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第二十六章 冒険再開! ~国に英雄と伝説あり、ですね。~

 次なる視察先、『ジャンヌ聖堂村』。

 『聖人ジャンヌ』を祀る厳かな聖堂が立つ農村だが、盗賊団対策など一切していない。やはりここでも数種類の野菜や果物を育てており、特に加工性と保存性の高い麦が多い。また家畜などを飼育する酪農家もあるが、育てているのは気性が荒いと有名な『暴れ牛』や野生そのままの種を家畜にしたイノシシ『ブラックボア』ばかり。すべての農家が番犬を二頭以上飼っており、これは盗賊も盗みづらい。

 『ジャンヌ礼拝堂』が役所、司祭が村長になっているようで、空たちは礼拝堂前に車を止めてまず礼拝した。

「礼拝堂……。とても素敵な建物です。美しいステンドグラス、純白の壁、壁や柱などの細かな装飾、カーペットの先の彫刻。何を取っても、細やかで色鮮やかで、これをどう言葉にすればよいのでしょう」

 礼拝堂は、中央の赤いカーペットの左右に礼拝者のための椅子が並び、カーペットの先には石膏製の女性戦士像が鎮座し、その先にはステンドグラスの窓が色とりどりの光を礼拝堂内にもたらしている。向かって女神像の左側にはピアノがあり、そのピアノのメロディーに乗せて女性戦士のための聖歌を歌うのであろう。

 ただただ厳かな礼拝堂の美しさに圧倒される空たち一同。また振り返れば、門の真上に巨大な絵画が飾られている。戦争の一幕であろうか。

 空は、ここまで案内した人物『シャルル司祭』に尋ねた。

「司祭様。あの女性像はどなたなのでしょうか?」

「あのお方かい? あのお方の名はこの村の名の由来でもあり旧サンティーエ帝国の救世主でもあらせられる『ジャンヌ・ル・シエル』様だ。かの戦争は三百年ほど前かな。当時のアルビオン諸島連合王国が起こした侵略戦争から我が国を守り給うた英雄であり、この村の誇りさ。何たってジャンヌ様はこの村で生まれ育ち、あるひと言を残して当時のサンティーエ帝国の陸軍に旅立って行ってしまったんだ」

「ひと言、ですか?」

「ああ。『(シエル)がわたしを導いてくれる』と。そのことから帝王政府はシエルの家名を与え、そこから始まった『ジャンヌ・ル・シエルの被占領地奪還戦争』は全戦全勝。ついには海を渡りアルビオン諸島の一部を領土にし、『領土を返してほしければ無条件降伏せよ』と交渉のカードとして利用し、戦争を終わらせたのさ。その後は残念なことにアルビオンのスパイによって冤罪をかけられ処刑されたが、死後に帝国軍がジャンヌ様の冤罪を晴らし、彼女はこの国の英霊として祀られるようになっということさ」

「それはまた、すさまじいドラマと言いますか歴史と言いますか」

「だろう? あんたたちもレアガルドのお偉いさんなら学んでおくべきだし、サンティーエには素晴らしい英雄がいたことを広めてほしいもんだ」

 すると、フォレストが口をはさんだ。と言うよりも空に追加説明する。

「はい、確かに300年ほど前、アルビオンは周辺国どころか世界各地に侵略戦争を仕掛けていました。サンティーエは帝国軍に強力な戦術責任者が知力を以って退けましたが、『オウラーヴァル小連邦』は統率の取れていない軍事力のせいで侵略され放題でアルビオンに完全侵略され、アルビオン人の植民地となったオウラーヴァルこそ、のちのレアガルド王国であると習いました。ですよね、リューン?」

 かの戦争とアルビオンの歴史を説明するフォレストを、「よく勉強していらっしゃいますね」とリューンは褒める。

「へぇ。レアガルドは比較的新しい国なんですね。そしてサンティーエ帝国軍の戦術責任者がジャンヌさんなのでしょう。……あれ? ではレアガルドの建国は」

「はい、僕の祖先『レアガルド一世』がアルビオンに独立戦争を仕掛けたそうです。しかもその戦争と言うのが、武装による拠点制圧ではなく『GDP比戦争』だったんですよ」

「……何ですか、それ?」

 さすがに経済のこととなると陸軍では習わないようだ。

 つまりレアガルド一世は、『GDP=国内総生産成長率』を戦争の基準と掲げたのである。両国がGDPを計算するためだけの人員を送り合い、『レアガルド暫定国(当時)』が経済成長率においてアルビオンより優れていると立証されたらおとなしく国土を明け渡してもらおう、と言うものだった。レアガルド一世はオウラーヴァル小連邦(のちのレアガルド暫定国→王国)の民が蹂躙の果てに死にゆくさまを見ていられず、彼らの救済もかねて非流血戦争を起こし、勝利したのである。

「そうだったんですね。しかしよく旧オウラーヴァルは大ノルド帝国崩壊から300年前まで侵略されずに済みましたね」

「レアガルドには、したかひまりさんが考古学者として研究なさっていたレアガルド伝記に由来するジグラスがありまらね。ここは神の国だ、侵略は許さない、と周辺国に言って回れば、シュトラル創世教の狂信的信者以外は黙ってくれていたんでしょう。そしてシュトラル創世教相手には正反対のことを言ってジグラス破壊を免れた、と言うことでしょう」

 そしてこれまでのやり取りから、ヴィントがシンプルにまとめてしまった。

「つまり、盗賊対策のためにあえて気性の荒い動物を家畜として育てているってのもそうだけど、神様やお偉いさんの加護の下では盗賊たちでもそう簡単に侵略できないってことか。それなら、フォーマメントでもそう言う猛獣を家畜にしてレアガルドの王様にめっちゃ応援してもらってる師匠たちがいれば、もうそれだけで『ジャンヌ効果』抜群じゃない? 砦も迷路も必要なくない?」

「ジャンヌ効果、ですか……。ネーミングはともかく、それはアリですね。フォーマメント州に手を出した者には王家の怒りの鉄槌が下るだろう。それを示すためのシンボルがあれば、誰もわたしたちに手が出せなくなります。そうです! ライノック陛下の嫡男にしてプロジェクトリーダーであるフォレスト殿下の実績を讃える石碑を建てれば、ジャンヌ効果マシマシでは?」

「師匠こそ、マシマシってラーメンじゃないんだから。でもそれが分かっただけでも聖戦士ジャンヌを拝みに来た成果はあったんじゃないかな、師匠?」

「そうですね。では、もう少しだけこの町を視察してから次に行くとしましょう」

 シャルルの勧めで、空は農場直営レストランで『ブラックボアの激レア部位の焼肉』を頂くことに。四肢や胴といったメジャーな筋肉部分ではなく、モツ(臓器)、それも誰もが進んで食べないような部位を提供する『ゲテモノメニュー』である。さすがに口にするのもはばかられるようなものばかりを出されたが、空は「旅では食べられるものは食べておかないとこの先死にます。それに……、未知の味が気になりますから」とひとりだけ容赦なく食べ進めてゆく。

「殿下。我々は『ニラレバ』だけ頂いて、あとは普通のメニューを頂きましょう。バラ肉などいかがです?」

「はい、それにします……。でも司祭さんのオススメと視察なので少しくらい食べてみましょうか……。ヴィントと冒険者のお二方はどうなさいますか? 王家が持ちますよ?」

「私も。ロースがいいかな」

「王家が持ってくれるならフィレ肉をご馳走になりたいぜ!」

「ハツって心臓だろ? 長生きしそうだし、ビール風炭酸水と一緒に頼むわ」

 一同がニラレバ以外メジャーなものを食べ進める中、空はひとり、得体の知れないものばかりを食べていた。

「あの司祭さん、絶対に大酒飲みです。珍味にはお酒が合いますね」

 もちろん真昼間から酒を飲む空ではない。


 次なる視察先、『セルクルの里山』。

 セルクルは南に大河、北に深い森のある『セルクル山(大きなカルデラが由来)』を持つ村である。

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