達の喧嘩……それだけ聞けば微笑ましいが。



『……なぁ、オルのせいじゃないか? 喧嘩の本質が変わってきているぞ?』


「はぁ……また家族が増えたのですか……いよいよ他の女は始末しないといけないかな……?」


「エ、エルフレイヤ? なんか目が据わっているけど……なんなの?」



 なんで僕のせいなの? 別に家族増やしているつもりはないんだが……そもそもアンタらが勝手に家族だと公言したんじゃん。


 と言うかシニカとセイカって姉妹だったのか。まぁ、確かに言われれば似ているけど……シニカは死化粧、セイカは……生化粧? しているせいか分からんかった。



「……妹の分際で……姉に逆らうな……私のお兄ちゃんから離れろ……!」


「妹はあなたでしょう!? わたしが姉よ! お兄さんはわたしのだよ!」



 いや、僕はお前達のものではないが……。正直取り合いをされると言うのは気分がいいし嫌いではないが、生死を天秤にかけられるのは困る。隣の姉は機嫌悪くなるし、勘弁してもらいたい。



「ならお兄さんに決めてもらおうよ!! どっちが妹に相応しいか!!」


「……望むところ……お兄ちゃんが望む妹は……私……」



 いや、やめてくんない? まともな家族がほしい。


お読み頂き、ありがとうございます


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