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第二十四章 宿命の再戦 ~撃ちてし止まん。我が心得ぞ!~

 キイ甲板。

 多くの海賊、多くの海軍兵士たちが倒れる中、最後にアングリフを降りたアーダルベルトは海軍兵士が放つ銃弾の雨をかいくぐって彼らを左右両手のタクティカルナイフで仕留めてゆく。その動きに一切の迷いはなく、多くの人間をその手にかけてきたことがうかがい知れる。

 しかもそのタクティカルナイフは恐ろしいことに、切れ味の鋭さが尋常ではない。先程甲板の上の海賊を細切れにしたことからも、その切れ味は世界最高と評されるヤマトの刀に匹敵するだろう。

 悪趣味なスーツに切れ味の鋭いタクティカルナイフ、そして目にも留まらぬ格闘術。恐るべき海賊ゲオルグ・アーダルベルトの前に、空たちは立った。

「これはある種の因縁でしょう。ひまり。ザコの一掃を」

 と空が「お願い」しようとした時、ひまりが空に前に出た。

「ゲオルグ・アーダルベルトとか言われたな。奴は拙者の手で仕留めさせていただきとうござる。拙者の故郷に手を出した報いをこの手でくれてやらねば、気もおさまらぬと言うもの」

「……分かりました。相手は悪逆非道のアーダルベルト。お気を付けください」

「かしこまってござる」

「あたしも空ちゃんと一緒に雑魚散らしよ。さーて腕が鳴るわ!」

「僕もだ。さあ、医学の勉強がてら『解剖』させてもらえないか!?」

 そして四方に分かれ、空とリィンと忠八は海賊たちの駆逐に回る。空は八極拳と六合大槍で敵を薙ぎ払いあるいは船から叩き落とす。リィンも兄アルスから託された剣を振るうが、明確な殺意を持ってかかってくる者は斬り伏せ、自棄になって突っ込んでくる者は太陽手(ティダヌティー)で薙ぎ払うにとどめる。忠八は軍医と言うこともあって人体構造には詳しく無駄な殺しを好まないため、手足の関節を傷つけるにとどめて戦場(船上)を駆け回る。

 だがそんな敵にすら配慮した戦術が通用しないのが、ゲオルグ・アーダルベルトと言う男である。

「貴様が? この俺様に? 勝てると?」

「勝てるか否かではない。その首頂戴致すのみ。我が友が討ち果たしたと言うグスタフ・アーダルベルトの弟とやら、その実力をこの目で確かめたく存じる」

「なっ!? ……へぇ? お前の仲間、やるじゃねえの。兄貴の死を知った時はそれなりに残念だったが、とは言え俺様は兄貴ほど雑な戦い方はしねえぜ」

「よかろう。ならばその実力、拙者に示すがよい。……『澄む一刀、武士道に殉(じゅん)じ命懸(か)け、撃ちてし止まむ(ん)。我が心得ぞ』。残虐非道な貴様の行い、ここですべてを終わらせよう!」

 そして、両者は衝突。

 アーダルベルトが繰り出す右手のナイフを、ひまりは刀の鍔で受け止める。

「てい!」

「うぉ!?」

 ナイフの一撃を真っ向から受けるのではなく鍔で受けるとともに受け流すことで、ナイフとともにアーダルベルトをひまりの右わきにそらした。だがアーダルベルトもそう簡単には倒れず、踏ん張り、その場で左旋回しながら左手のナイフをひまりに向けた。

「おっと」

「意外と冷静に避けるじゃねえか」

「仲間を信じてござるゆえ、な。ところでゲオルグ・アーダルベルトとやら。今のが本気だとしたら、貴様の弱点をひとつ見出したでござる。とは言えこれが油断につながらないように気をつけなければならぬがな」

 両者距離を置く。

「弱点だぁ? 俺様を動揺させるハッタリか。見え透いたマネを」

「そうかな? ではこの戦いの中でそうではないことを証明致そう!」

 そして、再度衝突。

 アーダルベルトが兇刃を繰り出す。

「くらえ。サンティーエ獣王硬拳、『鋭牙(えいが)』!」

「あの闘牛拳法でござるか」

 敵に噛みつくかのようなモーションでひまりに迫るアーダルベルト。だがひまりは剣術にもある足裁きでアーダルベルトの背後に出た。

「やるなあ!」

「さすが、勘だけは大したものでござる」

 常に戦いの場にいるアーダルベルトは、その戦いの勘からかひまりの動きを読んだようだ。ひまりは刀を構え直しアーダルベルトと対峙する。

「これだけが俺様の技じゃないぜ。……『システマ』!」

「なっ!? まさかその技が!」

 システマ。

 八極拳やサンティーエ獣王硬拳のように型や技が定まっているものではなく、どちらかと言うとアレットのバーティツやヤカのアンガンポラのように戦いの中で技を作り上げてゆく武術。ただしバーティツが紳士淑女の護身術であるのに対し、システマはヴィリーキイ連邦共和国陸軍を発祥とする『本格軍事格闘術』である。

「とらららららららららららららぁ!」

「早い! 剣術が絡め取られる!?」

 アーダルベルトはナイフでの攻撃を繰り出す一方でひまりの刀を絡め取って叩き落そうとする。だがそうされては一気にアーダルベルトの攻撃ラインにひまりが引きずり込まれ、一気にとどめを刺しにかかるだろう。ひまりは刀が絡め取られないよう防戦に徹するしかなかった。

 だが。

「貴様の攻撃には迷いがない。正直、こちらが判断を誤った瞬間に生じる隙に貴様は容赦なくナイフを突き立てに来るでござろうな」

「分かっているならさっさと迷って死ねや! ひゃーっはっはっはっはっはぁ!」

「しかし、それゆえそこに勝機はある。まだまだ見せてもらおう、貴様の技を!」

「いーじゃねえか。そんなに戦場で死にたきゃ見せてやる!」

 そしてアーダルベルトは蹴り技まで繰り出し、アンガンポラ、カポエラ、『ジークンドー』の技まで繰り出してきた。特にヤカも習得しているアンガンポラはアレットに獰猛と言わしめたほど一撃が強力だ。そして多くの武術を体に通しその技を我が物にしているため、対処を絞り込むことがなかなか難しい。

 だがそれでも、ひまりはそれでも自らの敗北をイメージ『できない』。

「なぁーるほどぉ……。ゲオルグ・アーダルベルト、貴様の実力はその程度にござるか」

「なっ!? 俺様が、その程度かと!?」

「然様。確かに貴様は強い。貴様の兄グスタフが空とアレットのふたりがかりでなければ勝てなかったという話も納得でき、貴様なりの戦法を確立していることもまた見事にござる。しかし総合的な強さだけで言えば、話に聞いたグスタフの方が強いのではと拙者は考えてござる。グスタフが存命で拙者が相対すればどうなるのか拙者にも分からぬ。しかしゲオルグ。貴様ごとき、拙者ひとりで充分勝てるでござろう」

 そしてひまりは、腰の鞘に刀を納めた。まさか無手で戦おうと言うのか。

「参れ。貴様が拙者に、兄にすら遠く及ばないことを証明してご覧に入れて進ぜよう。ピエリーナが好む漫画の登場人物の台詞(セリフ)を借りるならこうでござる。『来いよド三流。オレとおまえとの、格の違いってやつを見せてやる!!!』」

 そのセリフに、アーダルベルトはついにキレた。

「舐めてんじゃ、ねえぞ、この、小娘ええええええええええええええ!」

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