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第二十八章 双方の決闘 ~わたし、食い意地だけは誰にも負けませんから!~

 ギルド庁舎前のメインストリート。

 空に食って掛かった男が所属する冒険者パーティーを『進撃の狼』と言った。パーティーメンバーは『機械剣のベテルギウス(食って掛かった男)』、『魔術双剣のベラトリクス(女戦士)』、『大楯のアルミラム(巨漢の男)』、『大魔術のメイサ(エヴィルの女性)』、『擲弾のタビト(手先が器用なコミュ障)』の五人。そのうちタビトは直接的な戦闘能力を持たずトラップ設置や爆薬使いなどの事前・後方支援系である。

「まず俺から行くぜ」

「『まず俺から』? 何の冗談を。わたしはピエリーナとともに三十を超えるヘイヤンマオのメンバーと戦い無傷で生還したんです。戦線離脱のタビト氏を除く四人でかかってきてください。それともタビト氏も参戦なさいますか?」

 庁舎に残ったタビトは「オレは火力支援係だからいいや。仲間たちのイキリのせいで済まねえな」と引っ込んでいた。

「てめタビト!? ああいいだろ。ベラトリクス、アルミラム、メイサ。全員でかかるぞ!」

「そう来なくては面白くありません。わたしの本気、御覧頂きましょう。……仁義礼智と信の字胸に、誇る力は活人が為に。武の道行く我、地鳴らす一歩は天の采配のもとにあり。その功夫の及ばざること、その身を以ってご理解ください」

 そしてベテルギウスは機械剣『デュランダル』を振り上げて空につかみかかった。

「『雷刃(ラム・エクレール)』!」

 光るプラズマを纏う刃が繰り出される。だが空はそれを最小限かつ細密なフットワークのみでかわしながら槍を振り回してベテルギウスの脳天に叩きつけていた。

「が……?」

 続くメイサの魔法も空中に魔法陣が展開する前に杖を叩き落とされ不発に終わり、突進するアルミラムの大楯も(かわ)しつつ彼のこめかみに槍の柄頭を叩きつけた。残された双剣使いのベラトリクスに対しては、レイピア(右手用長剣)のフィンガーガードに柄頭をくぐらせて掃い落とし、マンゴーシュ(左手用短剣)を持つ左手の手首にブレードガードを施した穂でそっと触れる形で決着とした。

 その間、三秒。

 たった三秒で、槍一本を華麗かつ巧みに操り冒険者パーティー進撃の狼全員を下してしまったのである。これには、多くの人が「確かにあの嬢ちゃん強ぇ!」「一体何が起こったんだ?」とざわめく。

「光の刃に遠距離魔法。ストリートファイトで飛び道具攻撃とか、あなたたちは状況判断ができないのですか?」

「て、てめ……! 今のは何だ、手品か……!?」

「れっきとした武術、八極拳です。どうしますか? まだ戦いますか? わたしとしては、これ以上の力の誇示はしたくありません。こんなことでギャラが増えるわけでもなし、軍人としては国際問題に発展させたくもありませんし」

 そこに、先程の受付嬢がバインダーを叩きながらベテルギウスたちに言った。

「進撃の狼の皆さん! もう空さんが強いのは分かったでしょ。難癖付けてる暇があったら、クエストを受注するなりなんなりしてちょうだい。こっちだって忙しいんだから!」

 すると。

「は? もうおしまいか?」

 庁舎ホールでも道端でもなく、上から声が響いてくる。

 一同が見上げると、二階のベランダの柵に肘をかけて見下ろす大男がいた。アレットに似た鷹のように鋭い眼光を放つ両眼と、ワックスで整えているのか重力に逆らうように逆立つ金髪、この季節だと言うのに上半身裸の上に革のベスト、鎧のような隆々たる筋肉、デニムロングパンツにチャップス(レッグガード)に革のブーツと言う装備で、腰にはガンベルトを巻いている。得物はリボルバーハンドガンではなくショートバレルライフルで、しかもバレル下のストック(木製の支え)とグリップ底部には鋼鉄の打撃部が装備されている。

そのメリクスウエスタンスタイル、ピエリーナと似ている。

「あなたは?」

「俺か。俺はSランク冒険者の『マティス・ガムラン』。陸軍じゃ大将をやってた。だが十と余年前の戦争のせいで『敗戦を招いた国家反逆者』ってことで裁判にかけられ、こっちから軍なんぞ辞めてやって、今やしがない冒険者よ。さっきそこのガキが言っていた実績をカネで買った冒険者って、たぶん俺の方が当てはまるんじゃねえか?」

「ガムラン大将、それはどういうことですか?」

「『元』大将だ、気遣い無用。軍人が冒険者になる場合、その時点での階級や戦績などが考慮されるのさ。だから俺の場合、金ではなく立場で高ランクを買ったと言えるかな? 嬢ちゃんは?」

「レアガルドの冒険者ギルドではFランクスタートでした。当時は『少尉相当客人』で、軍人としての戦績はありませんでしたので」

「そうかい。だがその強さは本物だ。一応カウンター長からお前が来ると言う話は聞いているが、どうだい? ちょっとこの俺と力比べしてみないか? そう簡単には負けるつもりはないが、受けてくれたら今夜の晩飯はご馳走してやろう」

 その言葉に、空の目つきが一気に変わった。

「その言葉、忘れないでくださいね! わたし、食い意地だけは誰にも負けませんから!」

「空さん! ブレないのは相変わらずとして、戦いでも誰にも負けないでほしいのです!」

 食い意地の張った空の天然ボケ発言には、その場の(進撃の狼のメンバー以外の)全員が失笑を禁じえず、ガムランに至っては抱腹絶倒してしまった。

「っふひーぃ! ひっ、ひはっ……! こ、こいつ、たまらなく楽しいぜ! 力比べの前に俺を笑い死なす気かよ!」

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