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二十六章 冒険再開! ~空さん大変なのです! 今、この町はギャングに制圧されているのです!~

 その日の夕方。

 首都エルメス、サンクティス工務店。

「フォレスト・レアガルドの開拓視察団、唯今戻りました!」

 そう声を張り上げるフォレストを、カルパッチョとピエリーナが出迎えた。

「おお、殿下! 無事のお戻りで!」

「よかったのです! 今、エルメスは大変なことになっているのです!」

 手を止めた従業員たちも、そうなんだよと空たちに詰め寄る。

「道中聞きました、ヘイヤンマオなる大岑ギャングがこちらに向かったと。帰路に大きな異変はなかったようですが、エルメスに何が起こっているのでしょうか?」

「まずはティータイムを。皆様お疲れでしょうし、そのくらいの余裕はございましょう」

 状況は次の通り。

 まず二日前、軍用大型蒸気駆動バギーが四台、エルメスの防壁東門を強行突破し、都議会庁舎、武器屋、非常用食糧庫を同時制圧した。そこから始まったのは、略奪と暴力。陸軍と保安庁の分隊が向かうが、都議会庁舎の職員全員を人質に取っているためうかつに武力制圧できない。連中は食糧庫から食料を運び出すだけではなく、陸軍と保安庁に人質の分の食糧を要求してきた。自分たちだけではなく、人質が生きながらえるだけの食料も必要だからだ。

 そしてギャングは武器を手に町を練り歩き、都民に略奪と暴力を働くようになる。外出中のギャングを制圧するだけなら問題ない。だが敵の逆鱗に触れ人質を殺されて逃亡されてはかなわない。そしてその暴力と言うのが、ただの暴行にとどまったり、悦楽のために虐殺したり、相手が女性であれば……。

 話を聞けば聞くほど、非道というひと言で片付けられないほど度し難い連中であることが分かる。空はかつてないほどの鬼面となり、今すぐにでも飛び出してしまいそうなほど身を震わせた。

「要は」

 空は震える声で言った。

「人質を解放すれば、一気に攻め入ることができるというわけですね?」

「そうでしょうが……」

「であればわたしに任せてください。これでも陸軍で潜入作戦のための訓練は受けてきました。ピエリーナはどうしますか?」

「はいなのです。空さんのお力になれるなら!」

「分かりました。では半日時間をください。冷静になるためにも少し仮眠し、夜に出撃します。それと、用意していただきたいものがありまして」


 その夜。

 エルメス都庁。

 庁舎は大理石の柱とオレンジ色のレンガによって建てられ、塀、庭、庁舎のいたるところに漆喰による装飾が施され彫刻が飾られている。

 だがそんな庁舎もギャングのバギーに踏み荒らされ、庁舎正門の周辺にはゴミが散らかり、ギャングに暴力を受けた人々が伏せている。

 そんな有様の庁舎の正門前に、『おでんの屋台』が現れた。

 アークル駆動自動小銃を持つギャングの男が、異質なそれに注意を向けないわけがない

「ん? なんだ? ヤマト語で、お、で……」

「おでん、なのです」

 屋台の後ろからついてきた割烹着を纏う小柄な少女が、メニュー表をギャングに差し出す。

「お勤めお疲れ様なのです。私たちは旅のおでん屋。皆さんに美味しいものをお分けしたら次の町へと行くのです。この町の人々は活気がないみたいなのですが、お兄さんは一杯いかがなのです? おでんを1000ガル以上注文してくれたら、お酒は二割引きするのです」

 屋台を引く青年は、目深にかぶった帽子のつばをつまんで頷いた。彼が店主であろう。

「わかった。ちょうど腹も減ってたんだ。『チョンスー』のやつまだ持ってこねえんだよ、晩飯」

「そうだったのです? それは災難なのです。さあさあ、まずは大根、玉子、こんにゃく、ちくわ、昆布巻の定番コースなのです」

「そうか。じゃあもらおうか」

「アルコールはまだ要らないのです?」

「二割引きは魅力的だが、今もらおうかな。チューハイをひとつ」

「ご注文ありがとうなのです! 定番コースとチューハイ一丁なのです~!」

 その後、チョンスーと呼ばれた男がホットドッグを手に正門前にやって来れば。

「あ? ティエンのやつどうした? って、寝てる!?」

 なんと、先程の門番『ティエン』は小銃を背に追いやっておでんの屋台のカウンターに突っ伏して寝ていた。しかも屋台の反対側でも店主と思われる老人が酒臭い息を漂わせていびきをかいていた。

「迷惑なファストフード屋のジジイもいたもんだ。おいティエン。起きろ。ボスにどやされるぞ。起きろってば」

「寝ててほしいのです」

 その時、チョンスーの首に超圧縮されたアークルバレットが命中した。

 屋台の割烹着の上に黒い外套をまとったピエリーナであった。

 そして、空は屋台の店主の服装の状態で闇の中から現れた。

「お待たせしました、ピエリーナ。偵察の結果ですが、なんとまあ制圧しようと思えばできてしまうザル警備です。正直、今からわたしとピエリーナだけで攻め入っても敵陣攻略できるでしょう」

「ありがとうなのです! それで、人質はどうしているのです?」

「生かさず殺さず。食料は渡されトイレの使用は認められているようですが、入浴は許されていないのか皆さんひどく不衛生です。そして女性職員は、あの路地に倒れていた人と同じ目にあわされていました」

「ひどいのです……。この人たち、すべての女性の敵なのです!」

「はい。軍人としてもひとりの女性としても、彼らへの嫌悪感を拭いきれません。ああ、それと人質がさらされている危険ですが、何かあった時に部屋を爆破できるよう、火薬が詰められた箱とそれに続く導火線が一本伸びているだけでした。つまり、導火線を切断すれば人質に危害を加えられることはありません。前もって救済工作済みです」

「さすが空さんなのです! それでは、攻め込んじゃうのです!」

「はい。それでは参りましょう。……仁義礼智と信の字胸に、誇る力は活人が為に。武の道行く我、地鳴らす一歩は天の采配のもとにあり。罪なき民に害為す輩は許す道理一切なしと、何卒覚悟しておいてください」

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