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婚約破棄した悪役令嬢、騎士団推し活を始めたら王子の執着が止まりません  作者: ZERO POINT


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第17話 話したかった、のかもしれない

 王子は、エレノアとシリウスの噂を耳にしていた。


「今度は……シリウスか」


 その名前が妙に引っかかった。


 小さく呟く。


「ルシェル、俺はどうしたらいいんだ」


 ルシェルは少し考えて答えた。


「殿下も魔法通信したらいいんじゃないですか?」


「そうは言っても、難しいだろう」


「シリウス様に聞いてみるとか? 意外と教えてくれるかもしれませんよ」


「……は?」


 王子はすぐに言った。


「シリウスを呼べ」


 しばらくして、シリウスがやってきた。


「エレノアと魔法通信をしていると聞いた」


 思ったより低い声だった。


「はい、しています」


「否定はしないんだな」


「はい。ただ……殿下が想像されているような関係ではありません」


「どういうことだ?」


「……お友達です」


 王子は眉を寄せる。


「信じられると?」


「はい」


 シリウスは迷わず答えた。


「私の研究の愚痴を聞いていただいていました」


「……研究?」


「ストレスが溜まって、誰にも言えなかったんです。だから……つい連絡してしまって」


 王子は静かに聞いていた。


「それを、毎日か?」


「はい。でも、本当に助けられました」


 シリウスは少し視線を落とした。


「心が折れそうだった時、エレノア様が話を聞いてくださったんです」


「ですから、殿下が心配されるようなことはありません」


 少し表情を柔らかくする。


「それに……エレノア様と話すのは、やめたくありません」


「話すことで、精神的に楽になりました」


「カウンセリングのようなものだと思っていただければ」


 王子はしばらく考えたあと、口を開いた。


「……シリウス」


「はい」


「大丈夫なのか?」


 シリウスは少しだけ目を瞬かせた。


「何がでしょうか」


 王子は言葉を選ぶ。


「研究所の件だ」


「そんなに追い詰められていたなら、問題があるんじゃないかと思った」


 シリウスは黙る。


 王子は続けた。


「必要なら、できることは手伝える」


「一応、俺にも権限はある」


「使えるものがあるなら使ってもいい」


 少しだけ視線を逸らす。


「……いや、変な意味じゃない」


「無理やり便宜を図るとか、そういう話ではない」


「もし、それを使うことでお前の立場が悪くなるならやらない」


「ただ……方法があるなら考える」


 シリウスは少し驚いたように王子を見た。


「殿下……」


 王子は肩をすくめる。


「そこまで追い詰められていたなら、何か問題が起きている可能性もある」


「婚約者が世話になった相手だ」


「それくらい確認する」


 シリウスは少しだけ笑った。


「……ありがとうございます」


「ですが、大丈夫です」


「少し苦しかっただけです」


「エレノア様が話を聞いてくださったので、かなり楽になりました」


 王子は小さく息を吐いた。


「困ったら、すぐに言うんだぞ」


 シリウスが少し驚いた顔をする。


「……殿下?」


「別に、気軽に言えばいい」


「俺に頼りにくいなら、ルシェルでも対応してくれるはずだ」


 ルシェルが軽く頷いた。


「もちろんです」


 王子は少し眉を寄せた。


「だいたい、おかしいだろう」


「お前が真面目に研究していることくらい、見ていればわかる」


「魔法研究ができる人材だということも、皆知っているはずだ」


「それなのに、追い詰められるほど環境が悪いなら、何か問題がある」


 シリウスは少し言葉を失った。


 王子は続ける。


「やりにくいなら、別の研究所を考えてもいい」


「お前なら行ける場所はいくらでもあるはずだ」


 少し考えて付け加えた。


「本来なら……王立研究所から声がかかっていてもおかしくないと思っていた」


 シリウスは思わず苦笑した。


「いや……王立研究所はさすがにありません」


「私は平民ですよ?」


 王子は不思議そうに首を傾げた。


「……何か問題があるのか?」


 シリウスが目を瞬かせる。


 王子は当然のように続けた。


「あそこは能力を見る場所だったはずだ」


「まだ、そんなことで選んでいるのか?」


 部屋が少し静かになった。


 ルシェルが小さく咳払いする。


「殿下」


「世の中は、殿下が思っているより綺麗ではありません」


 王子は少し考える。


「……そうなのか」


 そして、ふと視線を上げた。


「しかし……エレノアは俺以外に頼る必要があったのか?」


 シリウスは首を振った。


「いえ。私が一方的に研究の愚痴を言っていただけです」


「エレノア様は、聞いてくださっていただけでした」


 少し考えてから続ける。


「それと……エレノア様は、殿下とも魔法通信をしたかったのだと思います」


「ですが、ご自身から通信するのは難しかったようで」


 王子は静かに答えた。


「……俺も、魔法通信のやり方がわからない」


「だから、できないんだ」


 シリウスは少し驚いた顔をした。


「よろしければ……お教えしましょうか」


「簡単ですよ」


 王子は少し目を見開いた。


「……いいのか?」


 シリウスは頷く。


「エレノア様と話したいのでしょう?」


 王子は答えなかった。

今回、王子視点でした。


噂を聞いて動いた結果、嫉妬や対立ではなく、研究所や魔法通信の話になりました。


本人は多分そこまで深く考えていません。

でも、「どうして頼られなかったんだろう」と考えた時に、できない理由があるかもしれないと考える人だったようです。


シリウスも悪気があるわけではなく、普通に限界だっただけでした。


そして判明する事実。

殿下、魔法通信のやり方を知らない。


次回は、たぶん少しだけ前進です。


いつも読んでくださってありがとうございます。

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