第十三章 湖水地方で家(その他)、建てます ~ヤマトの子供は、こうして神を祀るとともに自分たちの聖域を得るのでござる。~
開拓がひと段落着いた頃には秋の終わり。
冬を迎え、雪が降れば四人は領主邸に引きこもるようになる。
「何とか魚や動物たちを狩って大型の野菜を育てて保存食にし、このまま引きこもっても春までは何とかなりそうなたくわえはできました。しかしアッシュランドの時のようにまた引きこもり生活が待っていると思うと、少し憂鬱になりますね」
「然様にござるな。雪や寒さは人から行動力を奪ってしまう。しかし、雪には雪の面白さがござる。そこで、この季節にしかできぬ建物を建ててみたいと思うのでござるが」
そして二日掛けて、四人が領主邸前に建造したものが。
「これが、ヤマトの『かまくら』ってやつッスか?」
「とてもかわいいおうちができたのです!」
雪を集めて固めてできた雪の塊の内部を掘って作った建物である。
「然様。ヤマトの降雪地帯に古くから伝わるもので、正月の伝統行事にござる。暦の上、まだ正月には遠いでござるが、このような祠を作って水の神様を祀り、子どもたちがこの中で餅や甘酒を楽しむと言うものでござる。つまりは神事にござるな」
「ヤマトにはそんな風習があるんですね。なんだか隠れ家や雪中キャンプみたいです」
「幼き頃、拙者もそう思って楽しんだものでござる。雪の季節だからこそ楽しめることもあると言うもの。どうでござろう、ここに魔導コンロを持ってきて、栽培中の『雪中キャベツ』をここで皆で味わうと言うのは」
「ありありッスね! そうと決まれば!」
こうして、魔導コンロと鍋でキャベツとスライスした肉を互い違いに重ねて茹で、塩コショウと数種類のハーブで味と香りをつければ『雪中キャベツミルフィーユ鍋』の完成である。
「でも、かまくらは料理の熱で溶けないのです?」
「頑丈に作ったのでござる、この程度の熱で崩れることはないでござろう」
「理屈から言うと、内壁となる雪が暖められても本体がその熱を吸収して地中や外に逃がしてしまうから、そう簡単に雪でできた建造物が崩れることはないッスね。ただ、熱の伝導速度よりかまくら内部の温度の上昇速度が上回れば話は別ッスが」
「キャンプファイヤーしなければ安心安全、と言うことですね。では厳かに楽しむとしましょう。ところで、祭壇を設けると言う話でしたが」
「そうでござったな。ではレアガルド伝記の八英雄に酒を捧げることで神事といたそう」
そう言ってひまりはレアガルド伝記の書と酒の瓶と湯呑を人数分持ってきて、この書を残した吟遊詩人とリールー・ジグラスの父に酒を捧げ、杯を掲げて飲み干した。
「雪中で飲む酒も美味でござるな」
「そうですね。キャンプとはまた違った特別感を抱きます」
すると、そんな四人にアシュレイは大声を上げて駆け寄ってくる。
「なんかすごく楽しいことをしてるんだけど!? どうしてあたしのこと誘ってくれなかったのよ!?」
「いえ、誘いましたけど返事が無かったので、書類仕事にお忙しいのだろうと」
「爆睡してたわよ今の今まで! だってやることないんだもの! 今からでもいいわ、あたしにもそのお酒ちょうだいな!」
「構いませんけど、アシュレイさんがこの時間まで爆睡するなんて珍しいですね」
アシュレイは顔を赤くして口をつぐんだ。
――言えるわけないじゃない。せっかくの大使暮らし、趣味のマンガ本を夜遅くまで読みふけっていたなんて。
しかもそれが、男性兵士もドン引きのいかがわしいBLものだなど。
翌日。
空は領主邸の裏の雪を掻きだし、20キュビト四方の地面をむき出しにした。それを地均しハンマーで叩き続けること一日、一体何をしだしたのかと仲間が見守れば、空は「ここを武術の修業場とします」と言い出した。
「領主邸内で武術の修業をしようものなら、ちょっとした不注意で壁や家具を壊してしまいます。かと言って畑のそばで練習すればいいと言うものでもなく、不用意に地面を踏み荒らしてしまうだけです。そこできちんとした練習場を設けておけば、武術の修業に集中できるのではないでしょうか」
「なるほど、そう言うことでござるか。であれば拙者らも誘えばよいではないか」
「ただの思い付きですので、『まず隗より始めよ』という言葉がある通り、『思いついた者がアイデアを実行に移さねば、あとに続く人を集めることができません』。これがうまくいきそうだと踏めば、改めて助力をお願いします」
「そう言うことだったんッスね。だったら『一蓮托生』って言葉もあるッス。空の考え、ぜひ自分らにも手伝わせてほしいッス!」
「もちろんなのです!」
「分かりました。ではまず、地均しを徹底的に行いましょう。
夜までかけて地均しをし、翌日地面の硬さを見て空は八極拳の套路を行うのだが。
「行きます、八極小架。……はっ!」




