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朋友

「会議中なう。集合」と、高校の親友、梨田からLINEが入った。梨田の家までは遠くない。僕はまた家を飛び出してチャリンコにまたがった。海岸まで続く下り坂を颯爽と駆けて到着。

 ピンポーンと呼び鈴を鳴らすと、「あがれー」と二階から梨田の声。おじゃまします。と言って僕はドアを開けて家に入った。梨田の部屋のドアを開けると、梨田は赤ら顔で出来上がっているようだった。

「よお梨田。昼間から酒かよ」

「おーよ。酒飲む以外にやることあんのかよ。このど田舎でよお」

「あんだろ。色々。お、スギムーもいるじゃん」

 スギムーもまた高校の親友だ。と、まあ、僕の友だちはこの二人しかいない。陰キャ同士、仲良くつるんでるわけだ。いわば、長い高校生活を生き残るための結束。スギムーはいつも朗らかにニコニコ笑っている。スギムーはやさしい。シュッとした顔立ちで女の子にもモテそうだが、僕と同じ童貞だ。

「会議つって、何を話し合ってんの?」

「高橋英雄についてだ。あいつ、最近俺の美香さんを狙っているという情報が入った」

 そう言って梨田はステレオのボリュームを上げた。スギムーはにこにこしながら、その音楽にノッて頭を揺らしている。

「なにこの音楽?」

「ロックンロールというものらしい。シャーベットというバンドだ。どうだいいだろ?」

「ガヤガヤしてんなあ」

「それがいいんだ」

 梨田はもう一段階、ボリュームを上げると、ビーマイベイベーとひょっとこのような口をして歌いあげた。それを見てスギムーが笑っている。何度も言うがスギムーはやさしい。

「俺の美香さんだけではなく、お前の明日香さんも狙っているという噂だ」

 明日香。その言葉を聞いて胸が高鳴った。僕はポケットから煙草を取り出して口に咥えた。

「未成年が煙草なんて吸っていいのかよ」

「うるせえな梨田。酒よりマシ。スギムー、吸うか?」

「うん」

 スギムーは煙草に火をつけると、深くゆっくりと煙を吸って吐き出した。

「でもよお梨田。俺ら陰キャは対抗する術がないよな。あの絶対的な陽キャである高橋に対して」

「まったくない訳でもないだろ?例えば…」

「例えば?」

「高橋のギャグに笑わないとか?」

「スギムー!!!!それだ!!!!!」

 僕と梨田の声が合わさった。

「高橋がギャグを言っても僕たちは笑わない。決して笑わない。そうやってお寒い空気を作り出すのだ」

「でもなあ。久太郎、あいつ結構おもしろいぜ」

「・・・」

 部屋に沈黙が訪れた。長い長い沈黙だった。それはある意味で僕たちの敗北を意味していた。

「夢見る童貞のままではいられない」

 何の気なしに僕がそうつぶやいた。

「ぬ、抜け駆けか?久太郎」

「いやあね、今日、良いことあったんだ。会った。明日花さんに」

「は?」

 梨田の顔が硬直した。スギムーの顔から笑顔が消えた。

「まあ、コンビニで偶然。一言二言、話しただけだったけれど」

「ほっ、そんなとこか。お前の恋が進展するわけがねえ。俺は認めない。な、スギムー」

「う、うん」

 なんだかなあ。確かに、梨田の言う通り、恋が前に進んだわけではないけれど。なんだかなあ。空しい気分だ。それから、僕らは滝修行をして精神を鍛えるべきだとか、モテるスポーツ、例えばサッカーをはじめるべきだとか、髪型をイケイケにするべきだとかなんとか話し合って僕らは別れた。

 家に帰りベッドに仰向けになるなり、僕はまぶたを閉じた。そして、今日会った明日香さんのことを思い浮かべながら僕は初めて、明日花さんで抜いた。

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