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エピローグ 祝福 ~解決は始まりに過ぎないようです。~

 空たち帰還の夜。

 フォーマメント州領主邸、ホール。

 来客用のテーブルを広げ、ライノックが議長の緊急会議が開かれた。とは言ってもここは領主邸。『上座』に空、アレット、ひまり、ピエリーナが掛け、議長であるライノックが角にある席にかける形となった。

「さて諸君。お集まりいただき誠に感謝する」

 ライノックはホールに用意されたテーブルを見渡す。

 領主である空たち4人はもちろん、勇者アルスパーティーメンバーである勇者アルス、彼の妹のリィン、槍使いゴールドメイル、魔法使いフリューゲル、双剣士ジョン、メイドのリューンとヴィント、王子フォレスト、冒険者ヤカ(署名の使者として)、海軍少佐クリス、そのほか王国議会及び陸海軍の要人(陸軍大使アシュレイ、陸軍庁長官レイン、保安庁長官シヴァなど)がいる。

 その中で、ライノックは言った。

「諸君らは覚えているだろうか? パダーノ共和国を中心としてエイゼル大陸西方各国各地に各種詐欺行為を働く『カリオストロ協会』に対抗するために組織された議会、『カリオストロ対策臨時議会』が、大倭皇国やアルビオン諸島連合王国ら世界中に強制行政の署名を募っていた件を。

 ここにいる、そしてここにいない諸君らの働きのおかげで議会は必要な署名を集め、これとともに『カリオストロ協会強制解散を目的とする対抗臨時議会による強制行政要望』をパダーノ共和国議会に提出し、交渉の果てに我々の要求を通すことに成功した。

 だがここからが本番である。我々臨時議会は調査隊とともにパダーノ共和国へと踏み入り、共和国議会非介入でカリオストロ協会の活動拠点と目される場所をすべて調査した。その果てに、詐欺事務所4件、違法武器製造工場3社、違法錬金術工房7社を摘発することができ、この事実をパダーノ共和国議会に叩きつけて彼国の不明を問うことができた。

 これに至るには諸君らの署名活動があってこそ。諸君らの働きをたたえるとともに、心からの感謝を申し上げる。パダーノの悪徳商業を解体したことによって、カリオストロ協会の力を大きく削げたのは間違いない。

 しかしカリオストロやその取引相手だけが悪ではない。また人間だけが脅威ではない。王国政府は盗賊や悪徳商業などがはびこらぬ国作りを常に模索している。クマやオオカミ、ブラックボアなどの害獣からの人的・産業的被害を減らさなければならん。よって皆には、これからもこのレアガルド王国の民を守るべく尽力し、王国議会への協力を引き続き要請したい。長くなったが、吾輩からは以上である」

 その時、領主邸のドアが開いて何者かが口をはさんだ。

「それで終わりかな? まだ話は終わりじゃないだろう」

 そこにいたのは、アレットとシェリングフォードの師匠、シャーロック・ホームズであった。

「シャーロック氏! いえ師匠! どうしてここに!?」

「なーに。アーサー・コナン・ドイルの新作のシナリオが完成したのでね、農家仕事はお隣さんに頼んで遊びに来てしまったよ。はっはっは!」

 その時、一同は唖然となった。

 名探偵ホームズがまさか実在していたなんて。そしてハンティングハットとインバネスコートではなくなんだかよれよれのオーバーオールの『農家のおじさん』ではないか、と。

 だがライノックは「そうだな」と頷いた。

「実は言おうか言うまいか悩んでいたのだが……。カリオストロ協会の活動拠点は可能な限り解体した。しかし、カリオストロ二世ことフランソワ・バルサモの行方をつかむことはできなかったのだよ」

「愛弟子にちょっと会いに来たつもりが立ち聞きする形となってしまったことをまずは諸君らに詫びよう。だがそういう大事なことを話さないと信用を失いませんかね、陛下?」

「反論もない。カリオストロ問題にひと段落ついたことを喜んでもらいたと思ったのが、裏目に出たかな」

 そう言うライノックに、アレットは「今更ッス。どこまでもカリオストロ対策に協力させてほしいッス!」と答えた。それは空、ひまり、ピエリーナも同じであった。

「感謝が尽きないよ、まことに」


 臨時集会解散後。

 ライノックは息子フォレスト、アマト・ハリス、護衛とともにイハトヴのコテージに泊まり、イハトヴの従業員たちもすべての仕事を終えて床に就く。ひまりとピエリーナ、そしてアルスパーティーの仲間も夜遅くまでビールを飲みかわし、空はブレスとともに領主邸ウッドデッキのハンモックチェアに腰掛けて夜空を見上げる。そこに、アレットとアルスがやってきた。

「やっほ、空。いろいろ忙しかったッスからね、今夜と明日くらいはゆっくりするッス」

「ええ、お互いに。アルスにも会いたかったですよ。はい、ブレスをお預けします」

「ありがとう、そしてお疲れさま。よーしよしよし、パパですよ~」

 ブレスは父の顔を見てはしゃぎ、その様子を空はいとおしげに見守る。その向こうでは、愛弟子に会いに来たはずのシャーロックがヤカとクリスを相手に酒盛りをしている。

 そして、空は湖を見て思いを馳せる。

「アレット。ヤマトには、桜と言う植物があるそうです」

「ん? あぁ、話には聞くッスね。モノクロ写真なら見たことがあるッスが」

「ヤマトにとってそれは国の誇りである木のようで、春、ちょうど今の季節に国中で満開になってヤマト国内外の人々に感動を与えるそうで、『花見』と言う開花と年度の節目を迎える文化もあるようです。このイハトヴでも、集客目的はもちろん、厳しい冬を乗り越えて迎えるあたたかい季節を、桜に祝っていただきたいと思いませんか?」

「いいッスねえ。桜の植樹のためには、もっと稼がないと!」

「ええ。そしてそれはブレスが大人になるまでには完遂したいですね」

 空の目に映るのは未来の景色。

 自分、夫アルス、娘ブレス、旅の仲間アレット、ひまり、ピエリーナ、そして親しい人々とともに新しい季節を祝う、その日を夢見る。

 幻想としての夢ではない。目標としての夢を見る。


 ――ブレス。

 ――この地に桜が咲く頃、あなたはどんな素敵な女の子に、そしてレディーに成長してくれるのでしょうか。

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