↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/382

第十四章 フォーマメント、リゾート化計画 ~正式開業(グランドオープン)に足りぬものが見えてきたようでござるな。~

 そして。

 ピエリーナのポーションのおかげで、空は意識を取り戻した。

「あれ……?」

 空が気付くと、自分たちが戦いの中で踏み荒らした芝生の上に横たわっていた。

 しかも。

「やあ。最後はすごい一撃だったね、空」

「アルス、さん……?」

 何と空は、あぐらをかいてコップを持っていたアルスの太ももを枕に寝ていたのであった。

「こ、この状況……?」

「ヒナギクちゃんがポーションを飲ませてくれたんだ。喉が荒れるといけない、水を用意したから飲んでくれ」

「ありがとう、ございます……」

 空はきしむ腕を無理やり動かして上半身を起こすと、アルスからコップを受け取って水を飲む。空の様子を見て、ライノックやクリストファーたちは「親善試合が事故になるかと思ったが一安心だ」と胸をなでおろして安心した様子を見せた。

 だが、空は落ち着かない。

 ――確か八極拳の一撃を見舞ったと思ったら頭にすごい衝撃が走って、そのまま空を見上げて世界が真っ暗になって、気が付いたらアルスさんに膝枕されていてって、これどういう状況なのですか……?

 水を飲み干し、アルスの手に支えられて立ち上がった空の前に、ライノックが歩み寄った。

「陸軍中尉、Bランク冒険者、フォーマメント州領主がひとり、呉空男爵よ」

「はい」

「親善試合、見事なものであった。武功の数々のみならずその実力において他の追随を許さずと謳われたアルス・ライトアームズ勇者卿との親善試合において、貴卿は見事な試合を繰り広げ、我々にその実力を示した。貴卿の実力はここにいる誰もが保証する。貴卿はその事実を誇るがよい」

「あっ、ありがとうございます、国王陛下。でも、わたし二回目の記憶喪失になっちゃったのでしょうか。試合の最後の記憶が無くて。わたしは負けちゃったのでしょうか?」

「それは」

 若干言いよどむライノックに頭を下げる形でアルスが割って入った。

「引き分けに近い僕の勝ちと言うか、僕の勝ちに近い引き分けと言うか」

「えっと、どういうことですか?」

「つまりは『相撃ち』だよ。僕のバックキックが決まったと思ったら僕も空の一撃を受けていた。どれだけ気を失っていたか分からないけど、同じく気を失っていたきみより僕が早く目が覚めただけで僕の勝ちとヒナギクちゃんに言われてしまってさ」

 空がピエリーナを見やると、「試合は試合なのです」と気まずそうな表情で言う。

「だが気にするな、これは親善試合だ。僕はひとりの武人として、きみの武人としての心構えに敬意を表する。僕にここまで真っ向から向き合ってくれた人は、『きみが初めて』だから」

 ――「きみが初めてだから」

 その言葉に、空はかすかに息を乱してうつむいて答える。

「そっ。それは、とても光栄なことです。……でも、そうですか。わたしは負けてしまったのですか。海軍のクリスさんとはかろうじて判定で引き分けたって言うのに。それでも、アルスさんの心に残る試合ができたというのであれば、わたしは光栄に思います」

「うん、僕こそだ。さて、この試合を見届けてくれた、そして僕らを案じてくれた皆様に感謝しなければね」

 そして、空とアルスは一同に敬礼する。

「僕たちの」

「わたしたちの」

「親善試合をお見届け下さり、ありがとうございました」

 そんな彼女らに、ライノックたちは拍手で応じた。


 その後。

 来客をもてなすはずの空とリゾートを満喫するはずのアルスは、キャンプチェアに揺られてピエリーナの手当てを受けながら、ライノックたちが食事や酒や各種サービスを満喫する様子を眺めていた。

 ひまりとアレット、ほかの従業員たちは、サービスを提供したり注文に応じたりしながら更なる要望や改善案などをメモしてゆく。夕方ごろに帰路に向かう賓客たちを見送り、ライノックは「此度はよい憩いの旅となった。呉卿と勇者卿は養生されよ」と一同をねぎらい王族専用馬車に乗り込んでゆく。

 空が動けないため、湖水地方の外まで道案内するのはアレットの役目となった。アレットが返ってくるなり、従業員一同から集めた改善案を集めるのだが。

「さて、ざっとこんなもんッスね」

・体験型の楽しみが欲しい。

・空とアルスの試合を見て、癒されるばかりではなく盛り上がる出し物が欲しいと思った。

・思い切り乗馬がしてみたい。

・子供向けの遊具が欲しい。

・釣りや狩猟の体験のために、釣り竿や猟銃があったらうれしい。

・この地で採れる食材を使った料理もよいが、貴族相手なら度肝を抜くような高級料理を一品出すのはどうだろうか?

・そのほかもう少し娯楽を増やしてほしい。

 などが挙がった。

「体験できる何かと娯楽はアリですね。しかし猟銃は武器に転用できるので、それだけは賛同できかねます」

「子供向けの遊具って言うと、アルケモートの公園にはブランコとアスレチックがあるのです。ただ、遊具には安全基準をクリアしないと設置できないのがレアガルド王国の法律にあるので、遊具設置は外注になるのです」

「採算が取れるようになったら、それなりに腕の立つ料理長をお招き致そう。もてなしの場には玉露の茶と銘菓が必要不可欠でござるからな」

「乗馬のための馬だったらすぐに用意できるかもしれないッスね。試合観戦となると、それこそレリック長官のご子息のヘビメタバンドなどを呼ぶための円形劇場を用意すればオールマイティーに対応できるかもしれないッス。国王陛下から調達を約束された開拓支援金第二弾で、狩猟以外の設備を拡充するッス。開拓計画を立てて、子どもたちやパワード出身のみんなにも手伝ってもらうッスよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。