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第三十章 進撃の八卦陣 ~華麗な踊銃ごらんあれ、なのです!~

「八卦陣、『防衛姿勢』! 肉弾戦に向かない冒険者を守護しつつ、撤退準備を整えてください!」

 だがそんなフォレストに、猛焔が意見した。

「そいつは聞けねえな。そんなんじゃクマのホムンクルスには勝てねえよ」

「だったらどうすると!?」

「戦うに決まってんだろ。あいつらは単体でなら人間以上の力を持ってるが、戦略はないし武器も持ってない、戦闘本能で生きる畜生だ。勝機はある!」

 そう言って、猛焔はジャケットの中に隠し持っていた『三節棍(さんせつこん)』を振り回し、鎖を棍棒内部にしまう形で一本の槍にしてしまった。

「『進意大槍(しんい たいそう)』、『(ラン)、『(ナー)』!」

「わたしも続きます! 『八極行者棍(ぎょうじゃこん)』、『舞華(ぶか)』!」

 猛焔は槍を内払いと外払いでつかみかかってくる狼たちを振り払い、「『(チャー)』!」で一突きにして葬り去る。空は槍の中ほどを持って華麗に振り回し、飛び掛かるオオカミや地を這うコモドドラゴンを薙ぎ払ってゆく。

「やっぱやるなぁ、空!」

「あなたも、なかなかの槍捌きです。しかし本来ならフォレスト殿下の了承を得なければならないところを勝手に出てきたのです。あとでわたしと一緒にお叱りを受けましょう」

「緊急事態だっつーの」

「それは分かりますが、殿下にも殿下のお立場と我々にも我々の命令順守義務があるわけで。さて、いよいよそんなことを言っている場合では」

 空は襲い掛かってくるライオンの頭を突いて黙らせた。

「なくなりましたね!」

 そして、アルスとピエリーナも参戦した。

「僕たちも戦う。殿下の了承は得た」

「お前ら……。ああ。一緒に戦うとすっか」

「ええ。かかります!」

 そして、ピエリーナはすべてのアークルバレット用カートリッジに『オーバードライブ』の魔術を付与した。ただの対人戦闘用ではない、凶悪な獣を一撃で確実に駆るための『超々圧縮アークルバレット』を繰り出すためのものだ。

「私も、この二丁拳銃で戦うのです!  ……『つかめムーブメント、譲れないフィールド、両手で響くよリズムとビート! 銃弾たちよ流れ星となれ。未来へいざなう道標であれ!』 戦場は私の晴れ舞台。華麗な踊銃(ようじゅう)ごらんあれ!」


 そして、空たちは襲い掛かる猛獣のホムンクルスと対峙した。

 生命体としての純度は高いのか、前のホムンクルス戦のように形象崩壊して緋色の液体になることはない。だが戦いの場に生きる冒険者もゾンビものが大嫌いな者もいる(ピエリーナがそのうちのひとり)。まだ獣の姿を保って倒れてくれた方がありがたい。

「八極行者棍、『舞華』! 六合大槍、『扎槍(さっそう)』!」

 空は槍を振り回して薙ぎ払い、敵を牽制したところで突いて敵を撃つ。技の切り替えにも無駄がなく、一瞬にして多くの敵を地に沈めるその様は、『強力でありながら華麗』の一言に尽きる。

 猛焔も負けてはいない。

「ちっ。三節棍にゃろ折れちまいやがった。安物ダメだなー。しゃーねえ! 鈀子拳(バ・ヅ・チュアン)、『降龍(こうりゅう)』!」

 八極拳にも存在するその技は、『冲推』と並んで鈀子拳の基本技。技としては上段パンチ。斜め前に踏み出し敵のストレートパンチを回避しながらの技だが、猛焔は飛び掛かってくるオオカミのあご目掛けて繰り出した。

「動物虐待、好きじゃねえんだよなー……」

 後味悪そうな表情でそう言いながらも、猛焔は立て続けに襲い掛かってくるホムンクルスたちを仕留めてゆく。猛焔、本当に根っからの悪党ではなさそうだ。

 そしてアルスも、もう出し惜しみはしない。持てる力や能力をすべて解き放ち、剣ではなく拳を以って脅威を払う。

太陽手(ティダヌティー)、『太陽拳(ティダメーゴーサー)』!」

 『ライトアームズ流身体強化魔術』によって繰り出される拳打の威力はすさまじく、クマのあごに一撃食らわせるだけでそれは気絶してしまう。それどころか歯が砕け散り、血まみれの歯の破片が戦場に転がってしまう。

「勇者って言ったらやっぱり剣なんだけど、僕はやっぱり豪快なストレートが性に合ってるかな? もいっちょ!」

 そう言いながら再び太陽拳をクマのホムンクルスに繰り出すのだが、それはほかのホムンクルスを巻き添えにしながら遥か後方に吹っ飛び放置されたフォークリフトのフォーク部分に突き刺さって全員まとめて絶命してしまった。

「おいおい勇者が労災引き起こしてんじゃねえよ。労基来んぞ」

「猛焔、あれ労災って言わないだろ」

 互いに軽口をたたく。

 ピエリーナは、一切の敵を自分に近づけさせない。

「『ガン=カタVer.2(バージョンツー)』、『ダンシング・ディバイン・ダブルアクション』!」

 ピエリーナはまるで戦場で踊るように二丁拳銃による銃撃を繰り出す。ジェフリーより舞台用武術としてガン=カタを習っていたが、その技をかつて習っていたバレエに融合させることでガン=カタは進化していた。

 動物型ホムンクルスはまだまだ湧いて出る。それらは空やピエリーナ達ばかりでなく八卦陣にも向かうが、防弾ガラスが攻撃魔法要員を死守しつつ遠距離攻撃のピエリーナが駆逐すると言う形で着実に数を減らしてゆく。

「ピエリーナさん、助かります!」

「フォレスト殿下もご無事で何よりなのです! こんなのすぐに片付けちゃうのです!」

 アークルバレットのアークル圧縮度を高めても、さすがにクマだけは一撃では仕留められない。ピエリーナはそれさえ織り込み済みで、華麗なるフットワークでクマたちの襲撃を回避しつつさらにアークルを圧縮された必殺の一撃を見舞って二射目で確実に葬る。これもまた冷静な判断力と確かなフットワークと狙撃力のなせる業だ。

 ジャキッと両手で拳銃を構えるピエリーナ。空たちの活躍もあってだいぶ数は減った。だが。

「ピエリーナ、背後です!」

 空が叫ぶ。何とピエリーナの背後に、最後の一体であるクマ型ホムンクルスが襲い掛かっていたのだ。

「ありがとうございます、空さん!」

 それでもピエリーナはバレエ由来の旋回でクマの襲撃をかわし、ウエスタンコートをひらりと翻しながら二挺の拳銃をクマのホムンクルスの頭に向けた。

Catch you(捕まえたのです)!」

 アークルが超圧縮されたアークルバレットが繰り出された。青白い閃光がクマの頭をうがち、傷口からは血が流れ出るどころか焼け焦げて煙を噴き出している。それでもピエリーナは最後まで気を抜かず、銃の機械音を響かせながら眼前に左手の銃を、頭上に右手の銃を構えて周囲を警戒。自分や仲間たちに襲い掛かるホムンクルスのなきことを確認し、構えを解いて終戦を確信した。

 見事な戦いぶりを披露したピエリーナ。そのピエリーナの立ち振る舞いに、アルスも猛焔も驚きと感心の様子で称賛した。

「やはりすごいな、ヒナギクちゃんは。全方位対応、そして立ち位置取りも攻撃も正確すぎだ」

「ああ。見た目可愛いのに何と強い、さすがは俺を倒した娘だ!」

 そして空も。

「はい。ピエリーナの遠距離攻撃は戦力バランスを一気に崩す、戦いのかなめですから。……でもセンスがガムランさんです」

 この四人のおかげで、すべてのホムンクルスは片付いた。

「あとはヴィントです。どうかあの非常識な兵器を止めてください!」

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