表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄した悪役令嬢、騎士団推し活を始めたら王子の執着が止まりません  作者: ZERO POINT


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/27

第15話 飾らなくてもいい相手

 翌日、私はシリウスのいる魔法研究所へ向かった。


 ここは少し静かだ。


 やはり魔法の研究をしている場所だからだろう。


 ……騒いでいい場所ではない。


 でも、何となく来てしまった。


 皆はきっと、騎士団の訓練場へ行っている。


 同じ場所へ行きたくなかった。


 ……何となく。


 だから私は、研究所へ来たのだった。


 すると、シリウスが通りかかった。


 こちらに気づき、わずかに目を細める。


「シリウス様ー」


 私は手を振った。


「こんにちは、エレノア様。


 今日は他のご令嬢方はいらっしゃらないんですか?」


「はい。駄目でしたか?」


「エレノア様が来てくださるのは……嬉しいです」


 シリウスは少し頬を赤らめた。


「よかったら、これから休み時間なので……少しお話しませんか」


「はい。喜んで」


 そして、二人で研究所の休憩スペースへ向かう。


 シリウスが少し迷うようにしてから口を開いた。


「あの……何故、推し活を?」


「さあ、何ででしょうね」


 私は少しだけ首を傾げた。


「私も、よくわからないんです」


 視線を少し逸らす。


「ただ……自由に生きたかったのかもしれません」


「正直、少し疲れていたのもあると思います」


 そう言って、私は小さく笑った。


「でも——」


「これで救われているのも、本当なんです」


「皆様とお話しすることなんて、今までありませんでしたし」


「お友達もできました」


「だから……本当に、良かったとは思っています」


 シリウスは静かに頷いた。


「それなら、よかったです」


 ほんの少しだけ沈黙が落ちる。


「……でも」


 シリウスは言葉を選ぶように、ゆっくり続けた。


「たまに見るエレノア様は、少し苦しそうに見えたんです」


「あ……僕は距離感を掴むのがあまり得意ではなくて。


 踏み込みすぎていたら、すみません」


 そして、少し困ったように笑う。


「あの……僕でよければ、これからもお話くらいは聞けると思います」


「大したことは言えないかもしれませんけど」


 その日から、何故かシリウスに話すことが増えた。


 理由はよくわからない。


 でも、シリウスは話しやすかった。


 本当なら、令嬢たちに聞いてもらった方がいいのかもしれない。


 ……それでも、話したくなかった。


 シリウスは、ルーカスのように胸が高鳴る相手ではない。


 ただ——楽だった。


 こんな風に頼っていい相手なのかは、わからない。


 でも。


 お互い、どこか似た立場なのかもしれないと思った。


 最近では、魔法通信で連絡を取ることも増えていた。


 最初は少し距離があった。


 けれど、気づけば少しずつ素が出てきている。


 だから——気が楽だった。


 飾らなくてもいい。


「公爵令嬢にこんなことを言うのは失礼かもしれませんが……最近、気楽じゃないです?」


「ええ……」


 少しだけ間があく。


「何だか、抜け出せないんですよね」


「それ、わかるわ」


 シリウスは疲れたように息を吐いた。


「今日も研究所で面倒なことがあったんです。


 もう辞めてやるって、何度思ったことか……」


「……シリウス、辞めてもいいとは思うけど。


 でも、今の研究、好きなんでしょう?」


「……だから辞めません」


 即答だった。


 私は少しだけ笑う。


「エレノア嬢はどうなんですか? ルーカス様とは」


「進展はなしね。


 でも、あんなイケメンにぐいぐい来られたら、普通は揺れるでしょう?」


「まあ……それはそうでしょうね」


「殿下は?」


「ああ……いつも通りよ。邪魔しに来るわ」


「……嬉しいんじゃないですか?」


「さあね」


 私は肩をすくめた。


「だって、この前なんて、ミレイユ様と殿下がくっつく夢を見たのよ」


「いや……そうかもしれませんけど」


「でも、殿下ってマリアベル様みたいなタイプが好きそうじゃない?」


「……エレノア様が、そう思ってるだけでは?」


「だって、ミレイユ様って清楚系ヒロインでしょう?」


「確かに……」


 シリウスは少し考えるようにしてから、小さく笑った。


「それでも殿下が追いかけてるのは、エレノア様ですよ」


 私は少しだけ視線を逸らした。


「……目に入ってないだけかもしれないけど」


「どうでしょうね」


 そして、シリウスは疲れた顔に戻る。


「それより、僕は研究所の仕打ちの方がきつくて……」


 二人で同時にため息をついた。


「……似てるかもしれませんね」


「かもね」


 シリウスが少しだけ呆れたように笑う。


「っていうか……もう答え、出てません?」


「……どうかしらね」


「まあ、様子見でもいいとは思いますけど」


「そうね」


 シリウスも、エレノアも。


 お互い、同じことを思っていた。

ここまで読んでくださってありがとうございました。


少し静かな距離感の回でした。


気づけば話すようになって、

気づけば頼るようになっている。


恋なのか、安心なのか。

まだ本人たちも、ちゃんとわかっていないのかもしれません。


でも――

「楽な相手」というのは、案外危ないものですよね。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ