其の弐ノ弐 生の神
「……死ね……」
「生きるッ!!」
徐々に強くなる神気、徐々に強くなる引っ張り、徐々に痛くなる僕の腕。
そろそろ洒落にならんよ? 神の腕力で引っ張られる人間の腕の気持ち分かります? 破壊の力纏っちゃうよ?
周りの神はニコニコとするだけで、僕を助けようとはしてくれない。
エル姉とウィッチですら、微笑ましい物を見ているかのような表情だ。微笑ましいのは見た目だけだ、僕の腕がミシミシ言い始めてんだぞ!?
「コ、コラッ! 痛いってば! 止めなさい二人とも!」
「……セイカ……早く離してあげて……あと死ね……」
「離すのはシニカだってば!! あと生きるよっ!!」
聞き耳を持たない二人。
いよいよ僕の腕が千切れそうだったため、仕方なく破壊の力を纏った。力を認識した瞬間に、名残惜しそうに手を放す二人。
「あいたたたた……まったく、これだからお子ちゃまは……で? 君は誰なの?」
天真爛漫な少女、まったく悪びれた様子はない。破壊の力に驚いていた様子もない事から、最上位神である可能性が高い。
「わたしはセイカ!! 生の神だよぉ!! ねぇお兄さん! 楽しい所に連れて行ってあげるから行こうよぉぉ!!」
「せ、性の神!? こんな子供が……た、楽しい所って……ど、どこだい?」
〈おいロリコン、性ではなく生の神だ。思い出した、コイツは最上位神……天蓋だ〉
(ロリコンじゃない!! しかしまた天蓋か、こんな子供が)
〈死神も天蓋だろう? 女子供は関係ない、力こそ全てよ〉
しかし凄いな。最上位神の中でも、特に強力な力を持つと言う天蓋。
どれだけいるのかは分からないが、すでにこの場に三神。時と死と生……あ、ヴァルも一応天蓋か、ならば四神か。
〈あそこでいじけているオッサンも天蓋だろ? 可哀そうだからカウントしてやれよ……〉
この場の神々しさがヤバイ……なんて言ってはみるが、少女二人に少年一人……そしてオッサンが二人。威厳なんて欠片もない。
〈おい、我をオッサンにカウントしたな? やめてよ、マジで〉
「……お兄ちゃん……セイカについて行っても楽しくない……うるさいだけ……」
「根暗なあなたに言われたくないですぅぅ!! お兄さんはわたしと明るい所に行くんだから!!」
相性が悪いのか、ぶつかり続ける死と生。
正反対を司っているんだ、相性が悪いのは分からなくないけど……子供が喧嘩している姿はあまり見たくないな……。
「こらこら、喧嘩は止めなさい! 仲良くしようよ? 僕は仲のいい子供を視姦するのが好きなんだ」
〈視姦て……ダメだこいつ、早くなんとかしないと……〉
「だってこの子、わたしが与えた生に死を与えるんだもん!!」
「……不必要な命は……バランスを崩す……余分な生は……世界を殺す……」
神にも色々とあるんだねぇ~、まぁ僕にはどうする事も出来ない。神のお考えを人間の僕が否定できるはずもなし……って事で知らね、勝手にやってよ。
でも喧嘩は止めてちょうだい。
「……私は……貴女の尻拭いをしてあげている……感謝すべき……頭足らずのセイカに……言っても無駄かな……?」
「ムッキぃぃぃぃぃぃ!! 誰が頭でっかちよ!? あなた、いい加減に――――」
「――――はいはいストップストップ! まったくもう、保護者はどこ? これ以上喧嘩するなら僕はもう帰るよ?」
今にも殴り合いを始めそうだった二人に割って入る。
なんで僕が止めなきゃないの? 他の神はどうしたのよ? なんで放置しているの? たまに泣いている子供を放置している親がいるけど……あれ間違いだからね?
この前飲食店でも、泣いている子供が泣き止むまで放置していた親がいたけどさ、あり得ないよ?
子供は泣いて当り前さ、そこはいいよ。でも放置親、お前はダメだ。
前提に子供の泣き声が苦手な人もいると理解しろ、しかしそれを我慢するのが大人だ。でも放置している大人には我慢できん! あまつさえ開き直る親もいる始末、子供は泣くものなのだから仕方ないでしょうだ?
仕方ないよ!! でも放置するのは仕方なくないぞ!! せめて泣き止ませようと努力している姿くらい見せやがれ!! なに放置して横で本を読んでんだよ!?
(そう思わないかヴァル!?!?)
〈お、おう……まぁ、そうだね…………え? 何の話?〉
「……お兄ちゃん……ごめん……」
「ごめんなさい!! もうやめるから!!」
分かってくれればいいんだ。良い子だぞ? よし、今度遊園地に連れて行ってやろう! なんとなく親の気持ちが分かった気がする。
「それでセイカ、楽しい所があるって? もう少し神界を観光したかったんだけど、ハズレばっかりでさ」
「うん!! わたしの管理している生命の神樹!! 命が生まれる瞬間が見れるよ!!」
ほほぉ、それは見てみたい。
まさに下界にはない光景だ。滝も花畑もスケールが違うものは下界にもあるからね。
滝はハズレ、花畑はエル姉とウィッチの方が綺麗に見えてしまったし、カマもいたし。
「いいね! 見てみたいよ! 案内してくれる?」
「もちろん!! ……シニカも来るの?」
「……私は……お兄ちゃんと同じ所に行く……」
「お兄さんに免じて許すけど……この前のような事は絶っっ対にダメだからね!!」
右手をセイカに引っ張られ、左手でシニカを引っ張りながら進む。ニコニコと笑うセイカと、心なしか歩みが軽やかになったシニカ。
うんうん、そうそう、仲良くね! まるで本当の兄妹みたいだね。
その三人の後ろを、微妙に優れない表情でついて来る神達。
なんでそんな顔しているんだ? 嫌なら別について来なくていいんだけどな。
「あっはは~……僕、行くのやめようかな?」
「このまま何事もなければ良いのですが……」
「死と生は……混ぜるな危険! ですものね」
「ワシも仲間に入れてくれぇぇぇぇ……」
ぞろそろと神樹まで行進する神界の有名神達。
何か非常事態が起きたのか!? と言った噂が神界中を駆け巡るのであった。
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