二十六章 冒険再開! ~今度こそヤマト名物『二人羽織』なのです~。さあさあギャングさん油断しちゃってくださいなのです!~
一階、パーティーホール。
ピエリーナが壁を二度ノックし、一同の注意が自らに向いたところで営業スマイルで語りかけた。
「どうもなのです~! 私、おでん屋の従業員でピエリーナと言うのです~!」
続く空は、男装を解きヤマトの着物に着替えていた。
「店主の空です。おでん屋をしております、どうぞ良しなに」
それまで肉と酒をむさぼり女性を抱いていたギャングの一同が、空とピエリーナを品定めするように凝視した。
――いやまずは怪しんでください。どれだけ肉欲に溺れているんですか。
空もピエリーナもそう言いたい気持ちを全力で押し殺し、ピエリーナはなお営業スマイルで言葉を紡ぐ。
「実は夜のサラリーマンをお相手におでんを振舞っていたのですけれど、どうやらエルメスに恰幅のいいおじさま方はいらっしゃらないようなのです。途方に暮れていたところ、この庁舎のお使いの方々とお会いし、できればパーティーホールにいる皆さんにお夜食をご提供し、接待してほしいと依頼をいただいたのです。つきましては、皆様に『ふたつの意味で』美食を提供したいと思うのです」
ピエリーナはそう言っておでんのカートを自らの前に出し、空は着物の襟をつかんだ。そう、『これから夜の接待を致しましょう』というジェスチャーである。
すると、ギャングの親分と目される男が顎を空たちに向け、骨付き肉をかじっていたギャングの男が立ち上がって空たちに歩み寄る。
「いいねえ、お嬢ちゃんたち。どんなおいしい料理を食べさせてくれるのかな?」
「その前に余興なのです。題して『二人羽織でおでんを食べられるかゲーム』なのです~」
すると、空がピエリーナの前にひざまずいて目を閉じて口をあんぐりと開ける。
ピエリーナは頭から外套をかぶり、何も見えない状態でおでんのカートの中からソーセージをトングで取って空の頬に当てる。
「ほらほら~。クーさんの大好きな大倭皇国名物おでんなのです、たんとめしあがるのです~」
「あつっ! ピエリーナ、そこじゃありません、そこに口はありません!」
「ん~? どこが口なんよ? どこが口なんよ? そんなに食べたきゃおねだりせんと分からんよ? なのです~」
「おー! 嬢ちゃんたち、面白いの見せてくれるねえ。それがヤマトの芸なのか!?」
「女の子が、ソーセージを……。何だかそそるぜ、この催しもの」
そして空はついにソーセージを口にし、思い切りかじって味わってしまう。その途端、ギャングの男たちは「えげつねえ!」と叫んで股間を思い切り押さえてしまう。一体何を思っていることやら。
「とまあ、おでんはヤマトの料理なのですけれど、シュトラルラント生まれのソーセージや一口ハンバーグ、サンティーエ北方の海でも獲れるクラーケン、古今東西津々浦々、どんな国の料理、食材でも受け入れてくれるのが『ダシ・スープ』で、ダシの手にかかれば何でもおいしくできてしまう、無限の可能性を秘めた料理がこのおでんなのです! さあさあ皆さん」
そして、戦いの火ぶたが切って落とされる。
「ご賞味あれ、なのです!」
ピエリーナはその場で跳躍しておでんのカートの後ろに立ち、強く蹴って敵陣に走らせる(おでんの鍋とカートは独立しているため、料理を無駄にすることはない)。空は残りのソーセージを頬張りながら近くにいるギャングの頭に背後にアレットのものと同じ伸縮自在棒を叩き落とす。
「うべら……」
「あなた、女性の胸しか見ていませんよね。だからわたしだったら騙されないバレバレトリックにも引っかかるんですよ」
走るカートはギャングのボスが座っていた席に衝突するが、ボスはとっさに回避した。
「うぉお!? あっぶねえな! って、え?」
ギャングのボスは唖然となった。
それは一瞬だ。
たった一瞬だ。
割烹着姿のピエリーナがカートを蹴った瞬間にすべてがあっという間であった。
空が伸縮棒で近くのギャングの頭を叩き落とし、ほかのメンバーを伸縮棒だけで突き崩し、ピエリーナは二挺拳銃を振りかざして的確にギャングの男だけを撃ち倒していたのだから。
「え……? なに、これ?」
そう唖然となるボスに、ピエリーナは全く崩さない営業スマイルで答えた。
「まいどー、美食便『オデンガーイーツZ』なのでーす」
だが、ピエリーナは『営業スマイルなのにまったく笑っていなかった』。
「なっ!? 何が、美食便だぁ!?」
そううろたえるギャングのボスを無視して、ピエリーナは空に尋ねた。
「空さん。ここは私に任せていただいてもいいのです?」
「分かりました。ピエリーナ、存分に暴れてきてください」
「ありがとうなのです。それではギャングのボスさん」
ピエリーナは二挺拳銃を構えた。
「……Shall We Dance?(かかってくるのです!)」




