表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

223/242

第三十章 進撃の八卦陣 ~敵陣突入なのです!~

「なんだ、あいつ? ラクダに乗って単騎突っ込んでくるぞ!? たったひとりで自爆する作戦か!?」

 そしてその人物こそ、ガムランであった。

 社屋に向かう車両の一群は誰もが、そして車両さえも武装している。陸軍長や保安庁のお偉方の視察などではない。制圧に来ている。社長の男は、雇っている警備兵とゴーレム作業員、そして戦闘訓練を積んだ社員に通達した。

「戦力を有する者は敵を制圧せよ! 最大火力を以って駆逐するんだ! おのが役目を果たせ、ボナパルト重工業、そして救国の旋律団の名に懸け、閣下の御為に!」

「閣下の御為に!」

 真っ先にタービュランスに襲い掛かってくるのは、警備兵が駆る軍用バギーとそれに搭載されたガトリングガンの銃弾。だが先陣を切るガムランは防弾ガラスシールドを斜めに構えて突進、すべての攻撃を防ぐ。そのシールドの下部には『そり』が、上部には『ヤマトの凧に付けられる足』が装備されており、ちょっとやそっとの刺激でそれが姿勢を崩すことはない。

「ちゃちいな! そんなもの、先の大戦で『剣林弾雨』を潜り抜けたこの俺の恐れるところではない!」

 バギーとの距離が縮まったところでガムランはラクダから飛び降り、そりを足元のワンタッチロックを蹴って解除、そのままシールドを投擲して敵車両ガトリングガンの根元を破壊してしまった。

「……は?」

「バーカ!」

 ガムランは滑り続けるそりに飛び乗って跳躍し、バギーの運転手の肩を強く踏みつけてへこませた。それは以前、アルミスセントラルに流れ着いたばかりの空が脱走犯の運転手に向けた一撃でもあった。

「空、技借りたぜ!」

「あ、どうぞ……」

 遥か後方、空は唖然となっていた。

 ガムランは次々襲い掛かる軍事バギーを仕留めていった。時に敵から奪ったライフルを構えて敵車両のタイヤをパンクさせ、窓ガラス越しに敵の頭を射抜き、敵の弾道を見切って回避してストック(肩当て板)を叩きつけて黙らせ、ライフルをシールド代わりに最後の車の進行を阻止した挙句片手でフロントバンパーをつかんで持ち上げ、ついには続く敵歩兵部隊に投げつけてしまった。

 空は言う。

「皆さんご覧ください。あれがわたしの八極拳が通用しなかった男です」

「えーっと、彼は伝承の『鬼』ってやつですか?」

「ドラゴン殺しと語られる、神話のジークフリートも真っ青なのです」

「ははっ。僕が敬愛する空が手も足も出なかったというその真髄があれとはね」

「おい勇者。何どさくさ紛れで師匠に向かって愛するとか言ってんのさ」

「いや違……」

「しかしガムランさんが味方で心強いです。タービュランス、進撃を止めてはなりません!」

 だが、ガムランは数人の歩兵隊を薙ぎ払ったところでシールドを拾って後退した。彼の背には弾痕が刻まれ、傷口からは血が流れている。どうやら。

「砂で足がもつれた。一発被弾したようだ。少し休ませてくれ、すぐに追いつく」

 しかもガムランは右手で傷口をえぐり、痛みも何のその弾丸を素手で摘出してしまっていた。これには誰もが絶句どころか蒼ざめて引いていた。

「だだっ、ダメなのです、撃たれたのですから休むのです! これポーションなのです!」

 ピエリーナは、蒸気駆動車荷台のフレーム越しにガムランにポーションの瓶(頓服薬と軟膏の二種類)を手渡す。

「恩に着るぜ、ピエリーナ。さあ、お前たちの出番だ。負けるんじゃないぞ!」

「承知なのです。空さん、フォレスト殿下!」

 そしてガムランを除く臨時冒険者パーティー・タービュランスは、ボナパルト重工業に向かって突進してゆく。懲りることなく湧いて出る戦闘要員や武装ゴーレムなどを薙ぎ払いながら。

「隊長、お大事にーっ!」

「おう! ガムラン冒険隊も頑張って来い!」


 ボナパルト重工業、社屋。

 空たちは圧倒された。

 かつてアームド・アイアンゴーレムが製造されていた工場建屋では、とんでもなく巨大なものが鎮座していたのである。

「鋼鉄の、牛……!?」

 ボナパルト重工業が製造していたものは牛型ゴーレムであった。しかも。

「背中の大砲は何なのです!?」

 その牛型ゴーレムは、左肩に錬成炉(アタノールリアクター)、右肩に巨大カノン砲、臀部及び両後脚腿部(こうきゃく たいぶ)に冷却ファンを搭載している。それらすべては魔導ケーブルや蛇腹ダクトなどでつながっている。

 動揺する冒険者たちに、爆死した使者と同じ黒衣に身を包み武装した社員と共に牛型ゴーレムの前に陣を構えた、社長『シヤン・ド・ギャルド』は言った。

「冒険者諸君、ようこそ弊社へ。だがカン・ディグラックの暁鐘(ぎょうしょう)、そして『グガランナ』を止めようとする者、何人たりとて許さぬ。貴様らの命運、ここで尽きん!」

 グガランナ、それが牛型ゴーレムの名であろう。

 そう言い放つギャルドに、フォレストは王子らしく強気に笑って答えた。

「冗談を。ここで尽きるはあなたたち救国の旋律団の、そしてカリオストロ協会のたくらみです。国や人々を守るためなら、兵器開発大いに結構。しかし文字通り命を食い物にする兵器の存在だけは、許しおくことはできません。さあ戦争(政治)の始まりです。総員、覚悟!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ