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八拳演義 – A Saga of the Sky-Color Warrior Girl ~記憶喪失の武術少女・空(クー)は、自分探しの旅を始めました。~  作者: 旅わんこ
プロローグ 湖水地方にて ~ 第十三章  湖水地方で家(その他)、建てます
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第十三章 湖水地方で家(その他)、建てます ~修行もほどほどにと言われてしまいました。~

「行きます、八極小架。……はっ!」


 その頃、大使館。

 アシュレイは寝ぼけ眼で魔導コンロでスープを作っていたのだが、スープをレードルで掬い上げてカップに注ごうとしたところで『ドン!』と言う地鳴りを感じて「敵襲!?」と叫んでライフルを持って大使館の外に出たのだが。

「あれ? 大砲もないし砲弾が直撃した様子もない。一体どうしたのかしら?」

 だがその途端、再びドンという衝撃が響いてきた。アシュレイはそちらを見やるのだが、何かが崩落した様子や獣が襲ってくる様子もない。

「じゃあ一体何なのよ……? って、ピエリーナちゃん?」

 領主邸の裏側に、立ち尽くすピエリーナの姿があった。

「ねえ一体何が起こってるの? って」

 四角く地均しされた場所で、空は八極拳の套路をしているのだが、その際に強く地面を踏み鳴らしている。これは一体何なのだろうか。套路を終えた空に、アレットが尋ねる。

「あの、空。今までの八極拳の修業でそんな動作やってなかったッスよね? これはどういう意味があるッスか?」

「はい。この足を強く踏み鳴らす動作を『震脚(しんきゃく)』と言い、足を鍛えるためにしているのではなく、『地面の反発力を拳に伝えるため』、そして『重心運動の結果衝撃的なステップとなる』と言った方がいいでしょうか。今までこの震脚を用いない修行をしていたのは、未熟な筋骨だとただ足を痛めてしまう恐れがあることと、単に近所迷惑になるからです。それに目的は攻撃ポイントにすべての勁力を乗せることにあるので、いつもいつも震脚などする必要もないのです。試しに……」

 そう言って、空はアレットに『ピーカブースタイル(両腕によるガード)』を取るように言い、空はそのピーカブーの外側から右半身全体を強く押し当てた。

「今、わたしはゼロ距離から筋肉の力だけでアレットに体当たりしました。アレット、どうでしたか?」

「うーん、それなりに強かったッスが、耐えて耐えられないレベルではないッスね」

「わたしもそれなりに力いっぱい体当たりしましたが、これが限界です。では次」

 そして空は再びアレットにゼロ距離から右腕全体での体当たりを仕掛けたが、今度はアレットも耐えるどころではなく思い切り吹っ飛んで雪に沈んでしまった。

「ぼぁっ!?」

「え!? クーちゃん、今の何!?」

「魔法や陰陽術でも使ったようでござる!」

「アークルの反応はないのです。クリスさんと戦った時のように、ゼロ距離アタックを仕掛けたと言うことなのです!?」

 そしてアレットも、やわらかい雪の中でうめいて何とか立ち上がって「すげえ威力ッス!」と空の元に戻ってくる。

「でも今、震脚とやらはしなかったッスよね?」

「震脚は、先述の通り重心運動の結果です。攻撃は、横方向の運動エネルギーと縦方向の運動エネルギーが合わさること、すなわち『合力(ごうりょく)』で攻撃力は強くなり、つまりアレットを吹っ飛ばしたのは合力と言うことです。今と同じことを套路で披露します。……八極拳、『頂心肘』!」

 空は正方形のフィールドの中でエルボーアタックを披露。一見するとこれまで戦いの中で見せた技のひとつだが。

「分かったわ! 震脚とは修行の中で技を鍛えるのに自分自身を支えるためにどうしても発生するもので、戦いの中で震脚が起こらないのは震脚が発生するのと同じエネルギーが敵に伝わるから、と言うことね!」

「だいたいそうです。もちろん、震脚に耐えられるだけの筋骨を鍛える『熊歩(ゆうほ)』という」

 その時、ひまりが一歩大きく踏み出して右手刀で宙を切り裂いて地面を踏み鳴らした。それはまるで空の震脚のようでもあるのだが。

「剣術の稽古の中にも敵中に一気に飛び込んで技を繰り出すための足運びがあり、ヤマトの武術では『踏鳴(ふみなり)』と呼んでござる。一時期この動作に憧れたものだが、何も知らずに音だけ鳴らせば足を壊すのみ。きちんとした攻撃力の運用の結果、震脚も踏鳴もついてくると言うことでござるな」

 通じるものがあるようで、空とひまりは視線を交わすと「なかなかやるな」と言いたげに笑い合う。だが何も知らない状況で砲撃の被弾にも近い音を聞かされたアシュレイとしては朝から気に障る。

「修行も、ほどほどにねー……?」

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