第二十九章 白き石と新たなる刺客 ~命を冒涜する兵器、何が何でも起動させるものですか!~
たどり着いたのは、使者爆死地点。
随分と雪も積もっている。
空たち一同はスコップやスノーダンプ(スコップよりも大量に除雪できる人力除雪機)を手に、積もった雪を取り除いてゆく。地面や使者の死体が見えたら女性陣の仕事はここまで。キングスレイ、ガムラン、彼の冒険隊員、フォレスト(無理のない範囲で)は使者が所持していたであろう事件の手掛かりになりそうなものを追う。キングスレイが「これだ」と思うものを、空の魔導コンロで溶かした雪で空とピエリーナで洗ってゆくのだが。
「こういうことですよ」
キングスレイが手掛かりと思われるものを並べてゆくと、あるものが完成した。
「『制約の書』と『計画指令書』、なのです……?」
「あと『救国の旋律団』のメンバーズカードですか」
それは、聖書にも似たハードカバーによる本と、皮の紐で綴じられた紙束、そして秘密結社らしき紋章が刻まれたカード。紙切れの方はほぼ無傷だが使者の血に汚れていて、制約の書は『背』と呼ばれる細長い外部が破損していたため各ページをかき集めて復元するのが大変であった。メンバーズカードは、チタン製であったこともあってほぼノーダメージであった。
「そうですね。制約の書は見ない方がいいです。これは人を洗脳する文言が書かれているようですから。私でも危ない。重要なのは計画指令ですね。これには使者がサンジェルマン伯爵の拉致と空さんたちの抹殺のほか、次の段階の計画まで記されているみたいです。一度戻って装備を整えましょう。そして冒険者ギルドにも協力を仰ぎ、敵陣を制圧するんです」
「敵の本拠地が分かったのですか、キングスレイさん」
「ええ。ここにはもう用はないですよ」
「分かりました。フォレスト殿下」
「はい、空師匠! 皆さん、帰還の準備を!」
と仕切るまではよかったが、今度は助手席でリューンの抱っこを味わってしまった。
「やっぱり僕がガムランさんの車に乗りますうううううう!」
「……あれ? ハンドルをキングスレイさんに預けて、わたしが向こうに乗ればよかったのではないでしょうか」
遅い。
帰還後。
冒険者ギルド・エルメスカウンター。
カウンター長ヴェールの前に、使者爆死地点から見つかった彼の遺品(制約の書、計画指令書、救国の旋律団のメンバーズカード)が置かれた。制約の書には防弾防火ガラスケースと錠の厳重封印が施されている。
それらを見せつけられて絶句するカウンター長ヴェールに、フォレストは言った。
「ここから先は、王子またフォーマメント州開拓プロジェクトリーダーとしてではなく、『カリオストロの脅威から我が国を守る者』として冒険者ギルドに要請します。その前に、レアガルド、サンティーエ、シュトラルラント三国は『カリオストロ対策臨時議会』を結成しており、カリオストロ協会の犯罪行動の抑止と同協会の解散はもはや三国の悲願であることをご理解ください」
その堂々たるフォレストの振る舞いに、リューンは「ご立派になられましたね」と小さくつぶやいた。
「分かりました、フォレスト殿下。国家プロジェクトであれば全力でご協力いたしますが、共和国議会冒険庁にも詳細を」
「それが、キングスレイさんの推理通りならあまり時間はありません。まずはエルメスカウンターが自腹を切って冒険者を動かし、後日、臨時議会を通じて利子をつけて議会に経費の請求をしていただきたいと思います。この新型兵器の開発計画は、使者亡き今も着々と進んでいるはずなんです。費用請求要請には僕もサインしますので」
「分かりました。では、どのようなことが進んでおり、連中の計画の阻止にはどれほどの人数と火力が必要なのでしょうか?」
「はい。それですが……」
作戦を立てたキングスレイも会議と交渉に参加し、必要なもののリストをヴェールに提出した。
「分かりました。可能な限り用意しましょう」
「ありがとうございます。それではキングスレイさん!」
「ええ。今日は英気を養いましょう。冒険者の皆さんもお疲れのままで出撃させるわけにはいきませんからね。……それにしても」
使者の遺品である計画指令書に書かれている兵器は恐ろしいものであった。
そしてキングスレイはつぶやく。
「こんな命を冒涜する兵器、何が何でも起動させるものですか……!」




