第三十章 進撃の八卦陣 ~臨時冒険者パーティー『動乱の嵐(タービュランス)』、結成!~
冒険者ギルド・エルメスカウンター新庁舎ホール。
キングスレイは言う。
「さて、この度カリオストロ協会が開発した、そして今後運用するであろう兵器を説明するために、アレットやピエリーナちゃんがお持ちのアークルバレットについて説明しましょう。もはやその兵器は、その『アークルバレットの超々々々巨大版』と言ったところでしょうから」
まず、アークルバレットについて。
アークルバレットはその名の通り、生命因子/魔力をエネルギー弾として出力するものである。それを制御するのが銃弾の『薬莢』に当たるパーツと魔導クリスタルコア、必要に応じてシリンダーに刻む魔術式である。それは銃弾に込めるアークルの量と圧縮度合で威力が変わり、ピエリーナは居酒屋のショーとして観客のいる店内で小豆球を撃ち落とす安全な芸から、戦場にて六発に込めたすべてのアークルを一発に集め更に圧縮することで殺傷能力を与え、アークルの光を散布して夜間の要救助者捜索に用いるなど、様々な使い方を披露した。
次に、そのアークルバレットをひとつとする『魔道具/魔導機器』だが、読んで字のごとく魔力=アークルを必要とするアイテムのこと。それはアークルを自らの意思で扱えないサーパスに多く使われ、そのエネルギー源は使用者そのもののアークルや、バイオ・アークルコンバーターと呼ばれるミジンコや藻からアークルを得るための水槽から得られる。農家では『サイロ』と呼ばれる牧草発酵貯蔵庫、酒蔵や発酵食品製造工場では樽や壺など、食品を発酵させるのに必要不可欠な乳酸菌をひとつとする各種菌類からアークルを採取する施設もある。
最後に、アークルバレットは拳銃を主な『インターフェイス』として依存しているが、それは鉛の弾頭を持つ通常の銃弾も同様である。またアークルバレットは魔道具であるため、弾丸としてだけではなくあらゆる使い方が可能である。しかしキングスレイが重要視するのは、戦争で人を殺傷するためにあるいは狩猟で獣を狩るために生み出された火器さえも、使い方によってはショーの道具へと転じることができ、逆もまたしかり、という事実である。
つまりキングスレイが何を言いたいのかというと。
「カリオストロ協会が開発を推し進めているこの兵器は、場合によっては福音をもたらし、本来の目的である兵器としては脅威でしかない、諸刃の剣なんてものではない代物だと言えることです。だからピエリーナちゃん」
「はいなのです、キングスレイさん!」
「あなたはアークルバレットをあなたの心に正しい使い方をしてくれている。そしてこれまでがそうだったようにこれからもそうあってくれると信じている。だからお願いだ。生命の源であるアークルを自分が生きるためではなく他者を殺戮するために使われる兵器を、どうか起動させないでくれ。きみの両手にある拳銃にかけて、悪しき力が振るわれることを許さないでほしいんだ」
「はいなのです!」
だがヴィントにはいまいちよく分からない。ピエリーナのアークルバレットの仕組みを理解して何になるのか。
それをキングスレイなりに最も分かりやすい言い方をすればこうなる。
「その兵器『カン・ディグラックの暁鐘』は、サンジェルマン伯爵が所有する森百個分のアークルを利用して、すべてを焼き払う火炎放射器を作ろうとしている、ということだよ」
「……ひっ、ひでえ」
兵器どころか錬金術や魔術に疎いヴィントでも、その兵器が外道極まりないことは十二分に分かったようだ。
そしてフォレストの目の前には、多くの冒険者たちが集った。
空、ヴィント、ピエリーナ、勇者アルスパーティー(戦力としてゴールドメイルも合流)+アルスの妹のリィン(パーティーに正式加入)、リューン、ロビン、ガムラン、ウェイガン及びガムラン冒険隊員、冒険者パーティー・進撃の狼(今度はタビトも参戦)、他エルメスカウンターに登録する冒険者パーティー合計五十名、そして凋猛焔。猛焔は陸軍の刑務所に送られるところを冒険者ギルドが戦闘要員として身柄を預かり、『今度の依頼を受けてくれたらギャラとは別に刑を軽くするよう掛け合う』と言って雇ったのである。
猛焔はフォレストに言う。
「せっかくもらった贖罪の機会だ、全力で応えると約束する。これでも傭兵だったんだ」
「ええ、よろしくお願いします。救国の旋律団、その先にいるであろうカリオストロの野望は、何が何でも阻止しなければなりません。あなたのお力をぜひ、我々のために」
「おうよ!」
フォレストと猛焔の握手は、一度外道に堕ちた者さえも改心と社会貢献の機会があれば更生すら可能であることを示した。
そしてフォレストは、集まった冒険者たちに向けて叫んだ。
「臨時冒険者パーティー『動乱の風』の進撃を、これより開始します!」
フォレストのひと声に、誰もが「おーっ!」と意気込んだ。ピエリーナたち銃士隊は銃器を頭上に掲げて花火を打ち上げていた。
その頃。
サンティーエ共和国とパダーノ共和国の国境付近。
『ゴーレム部隊配備基地・第二拠点』跡地。
パダーノ共和国に進攻しようとした痕跡として、ゴーレム製造工場『株式会社ボナパルト重工業』跡地、エネルギー切れで止まったゴーレム、人や動物の白骨がある。
終戦から十と数年、完全に誰からも見放されたと思われたそこに、砂色の外套をまとう者たちが行き来する。パダーノ共和国側からも大型トラックのタイヤ痕が刻まれており、まだその設備は生きていることが分かる。ボナパルト重工業跡地は、どうやら跡地ではなかったようだ。
だが何のために?
誰が運用しているのだろう?
そしてその主は、本来ならアイアンゴーレムを製造するはずの工場で着々と完成に向かう新型兵器を見下ろして微笑む。
「この大鐘が世界に福音を響かせる時は、近い」
臨時冒険者パーティー、タービュランス。
空の車の助手席にかけたキングスレイは、「はぁぁぁ……」と深いため息をついていた。




