第十四章 フォーマメント、リゾート化計画 ~リゾート・イハトヴ、プレオープンなのです!~
その後。
春も終わりを迎え。
冒険者として高額クエストをこなし、そのギャラとこれまでの貯金のすべてを費やし、パワードの助言などもあり、ついに湖水地方フォーマメントはリゾートとしての形を整備した。もちろんこれで完成ではないと空は言う。
「さて、何不自由なくここで一週間宿泊するための設備は整いましたね」
まず、領主邸より程遠くない場所を起点として等間隔にコテージを設置。そのコテージだが、森側に出入り口、大人数がくつろげるリビング・ダイニング、水道や魔導コンロなど様々な設備を備えたキッチン、幅広の階段を上った先の大きなロフト(ほとんど二階)とソファーやドリンク用テーブルが備え付けられたベランダ、リビング・ダイニングの先のウッドデッキ、それを覆うタープのようなアーチ状の屋根という構造をしている。
ウッドデッキの中央には大きなテーブルがあるが、テーブルとして使うもよし、その中に格納されたキャンプ道具でワイルドな料理を楽しむもよし、どのようにも使えるものだ。またウッドデッキには布製サンシェードが用意されており、直射日光とほかの利用客からの視線を遮ることができる。
問題は洗濯サービスだが、洗濯工房と産業排水設備を整え、ボルタの勤め先であるローリエの工房で上等な布地の洋服の洗濯の仕方を教わり、薬剤を買って空とアシュレイの軍服を洗濯してみたところ、新品のような仕上がりだとアシュレイに褒められた。排水は専用中和剤を使えば下水と混ぜて流すことができる(下水はレンガ製地下配管を通り、スライムとバクテリアが棲む『バイオ浄化槽』で浄化して湖に流している)。
夜になれば夜景が楽しめるが、それでも地上にもう少し光が欲しいと言うレリックの要望で、『光り苔』が付着した岩や小石を花屋アースゲートの庭園整備法に基づいて配置し、ミツバチのための住処『ゴーラ』や『インセクトホテル』という木の枝やわらなどを敷き詰めた小さな高床式建造物を設置することで、夜間に光り苔が光り、ゴーラやインセクトホテルも模様に従って貼りつけた光り苔が地上を彩る。夏にはホタルが森や湖を彩るとのことで、それによる夜景の彩りも期待できる。
予算とアイデアでできるすべてのことはした。あとは実行に移すのみ。
グレンが言う。
「ある者が言っていました、『八十の出来栄えを百に昇華させることは大変だが、ゼロから始めて八十の出来栄えまで作り上げるまではたやすいことだ』と。ここから先は運営してゆく中で見えてくる不足分を補ってゆくとして、まずはご縁のある方々をお呼びして『プレオープン』とするのはいかがでしょう」
「分かりました。まずはやってみましょう」
空、アレット、ひまり、ピエリーナ、グレン、レリックは、見合って頷いた。
夏の始まり。
湖水地方の名をフォーマメントと名付け、独立した州『フォーマメント州』と、湖周辺のリゾート施設の名を、『レイクサイドミニリゾート・イハトヴ』とした。
そして迎えた、リゾート・イハトヴのプレオープン。
領主邸で賓客たちを出迎えるのは、領主陣アレット、ひまり、ピエリーナ、経営者パワード、配膳要員として王都のエヴィルの少女アルルスほか孤児院の子供たち、洗濯要員としてアンカーボルトで空に助けられた少女、株式会社パワードの元社員たちである。
空が車を運転し、豪華な馬車や幌馬車やミリタリーバギーなどに乗って、空たちにゆかりのある者たちがやってくる。国王ライノック及び家族とその護衛をはじめ、アルミス州のアルミス辺境伯と陸軍分隊の兵士たち、メイフラワー号二世船長クリストファーに海軍のクリスとミオ、冒険者のヤカ、暴走ゴーレムのパイロットだったボルタ、アルケモート町長グリエルモと居酒屋クラヴィアの店長シュピールマン、アッシュランド州アリュールの冒険者ギルド長オーガスト、第八代レッドフォート伯爵ゼール、螺旋水田トラムロの管理者クリュー、そしてアルスをはじめとする勇者パーティーの四人である。
馬車を降りたライノックに、代表してドレス姿に着替えたアレットが挨拶する。
「レアガルド王国領主ライノック・レアガルド陛下、王妃殿下、王子殿下に王女殿下、そして我らにゆかりのある皆々様。本日はリゾート・イハトヴのプレオープンに、ようこそお越しくださいました。皆様とのご縁で我々は男爵の位を賜り、こうして自然豊かな地を頂戴することができました。我々は皆さまへのご恩返しと感謝の気持ちのおすそ分けのためにと、この地をリゾートへと開拓し、皆様に癒しと豊かな非日常をお届けするべく尽力してゆきたいと思います。本日より一泊二日、心行くまでお楽しみいただければ幸いでございます。簡単なものではありますが、以上を以って挨拶とさせていただきます」
アレットの立派な振る舞いに、一同は拍手でたたえる。
そしてアレットの隣に立ち、ライノックが言う。
「我こそは国王ライノック・レアガルドである。アレット・ドイル卿の申した通り、我は彼女をひとりとした旅団のこれまでの多大なる功績をたたえ、爵位とともにこの地を授けた。いかようにも開拓して構わぬとは言ったが、よもや我々への恩返しにリゾートを開拓するとは驚きのあまり言葉もない。ならば諸君。今日そして明日と言う日を存分に堪能し、要望があれば申すがよかろう。一切の忖度は無用、それが彼女らのためにもこのリゾート発展のためにもなろう」
ライノックの挨拶の間、配膳の子供たちがライノックや客たちにワインと果物ジュースを配ってゆく。ライノックが見渡せば、全員分配り終えたようだ。
「どうやらこの地は未来ある子供たちの育成にもつながっている。未来を見据えて開拓に取り組む、ここはよきリゾートとなるであろう。かくも素晴らしきリゾートのプレオープンを祝し、フォーマメント州の発展を願い、皆で杯を交わそう。乾杯!」
そして一同は「乾杯!」と叫ぶ。




