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第二十八章 双方の決闘 ~異常枠3人目の登場です……。~

 その夜。

 ホテル・ファミーユ。

 ロビーで双方の一日の出来事を報告し合うのだが、フォレストのぼろぼろの姿に空もピエリーナも驚きを隠せなかった。

「……ってことがあったのよ。フォレスト殿下もヴィントちゃんも勇ましかったし、空子爵の八極拳の教えはちゃんと弱い人を助けることができたのよ」

「そうだったのですか。それはよかったです。お相手はどうしているのでしょうか?」

「それがねえ、子が子なら親も親で横柄で、こんなのがクレベルト州知事かって感じのブタオヤジだったわ。で、案の定息子の決闘相手が隣国の王子と知るなり掌返して平謝り。何て言うか、下に対して威張り腐るバカほど人としての器って小さいものよねえ」

「同感です。……フォレスト殿下。初決闘で初白星を飾られたこと、誠におめでとうございます。そしてわたしが教えた八極拳で勝ってくれたこと、心からありがとございます。あなたの師匠として誇らしいです。わたしは今日、負けたと言うのに」

「いえそんな。空師匠に教えてもらったことが人を助けるために……、って、え!? 空師匠が!? 負けたって、誰にですか!?」

 これにはフォレストはもちろん、ヴィントもリューンも驚きを隠せない。弟子が勝ったのに師匠が負けたというこの構図に空は縮こまるばかりだが、ピエリーナが解説した。

「私たちをなめてかかった冒険者パーティーを空さんはまとめて相手にして勝ったのですけれど、その後にマティス・ガムランって言う元陸軍大将さんが空さんに力比べを挑んできたのです。今まで負けなしの空さんが、まるで手も足も出なかったのです」

 そう。

 力比べを受けたら夕食はご馳走すると言ったガムランの言葉に乗ってしまった空は食い意地を発揮してそれを受理。しかしサンティーエ陸軍高官として研鑽を積んできた実力(空が言うところの功夫)は相当高く、空の八極拳の技全てを真正面から受け止め、いなし、無効化し、ついには空の拳を片手でつかんでひねり、空を天高く舞い上げてしまったのである。空中でなすすべを失った空はそのまま地面に落ちるかと思いきや、ガムランの両腕にすっぽり収まった。その際ガムランはウインクしながら「Catch you!(捕まえた/意訳:お前は俺のものだ)」ととんでもなく気障なセリフを吐いていた。

「何だよその筋肉ジジイ。いろんな意味で非常識だろ」

「僕もそう思うよ。センス古すぎなのは僕でも分かる」

「いやそこですか殿下」

 フォレストたち三人はガムランの実力と気障っぷりに呆れ果てるが、空はただひたすら「功夫の差を思い知らされました」と落ち込んでいた。

「で、やけ食いするかと思ったらコーヒーとサンドイッチしか食べられなかったのです。空さんも空さんで空さんらしくないのです。まあそれでも私たちはガムランさんに実力を認めてもらって、今日は一緒に警護に出かけたのです」

「そうだったんですね。では、明日からも?」

「はいなのです。ガムランさん、空さんをとっても気に入ってくださったみたいなのです。……でもその様子が」

 ピエリーナはそのから先を言葉にしていいかどうか悩んだ。

 ――ガムランさんが空さんに向けていたあの態度、おじいちゃんが孫を可愛がるみたいな感じだったのです。空さんがどれだけ強くても、ガムランさんにしてみれば、お孫さん世代なのでしょう。

 そう言うピエリーナに、リューンは言った。

「まあ、この国の元偉い人に目をかけてもらったんだから、縁は大切にしなきゃね。それに敵に回したらどう考えても勝てっこないもの」

「勝てるように、せめて追いつけるように精進します。明日から修行の時間を十倍にします」

「やめろ師匠! 強くなる前に体がぶっ壊れる!」


 二日後、アッカー・クレベルト及びクレベルト侯爵家への処分が決まった。

 サンティーエ共和国議会はアッカーの父『ハイロー・クレベルト』に『レアガルド王国に対する慰謝料支払いおよび』と『息子アッカーとの親子の縁を切り、アッカーより家名を剥奪した上でレアガルド王城の給仕に出すべし』とした(フォレストが負けたら俺の奴隷だと言ったことに対する同条件である)。

 ハイローがレアガルド王国に支払う慰謝料の額は交渉中。そしてアッカーの給金の半分はジャンをひとりとするこれまでのいじめ被害者への慰謝料及び損害賠償にすべく徴収されることになる。問題はハイローにはアッカー以外の男児がおらず残された者は皆が女児であるため、跡取りを探す必要があると言うことだ。

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