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二十六章 冒険再開! ~ヤマトには不届き者をビール瓶で黙らせると言う伝統芸があるらしいですよ。~

 庁舎、パーティーホール。

 知事が各方面のお偉方を招いて社交界を開くべき場所は、完全にギャングの娯楽の場と化していた。

 そしてギャングの長らしき大柄な男が叫んだ。

「どうした足りねえぞ。酒と肉と女だ! もっと持って来い!」

 ギャングの一同は下品に笑いながらまだまだ要求してくるが、エルメスの冒険者と思われる男たちはうつむきながらホールを出てゆく。どうやらギャングにこき使われているようだ。

 冒険者たちは庁舎を出て、薄暗い庭に出た。正門まで続く石畳の道を踏む靴の音だけがむなしく響き渡る。

「……なぁ、どうするよ。このままじゃ俺たち人さらいで泥棒だぜ?」

「もう逃げてえ。逃げていいなら逃げちまいてえ。でも誰も何もしてくれねえんだろうなぁ」

 だが。

「いいえ。誰か何かしますよ」

「えっ?」

「その誰かとは、わたしたちのことですけどね」

 石畳の道の先、おでん屋の主人と割烹着の少女がいた。

「お前らは? ギャングどもに呼ばれてきた娼婦、ってわけでもなさそうだが」

「しがないおでん屋ですよ」

「は?」

「大丈夫。すでに人質の安全は確保しましたし、敵戦力は先程潜入して把握しました。こう見えて我々強いので、ギャングなんてすぐに制圧してご覧に入れます。あなたたちは明朝、これからここで起こることを冒険者ギルドに報告しに行ってください。それでは頼みましたよ」

 そしてふたりは槍と拳銃を構えて庁舎の中に入ってゆく。

 凶悪なギャングが待ち構える場所に、女の子がたったふたりだけで入ってゆく。思いもしない展開に、冒険者たちはただ唖然となった。

「ムリだろ」

「ムリだな」


 庁舎三階、大会議室。

「え? 空さん、こんなところにまで忍び込んだのです?」

「しっ、声が大きいです。ええ、陸軍仕込みの潜入法を使えば楽勝ですよ」

「陸軍、チート過ぎるのです……。って、そこに空さんが教えた八極拳があればレアガルド陸軍ってば無敵ではないのです!?」

「八極拳には『秘伝』があり、わたしに残る記憶はみだりにそれを教えてはならないとわたしに語りかけてきました。八極拳の基本的戦闘理論は惜しみなく教えましたが、秘伝を教えるのはヴィントとフォレスト殿下、そして八極拳を学ぶつもりがあるのならピエリーナをひとりとする旅の仲間たちだけでしょう」

「つまり、それだけ信頼してくれているということなのです。私はこれからも空さんの信頼にこたえ続けるのです!」

「それは、わたしがピエリーナに対しても同じです。さあ、行きますよ」

 空とピエリーナの足元には、見張りのギャングが酒の瓶を手に横たわっている。少女たちがおでん屋の格好をしておでんと酒を売り込みにくれば一気に警戒心を解いてしまうものだ。

 空が「しーっ」と言いながら大会議室に入れば、人質となっている都庁庁舎職員が部屋の奥で身を寄せ合っていた。

「おお。さっきの人ですか」

「しっ。……静かに。はい。今度こそ助けに来ました。皆さんは決して騒がず、落ち着いてわたしの指示に従ってください」

 空はおでん屋の服装から『パラコード(強化繊維製の強度の高い縄)』を取り出し、ピエリーナが空の指示で静かに窓を開け、蝶番から窓を外して床に寝かせ、手すりの付近にパラコードの束を置いた。空は陸軍仕込みのやり方で一本目のパラコードを手すりに結び、それ以外のパラコードを一本のロープとなるように結び延長させてゆく。

「勇気のある方から脱出してください。無理は禁物です、必ず我々があなたたちを助けますので。重要なのは、奴らに見つかり命の危険にさらされない限り何が起こっても声を出さないこと、物音を立てないこと。誰から行きますか?」

 空の呼びかけには、まず女性職員が手を挙げた。

「逃げられるなら早く逃がしてちょうだい!」

「無論です」

「おっ、オレは後にするよ。レディーファーストって言うし、空さんの教えを守れる女性から先に逃げてくれ」

「割烹着のお嬢さんは初めましてだね。私こそ知事の『グラム』と言う。何があろうと私を最後にしてくれ。何卒、職員の皆を助けて差し上げてくれ」

 こうして人質は解放した。

 二階も完全に制圧し、一階に戻る。

 女子トイレの中で、最後の作戦会議。

「ピエリーナ。先程の二階での戦いで気付きましたでしょうか。大岑ギャング、何らかの武術をそれなりに習得しているようです。功夫は浅いですが、奴らの武器やボスの実力次第では苦戦するかも知れません。あなたにそのような真似はさせたくありませんが、拮抗の末に相手の命を奪う展開になることも覚悟しておいてください」

「人の命を奪うなんて、王都のホムンクルス戦でやってしまっているのです。それに空さんの方が、私と出会うまで悪党を倒してきたはずなのです。これからも空さんと肩を並べて戦うのなら、悪党を手にかける覚悟くらい持っておかなきゃいけないのです!」

「その覚悟やよし、としましょう。しかし、いかなる悪人であろうと手にかけずに済むならそれに越したことはないことだけは覚えておき、無理に無慈悲な覚悟を決める必要を無いこともまたご承知おきください。何よりも重要なのは、我々が生きて帰ることですからね」

「はいなのです。それでは、出陣なのです!」

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