第二十八章 双方の決闘 ~ボクはサンジェルマン。よろしく頼むよ。~
冒険者ギルド・エルメスカウンター。
カウンター長『ヴェール』の案内で、空たち五人とガムランは応接室まで通された(つまり確保できた錬金術師は、今のところピエリーナだけである)。そこで待っていたのは、白衣と飾り気のあるシャツとキュロットスカートスタイルの魔族の少女である(長寿であるエヴィルは見かけ通りの年齢ではない場合が多いが)。
「やあ、きみたちかい? ボクのクエストを受けてくれるって言う錬金術師は」
「はいなのです。私はレアガルド王国から来た冒険者、錬金術師、フォーマメント州領主、ピエリーナ・マルゲリータなのです。あなたは?」
「ボクは『サンジェルマン』。ファミリーネームはないけど爵位は伯爵。よろしく頼むよ。ちなみにボクはある国家プロジェクトを任されているんだけど、きみは、きみたちは『ホワイトエリクシル』と言う物を聞いたことがあるかい?」
ピエリーナはいいえと首を振る。錬金術師のピエリーナが聞いたこともないのだ、空たちやガムランに分かるわけもない。
「では説明しよう。平たく言えば、ホワイトエリクシルとはつまり、ボクが発明した『賢者の石の一種』なんだ。賢者の石が人間や動物たちのアークルを搾り取って錬成するように、ホワイトエリクシルはそれとはまったく違うものを抽出する。それは『植物のアークル』さ」
「植物のアークル、なのです!?」
「そうさ。考えてもみたまえ、動物も植物も同じ『生物』だ。そしてカビやミジンコさえアークルを持っていて、『バイオ・アークルコンバーター』がそれらからアークルを抽出してランプやアークルストーブなど魔導機器を運用できているんだ、植物からアークルを搾り取って賢者の石に錬成することくらい訳もないだろう。今、サンティーエ共和国は禁忌とされる賢者の石の錬成法を開封し、植物由来の賢者の石を大量開発して新エネルギー源として生み出そうとしているんだ。そしてそのプロジェクトを任されているのがこのボク、サンジェルマン伯爵と言うわけさ!」
「す、すごいのです……。確かに人間もカビもミジンコも植物も生物とくくれば、植物由来の賢者の石の錬成も可能なのです」
ピエリーナの納得に、サンジェルマンも強くうなずいた。
「さて、ここまで話せばもう分かるかな? ホワイトエリクシルは多くのアークルを必要とする『大型アタノールリアクター』の稼働、そして国の借金返済の財源確保に必要不可欠であり、それが盗賊に盗まれたとあっちゃあ一大事だ。このあたりではサンクティス工務店の建材錬成用リアクターに、鉄道業界では『アークルソレノイド機関車』開発及び鉄道運行が完全にストップし、医療業界では輸血と同レベルで必要不可欠な生命維持装置が使えなくなる。不幸中の幸いと言っていいのか、小型ゴーレムやいくつかの蒸気駆動車だけはパイロットやドライバーのアークルが動力源だから小規模な建築現場は困らないかな」
「つまり私たちの役割は、私はホワイトエリクシルの錬成のお手伝い、空さんたちは奪還と言うことなのです!?」
「察しがいいね、そう言うことさ。早速で悪いけど、ボクのアトリエまで来てくれ。なお報酬はこの通りだ。もちろん王子様とふたりのメイドさんにもお給金が出るよ。王族を雇うのは無礼だとは思うけどね」
それは、冒険者のランクに換算したらSランクに匹敵する報酬であった。
「受けない理由がないのです!」
「それなら車に乗って。善は急げさ」




