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婚約破棄した悪役令嬢、騎士団推し活を始めたら王子の執着が止まりません  作者: ZERO POINT


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第25話 殿下は何もわかっていない

 シリウスは思った。


 今さらですか。


「どうしようと言われましても」


「ルーカスは騎士団長ですよ?」


「人柄も良いですし、女性人気もあります」


「しかも、エレノア様に憧れているのは前からでしょう」


 王子は黙った。


 シリウスは続ける。


「正直、殿下より会話もできます」


「やめろ」


 即答だった。


 シリウスは少しだけ笑う。


「ですが、安心してください」


「エレノア様は多分気づいていません」


 王子が顔を上げた。


「本当か?」


「ええ」


「むしろ、ルーカスを優秀な騎士団長として見ている気がします」


 王子は少しだけ安堵した。


 しかし、シリウスは付け加える。


「ただし」


「ただし?」


「周囲は全員気づいています」


 王子は固まった。


「……全員?」


「令嬢方も」


「騎士団も」


「多分、ルーカス本人も」


 王子は頭を抱えた。


「エレノアだけか」


「エレノア様だけですね」


 シリウスは即答した。


「ノアは鈍いんだな」


「……」


(殿下もでしょう)


「それより、殿下はエレノア様と話さないと」


「わかった」


「練習をお願いする」


「ルシェルもしてくれてるんだけど……なかなかうまくいかなくて」


「正直、ノアと出会ったときからずっと練習してるんだ」


「え?」


 シリウスは思わず聞き返した。


「ずっとですか?」


「ああ」


 王子は真面目に頷く。


「これでもかなり話せるようになった」


「最初は挨拶だけで終わっていたからな」


 シリウスは少し黙った。


「……今がですか?」


「今がだ」


 王子は真顔だった。


 シリウスは頭を押さえた。


 思った以上に重症だった。


「ルシェルも色々考えてくれているんだ」


「会話の練習もしている」


「だが、本番になると駄目なんだ」


 王子は珍しく本気で悩んでいるようだった。


 シリウスは少し考えた。


 そして思う。


 殿下。


 それだけ頑張っているなら。


 もう少し報われてもいいのではないだろうか。


「会話の練習をしたり、来る前は紅茶の確認をしたり、花を揃えたりもしているんだ」


「好きなものは全部メモしてある」


「喜んでほしくて」


「これでも毎日努力してるんだ」


「ノアに見合うように勉強もしたし、運動もした」


「それで、お慕いしておりますと言われていたから安心していたんだけど」


「こうなってしまって」


 王子は少しだけ視線を落とした。


「俺は、本当に大好きなのに」


「俺は仲が良いと思ってたんだ」


「本当に」


「決められた時間に会うだけだったが、それが嬉しかったし」


「話せないけど幸せだったんだ」


「だから、それでよいのかと思ってた」


「浮気するとか言われて、意味が分からなかったんだ」


「俺はノアがいてくれたらいいんだ」


 シリウスは少し黙った。


 思っていた話と、だいぶ違う。


 エレノア様の話を聞いている限りでは、殿下が距離を取っているように聞こえていた。


 だが、実際は違う。


 ただ不器用なだけだ。


 しかも思っていた以上に一途だった。


 好きな相手のために努力を続けて。


 喜びそうなものを調べて。


 少しでも釣り合いたいと考えている。


 それなのに本人は全く伝えられていない。


 シリウスは小さく息を吐いた。


 なるほど。


 ルシェル様が協力している理由がわかった気がした。


 これは、少し助けてやりたくなる。


「ルーカスやシリウスと知り合えたのは良かったと思っているんだ」


「別に嫌いでもないし」


「むしろ格好いいなと思う」


 王子は苦笑した。


「エレノアは二人のことを楽しそうに話すだろう?」


「だから、俺もそうなれたらいいと思ったんだ」


「参考にしたりもした」


「でも、なかなかうまくいかなくて」


 少しだけ視線を落とす。


「頑張っているつもりなんだけどな」


「何が足りないのか、本当にわからないんだ」


 シリウスは思った。


 違う。


 殿下は何もわかっていない。


 エレノア様が一番見ているのは。


 多分、殿下なのだから。


 本人だけが気づいていない。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回はシリウス視点で、殿下の本音が少し見える回でした。


本人たちは気づいていませんが、周囲はだいたい気づいているようです。


果たして殿下はエレノアときちんと話せるのでしょうか。


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


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