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婚約破棄した悪役令嬢、騎士団推し活を始めたら王子の執着が止まりません  作者: ZERO POINT


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第14話 推し活の時間に、殿下の花束が届きました

 さらに、そこからのルーカス人気の爆上がりはすごかった。


「ルーカス様、ありえないほど素敵ですわ!」


「わかります!」


「いや、でもシリウス様も捨てがたいですわよ!?」


「それですわ!」


「知性派もいいですもの!」


 令嬢たちはすっかり盛り上がっていた。


 ケーキと紅茶を囲みながら、推しの話に花が咲く。


「こうして推しの話をできるなんて――」


「至福の時間ですわね」


「本当に」


「最高ですわ!」


 きゃあきゃあと楽しそうな声が部屋に響く。


 ――その時だった。


「エレノア様へ」


 使用人が花束を持って現れた。


 嫌な予感がした。


「殿下からです」


「……」


 私は無言で花束を見る。


 青い花。


 一瞬だけ、胸が揺れた。


 ――が。


「げっ」


 思わず声が出た。


 令嬢たちも一斉に顔をしかめる。


「やっぱり邪魔ですわね」


「タイミング悪すぎですわ」


「今いいところでしたのに」


 私はため息をついた。


「……本当に」


 私は花束を見つめた。


 青い花。


 ――昔と同じ。


 ほんの少しだけ、胸が揺れる。


 ……でも。


「いらないわ」


 私はあっさり言った。


 令嬢たちが一斉に頷く。


「そうですわね」


「今は推し活の時間ですもの」


「邪魔は困りますわ」


 ミレイユも真剣な顔で言う。


「推し活の優先順位は高いですから」


 私は思わず笑った。


「そうね」


 花束をそっとテーブルの端に置く。


 視線を逸らすように、紅茶を口にした。


「……ルーカス様の話、続きましょうか」


「ぜひ!」


「聞きたいですわ!」


「次はどこが素敵でしたの!?」


 一瞬で空気が戻る。


 きゃあきゃあと、また賑やかな声が広がった。


 ――その横で。


 青い花だけが、静かに揺れていた。


 私はそれを見ないふりをした。


 ……どうして、今なの。


「エレノア様、大丈夫ですか?」


 ミレイユが心配そうに覗き込んだ。


「ええ、大丈夫よ」


 私は軽く笑う。


「少しだけ、考え事をしていただけ」


 マリアベルが、ふと口を開いた。


「エレノア様、殿下はエレノア様のことがお好きなんですね」


 私は首を振る。


「どうせ、破棄するって言っているからよ」


 マリアベルは静かに言った。


「そんなことないと思うわ」


 私は少しだけ目を細める。


「それに殿下には、マリアベル様のようなかわいらしい方が似合っていると思うのよ」


 そう言って、ミレイユをちらりと見る。


 見た目は、どう見ても清楚系ヒロイン。


 でも――中身を考えると、むしろマリアベルの方が王子妃らしい気がした。


 ……変わるのかしら。


 少しだけ、そんなことを考える。


 でも。


 私が選ばれることはない。


 それくらいは、わかっている。


 ――なのに。


 胸の奥が、少しだけざわついた。


 ……おかしいわね。


 ……どうして、少しだけ気になるのかしら。


 でも。


 清楚系ヒロインがミレイユだと知って、少しだけ安心している私がいた。


 そんなこと、思ってはいけないのに。


 私は小さく息を吐く。


 でも、そのうち殿下は諦める。


 私がこんなことをしているのだから。


 他の男を推している令嬢なんて――きっと、願い下げだと思うはず。


 それでいい。


 その方が、お互いのためだ。


 ……それなのに、どうして少しだけ寂しいのかしら。


「ミレイユ様は、どうして推し活を?」


 私が聞くと、ミレイユはぱっと笑った。


「私、自由に恋がしたいんです」


 まっすぐな声だった。


「決められた相手じゃなくて、自分で選びたい」


 少しだけ頬を染める。


「それに――できれば、イケメンと結婚したいです」


 あっけらかんと言って、にこっと笑った。


 マリアベルが静かに続ける。


「私も、同じです」


「本当にいい人がいたら、その方と恋愛をしてもいいと思うんです」


 優しく言葉を選びながら話す。


「自由じゃありませんか」


「それに、色々な方を見ることも大切だと思います」


 少し視線を遠くに向ける。


「身分ではなくて、本当に好きな方と結ばれたいんです」


 小さく微笑む。


「少しくらい、夢を見てもいいかなって」


「別に、不満があるわけではありませんけれど」


 そして、ふっと表情を緩めた。


「それに――格好いい殿方を見ると、癒しになりません?」


 私は思わず頷いた。


「わかります」


 私はカップを見つめた。


 私は――誰かに決められる恋じゃなくて、自分で選ぶ恋がしたかったのかもしれない。


 でも、私は殿下のことを最初から……。


 お互いが選べるような恋がしたかったのかしら。


 読んでいただきありがとうございます。


 今回は、推し活令嬢会議がかなり盛り上がりました。


 ルーカス様派。

 シリウス様派。

 令嬢たちの推し語りは止まりません。


 そんな空気の中で届いた、殿下からの花束。


 エレノアは「いらない」と言いながらも、やっぱり少しだけ揺れてしまっています。


 一方で、ミレイユやマリアベルの「自由に恋がしたい」という考え方も見えてきました。


 推し活をしているはずなのに、少しずつ恋愛の話になっていく令嬢会議。


 果たしてエレノアは、自分の気持ちに気づくのでしょうか。


 次回もよろしくお願いします。

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